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『続・TOKYO物語』のリハーサル [日録]

 『続・TOKYO物語』という歌謡曲メドレーを作ったのは今年の1月ですが、その初演が近づいてきました。初演は、このメドレーの委嘱合唱団という形になっている磯辺女声コーラスです。
 この合唱団、「正篇」と呼ぶべき前の『TOKYO物語』の出版のきっかけになってくれたところでもあります。正篇のほうの初演は共立女子大学の合唱団なのですが、磯辺女声コーラスで再演した際にカワイ出版の元編集長である山澤重雄氏が聴きに来てくれていて、鶴の一声と言うべきか、とんとん拍子に出版の話が決まったのでした。
 『TOKYO物語』がバカ売れと言って良いほどのベストセラーとなったので、今度の『続・TOKYO物語』もわりにすんなり出版の話がまとまりました。普通は初演を済ませてから、その音源を編集会議に持って行って検討するという手順なのですけれども、今回は初演と刊行のタイミングを合わせることになりました。たぶん、初演のときに演奏会場のロビーで刊行ほやほやの本が販売されるということになるのではないかと思います。
 さて、その初演で、私自身がピアノを弾くことになっていました。
 実を言えば、私は自分の作品を自分で演奏するというのはあまり好きではありません。自作自演というのは、いわば演奏が「作曲者の発想」の枠内に収まってしまうということでもあり、面白くないように思えるのです。作曲家の書いた音と、演奏者の受け取った音との化学反応みたいなものがあって、演奏というのははじめて輝きを放つ行為となるのではないでしょうか。
 ごく稀なこととはいえ、作曲者自身が思ってもいなかったような作品の魅力を、演奏者が引き出すなんてこともあります。私がよく引き合いに出す、フィンランドの作曲家ラウタヴァーラピアノソナタ第1番を、親友でもあった舘野泉氏が初演したときの話が好例でしょう。舘野氏はこのソナタの終楽章を、ラウタヴァーラが指定したテンポの倍の遅さで弾き、それを聴いていた作曲者は思わず知らず感動して涙を流していたというのです。初演後、ラウタヴァーラはためらいなく終楽章のテンポ指定を書き直しました。
 こんな例は本当に稀ではありますが、それでも絶無ではないだけに、私もついつい期待してしまうのです。自作自演の場合はこんなことは決して起こりません。
 とはいえ、いろんな事情で自分が初演に加わることも少なくありません。Chorus STで初演した作品などは、私は「合唱団の一員」として参加しているわけで、これはこれで楽しくないこともないのです。まあ「合唱団の一員」であれば、演奏の全体を支配しているわけではなく、指揮者がいろいろ引き出してくれるのに乗っかっていれば良いわけですので、いわゆる自作自演というのには当たらないかもしれません。
 合唱曲の場合は、自分で指揮をするならば自作自演に近いでしょう。
 伴奏ピアノを弾くのはどうでしょうか。指揮者のスタンス次第かもしれません。
 いずれにしろ、『続・TOKYO物語』は、私の「作品」ではなく「編作」に過ぎませんので、上記のようなこだわりはそれほど持ちません。頼まれたのなら受けるという、その程度の感覚です。ただ刊行される場合、初演データ欄に名前が出るのは若干気はずかしいかな、と思わないでもありません。
 来月の初演は、磯辺女声コーラスの第18回演奏会でもありますので、歌う曲はたくさんあります。その中の1ステージを『続・TOKYO物語』に宛ててくれるわけです。これにばかり集中するわけにもゆきませんので、私が伴奏合わせにゆく機会も少なく、2回のリハーサルで本番ということになっています。
 その第1回目が今日でした。
 磯辺女声コーラスは千葉市美浜区あたりを拠点にして活動している合唱団です。今日の練習場所は真砂コミュニティセンターというところで、最寄り駅はJR京葉線検見川浜、次いで総武線新検見川京成電鉄千葉線検見川というところです。
 いちばん近い検見川浜でも、駅からは徒歩十数分かかりそうなので、大事をとって2時間くらい見たほうが良さそうです。練習は10時からなので、8時に家を出ました。
 今日はこの夏いちばんの暑さらしくて、37度くらいまで上がると聞いていました。そう聞くだけでもうんざりして汗が出てきそうです。しかし、朝8時くらいでは、まだそんなに暑さはひどくなかったのでほっとしました。直射日光が当たると充分暑いのですが、日陰を歩く分にはむしろさわやかさを感じるくらいです。風が吹くと涼しささえ覚えました。
 小学生の頃、夏休みの心得として、
 「午前中の涼しいうちに勉強を済ませましょう」
 みたいなのがありましたが、近年は午前中から暑くて勉強する気にもなれません。まあ昔と違ってエアコンが行き渡っていますので、最近はそんなことも言われないのかもしれませんが。なんにしろ、8時頃ならまだましで、10時になるともうダメでしょう。エアコン抜きで勉強をするなら、朝の4時から7時くらいを推奨しないといけないのではないでしょうか。
