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小田急と京王のダイヤ改正 [世の中]

 今春もダイヤ改正をおこなう鉄道会社は多いようですが、関東地方で大きな変化があるのは小田急京王でしょうか。小田急は下北沢附近の複々線化がいよいよ完成し、3月上旬からそれを組み入れたダイヤとなります。また京王は初の有料座席指定列車「京王ライナー」を導入することで、それに伴ったダイヤ改正があります。
 他にも東武西武のダイヤ改正の話も聞きますが、去年リバティを投入したり、S-TRAINを走らせたりしたときのような大きな変わりかたではなさそうです。もちろんJRの改正もありますが、こちらもさほど大きな変化というわけではないようです。
 そんなわけで、小田急と京王のダイヤ改正の話題を中心に、あれこれ連想の糸を伸ばしてみようかと思います。いささか妄想的な展開になるかもしれませんが、あしからず。

 まず小田急ですが、数十年越しのプランであった複々線化がようやく完成するとあって、列車種別から何から大いに変えるようです。まあ、新しいインフラを充分に使いこなすダイヤを組むためには、もうしばらくかかるかもしれず、ここ数年は試行錯誤が続くかもしれません。
 代々木上原から和泉多摩川まで、言い換えれば世田谷区内と狛江市内を複々線化して輸送力を増強しようというのは、本当にもう気が遠くなるほどの昔からの計画であったような気がします。当初はメトロ千代田線喜多見で乗り入れさせる予定でしたが、ラッシュ時の混雑が殺人的になって、千代田線が喜多見まで掘られるまで待っている余裕が無くなり、急遽代々木上原で乗り入れということになったわけです。複々線化のプランは、たぶんそのときから考えられていたことでしょう。千代田線が代々木上原に出てきたのは1978年のことで、それからちょうど40年になります。プランそのものはもう少し前から考えられていたはずで、まさに半世紀をかけたプロジェクトであったことになります。
 もちろん、小田急としては半世紀もかけるつもりはなかったでしょう。工事区間は約11キロで、そんなに難工事があったわけでもありません。10年くらいでとっとと複々線化を済ませてしまう予定だったのではないかと思います。
 ところが、時は1970年代後半、あちこちで騒音公害とか日照権とかがやかましくなりはじめた時期であったことが不幸でした。小田急の当初のアセスメントがあまり誠実でなかったという事情もあったでしょうが、とにかく沿線住民との関係がこじれにこじれ、長い長い訴訟沙汰になってしまったのでした。
 ただでさえ権利意識、悪く言えば住民エゴの強い中間層が多い世田谷区です。訴訟は泥沼化しました。そして泥沼化した訴訟でよく見られるように、各地の活動家連中も多数入り込んで騒ぎを大きくしました。最終的に訴因不適格ではねられた原告が、9割を超えたというのですから、あきれたものです。つまり複々線化工事で本当に迷惑をこうむる沿線住民は、原告全体の1割足らずしか居なかったということで、ほとんどはことあれかしと尻馬に乗ってきた訴訟ゴロに過ぎなかったのでした。
 地方裁判所だったか、(複々線化工事は)違法だけれども無効ではない」などという珍妙な判決が出たこともあり、ほとんどわけのわからないことになっていました。もちろん、その訴訟のあいだ、工事はほとんど進みませんでした。
 そのあいだにもラッシュの混雑はひどくなる一方で、特に朝の上り急行電車の遅さは耐えがたいほどの状況になっていました。川崎市・町田市・相模原市などの遠方の沿線住民は、かたくなに反対運動を続ける世田谷区民に憎悪を感じるほどになり、沿線住民同士のあいだにさえのっぴきならぬ対立感情が生まれていました。
 そこで小田急は、窮余の一策として、そんなに反対運動が無かった狛江市内から先に複々線化を済ませてしまいました。喜多見から和泉多摩川という、わずか2駅間の増設でしたが、効果はテキメンで、急行の通行がずいぶんとスムーズになった印象がありました。
 こうなると、早く世田谷区内も増設してしまえという声が大きくなるのも当然です。いちばんややこしいことになっていた下北沢近辺を除き、梅ヶ丘から喜多見までが2004年に複々線化されました。これにより、スピードが遅いことで有名だった小田急の急行電車が、急行の名に価するだけの速度で走れるようになったと言えるでしょう。
 訴訟は2006年、住民敗訴の形で結審しました。しかし小田急も住民の要望を無碍には出来ず、下北沢近辺は当初の高架複々線計画をあらためて、地下を通すことにしたのでした。代々木上原でせっかく千代田線が地上に出てきたところを、またすぐに地下にもぐらせるのはいかにも無駄な感じですし、世田谷代田駅のすぐ西側では環七通りが小田急の線路の下をくぐっていて、地下を通すためにはその環七通りのさらに下まで掘り抜かなければなりません。それだけ深いところを通したものを、梅ヶ丘手前からの高架線につなぐのも、相当な急傾斜になるわけで、大変な工事だったと思います。
 2008年には多摩川橋梁の増設が完成し、登戸まで複々線となりました。翌09年にはさらにもうひとつ先の向ヶ丘遊園まで3線化がおこなわれました。
 2013年に下北沢附近の地下線化が成りましたが、このときはまだ複線を通したに過ぎず、複々線化にはさらに5年を費やしたことになります。そして来たる3月3日、ついに複々線が開業し、代々木上原から登戸までが完全に複々線として使えるようになるわけです。本当に、長い長い念願がかなう日が来るのでした。

 ダイヤ改正は少し遅れて3月17日の予定です。
 まず列車種別が変わり、かつ停車駅なども見直されることになります。
 快速急行については、登戸停車と多摩線乗り入れが大きな変更点です。いままで、下北沢~新百合ヶ丘の長距離無停車が特徴だったのですが、途中の登戸に停車することにより、やや「特別」感が無くなることは避けられないでしょう。とは言うものの、いまのように1時間6本まで増えてしまうと、新百合ヶ丘まで無停車というのが少々不便なのも確かです。私も前に読売ランド前まで行くときに迷い、快速急行が登戸か向ヶ丘遊園あたりに停まってくれれば良いのにと思わないでもありませんでした。
 多摩線乗り入れについては、まあマイナーチェンジの範疇かなと思います。停車駅もいままでの急行と同じく栗平永山以遠ということでしょうし。
 通勤急行通勤準急が新設されます。これは当面、朝の上りだけのようなので、私が乗る機会は無さそうです。
 通勤急行は多摩線からの運転だけらしく、新百合ヶ丘からは向ヶ丘遊園・成城学園前・下北沢・代々木上原に停車します。快速急行の停まる登戸を通過することで客を分けたのでしょう。
 通勤準急は本厚木からの運転で、登戸まで各停、あとは成城学園前・経堂・下北沢・代々木上原に停車して千代田線に乗り入れます。要するにいまの準急と変わりないわけですが、準急の停車駅のほうが変わります。
 準急は現在のところ、朝夕だけに追いやられて日中には運転していないのですが、その日中運転が復活し、また全列車が千代田線直通となるようです。現在の停車駅に加え、千歳船橋・祖師ヶ谷大蔵・狛江に追加停車します。これは急行との利用差別化として良いことかもしれません。私はコーロ・ステラの練習などで祖師ヶ谷大蔵に用事があることがときどきありますが、現行ダイヤでは経堂で急行と各停が接続していないので不便なことがあります。準急が停車してくれるならありがたい話です。経堂以遠は緩行線を走ることになりますが、代々木上原~経堂間はどうなのでしょうか。
 なお多摩急行は消滅するようです。現在もほとんどが急行に置き換わり、あまり存在意義が無くなっていますので、これは仕方がないでしょう。
 特急には「モーニングホームウェイ」とか「メトロえのしま」などが新たに設定されるそうです。

 これらの改正が、思ったほどの効果を発揮するかどうかは、実際に施行されてみないとわかりません。駅によってはかえって不便になるところもあると言われています。まあ、複々線の威力を最大限に使いこなした最適解ダイヤは、これから何年かかけて模索してゆくというのが良いでしょう。現在の梅ヶ丘~登戸の複々線でも、当初設定されていた区間準急が途中で廃止され、快速急行大増発という思いきった策が施されたりもしていました。これからしばらくは、最適解を求めての試行錯誤のダイヤ改正が続くのではないかと思っています。愉しめそうですね。

 さて次に京王ですが、通勤電車一辺倒だったところへ、ついに有料の座席指定列車が登場します。
 東武東上線TJライナーが大成功を収めたことで、いままで通勤電車だけだった路線に有料列車を走らせようという試みがあちこちに見られるようになりました。料金を取るのですから、当然着席保証がなされていて、しかもクロスシート主体でなければお客は納得しません。
 東武特急リバティの野田線乗り入れなどもその一環でしょう。特急などには縁の無さそうだった野田線に、曲がりなりにも定期特急車輌が乗り入れたのは前代未聞の話です。もっとも線内ではあんまり特急らしい走りっぷりは見せていないようですが。
 西武が投入したS-TRAINも同様です。これは休日運転では東横線を経てみなとみらい線に乗り入れることで、両線にとってははじめての有料列車ということにもなりました。ただしこの列車は便数が少ない上に料金が高くて、利用度はいまいちの観があります。また車輌も、西武としてはレッドアローほどのグレードにするわけにゆかないという事情により、やや中途半端な気がします。TJライナーとそれほどレイアウトが違うわけでもないのに、なぜか安っぽく感じられるのでした。
 逆にこんど投入される京王ライナーは、京王がそれまで作ったことのない車輌ということもあり、写真を見る限りずいぶん本格的な有料列車という印象を受けました。もちろん2ウェイシートであって、日中は座席をロングシートモードにして普通の列車に使用するのでしょうが、それでも妙な高級感が漂います。まあ、実際に乗ってみたら写真ほどのことはないのかもしれませんが。
 夕方以降下りだけの運転で、新宿八王子行きと橋本行きが交互に出ます。どの駅に停まるのかということはいろんなサイトで予測されていましたが、特急とほぼ同じであろうという意見が多かったようです。つまり明大前・調布・府中・分倍河原・聖蹟桜ヶ丘・高幡不動・北野、もしくは明大前・調布・稲田堤・永山・多摩センター・南大沢というところだろうというわけでした。ところが蓋を開けてみると、府中と永山までノンストップという思いきったことになっていました。そこから先は特急と同じ停車駅ということです。
 特急のスジを京王ライナーに援用したというのではなく、京王ライナーを中心にしてスジを全面的に引き直したようですから、かなり高速で走れることが期待できます。実際、八王子までは最速35分、橋本までは最速32分で、現在の特急よりは3~5分くらいずつ速くなっています。
 それにしても、せっかく快適な座席に坐ったのに、最大でも30分ちょっとで下ろされてしまうというのは、なんだかもったいないような気がします。都営地下鉄は嫌がるでしょうが、本八幡船堀あたりを発駅にして、都営新宿線から直通する便も欲しいところです。途中停車駅は新宿線の急行とはまた少し変えて、岩本町・神保町・新宿三丁目あたりでどうでしょうか。

 この種のホームライナー的有料列車は、今後も増えそうに思えます。走行距離約38キロ(八王子行き・橋本行きとも)の京王ライナーが成立するなら、みなとみらい線と合わせて約28キロの東横線、31.5キロの田園都市線などでも成立しそうです。しかもこれら東急路線はいずれも乗り入れ先の地下鉄があり、その地下鉄の反対側にも他社路線がつながっていますから、かなり長距離のものを運転できるでしょう。
 東横線については、S-TRAINの東急版を所沢か飯能あたりまで走らせるという可能性があります。西武のように看板列車を憚ることもありませんので、けっこう豪華な車輌にできるかもしれません。
 田園都市線のほうは、むしろ前にも触れたメトロリバティのような列車が乗り入れてくることが考えられます。
 あとは相鉄が、神奈川東部線開通のあかつきに、東急目黒線・メトロ南北線か都営三田線・埼玉高速鉄道などに直通する列車を走らせたがっているようなので、その場合夕方以降などにこの種の有料列車が走る可能性もあるでしょう。
 東京メトロが、以前ほど線内の通過運転に拒絶反応を示さなくなっているという噂もありますので、そのうち各社の有料列車が入り乱れて走るようになるかもしれません。
 以前も書いた記憶がありますが、鉄道というものは、線路がつながってさえいれば、いろいろなネットワークの可能性が広がるものです。前はJRについて書きましたが、私鉄についても同じことが言えそうです。


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セヴァスちゃん目たま

Oda-Qユーザーの私としては、ダイヤ改正と新しいロマンスカーがたのしみです。
by セヴァスちゃん目たま (2018-02-22 03:00) 

コンビニ作曲家MIC

#セヴァスちゃん目たませんせ
GSEですね!<新しいロマンスカー
このところ、EXEにしてもMSEにしても、従来のロマンスカーとは違ったコンセプトの特急が多かったですからね~~♪
久々にロマンスカー本来の設計思想に戻ったGSE、確かに楽しみです。
by コンビニ作曲家MIC (2018-02-23 03:29) 

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