 京浜東北線の電車に乗ります。ふだんの8時なら、土曜といえども相当にラッシュ状態でしょうが、夏休み中ということでそれほどでもありません。そのまま東京まで乗って行っても良かったのですが、赤羽上野東京ラインに乗り換えます。少し早く着けます。
 例によって無駄に長い通路を歩いて、京葉線乗り場へ。ここは本来、予定されていた成田新幹線の駅スペースを活用したものですが、それにしても他の路線の乗り場から遠すぎです。責任者出てこい、と言いたくなる設計です。
 快速電車に乗ると、かなり混んでいました。こちらは朝の下り電車ですので、ふだんだったらもっと空いているのかもしれません。ネズミの国に行く人が多いのかな、と思いましたが、舞浜ではほとんど下車客が居ません。ネズミの国の開園時刻はもう少しあとだったかもしれません。
 乗客の大半が下りたのは海浜幕張でした。幕張メッセで何かイベントがあったのかもしれません。ようやく坐れましたが、次が下車駅である検見川浜です。
 すでにだいぶ暑くなりました。検見川浜駅前のロータリーはがらんとしていて、そこにイヤになるほど燦々と陽光が降り注いでいます。できる限り日陰を伝うように歩きました。
 少し時間があったので、開いていたショッピングモールのイートインコーナーで朝食をとってから、真砂コミュニティセンターに向かいました。
 明らかに、もとは学校だったと思われる建物でした。このあたりでも生徒数減少で、学校の統廃合がおこなわれているようです。都心では珍しくない光景ですが、このあたりは本来埋め立て地であって、住民が増えたのだってそう昔のことではないはずです。当然、学校もさほど古くはないでしょう。それが早くも統廃合されて公民館化しているところに、少子化の予想外の勢いを感じます。
 3時間ばかり、リハーサルに付き合いました。合唱団のかたがたはこれがはじめての「伴奏付き」練習だったわけです。一方、私のほうも生の声でこの曲が歌われているのを聴くのははじめてです。
 実のところ、歌無しでピアノだけ弾いていると、なんとなく「薄い」気がして、これは少々物足りない響きだったかな、などと思ったりもしたのですが、合唱が入れば決してそんなことはなく、安心しました。私は自分のスキルをもう少し信じてやるべきなのかもしれません。歌う側がもうほとんど最終調整段階に入っていたためでもあるでしょう。今日の練習で暗譜をしてしまうように、と指揮者の清水雅彦さんが繰り返し指示していました。ちなみに磯辺女声コーラスは、現在清水さんが指導している合唱団の中ではいちばん古株です。
 古株だけに長い歴史を持ち、従ってメンバーの入れ替えなどもだいぶあったようです。私は20年ほど前ごろまでにはけっこう顔を出すことも多かったのですが、ずいぶんご無沙汰していたので、初対面という団員がずいぶん居ました。
 そして、『続・TOKYO物語』で扱った、昭和30年代のヒット曲がドンピシャという世代が多いらしいのでした。これはやはり、多くの合唱団に喜ばれる企画だったのではないかと思います。
 今日の練習では、『TOKYO物語』名物の「ナレーション」は入りませんでした。今日、通しで歌った録音をナレーターに渡して、ペース配分などを考えて貰うのだとか。来月はじめにある第2回のリハーサルのときに合わせるようです。いちおうfinaleのプレイバックに合わせて私自身でしゃべってみたので、時間が足りないとかいうことは無いと思いますが、間をとったり、感情たっぷりに読んだりすると間に合わない可能性もあります。私の好みとしては、正篇の頃から、ナレーションはわりと坦々と、昔のNHKアナウンサーのような口調とペースで読んで貰いたいと思っています。ともあれ、合わせが楽しみです。
 帰りは団員がクルマで送ってくれるというので、検見川浜ではなく、京成の検見川まで行って貰いました。広い駐車場に出ると、この夏いちばんという熱射が照りつけてきました。気温が体温を上回り、風が吹くとかえって暑いという状態になっているようです。クルマに乗って冷房が効いてくるまでは息苦しいほどでした。
 京成の検見川駅は、どこのローカル私鉄の駅かと疑われるような貧弱さでした。駅前にロータリーはありますがおそろしく小規模で、クルマが3、4台も入ってきたら身動きが取れなさそうです。
 検見川浜から京葉線だと、また東京駅のクソ長い通路を戻るか、あるいは南船橋で武蔵野線電車に乗り換えるという手もありますが、本数が少ないので暑い中待たされるおそれがあります。いっぽう新検見川から総武線というのは必然的に各駅停車となるのでちょっとうんざりします。途中を快速に乗るという手は、総武線が列車別複々線であるため、快速に乗るのも、その先で秋葉原に行くためにまた各停に乗り換えるのも、いちいちプラットフォームの階段を上り下りせねばならず、この暑い中ではやっぱりイヤです。
 その点京成だと、京成津田沼で本線への乗り換えはあるもののごく小規模な感じだし、その京成津田沼では本線電車は頻繁に来るので待つこともないし、特急や快速もじゃんじゃん走っています。そして山手線への取り付きが日暮里なので、家に近いということもあります。私は列車に乗る場合に遠回りをいとうものではありませんが、こう暑いと私といえどもさっさと帰りたい気分がまさります。
 それで検見川に送って貰ったわけですが、なんと、運賃も150円くらい安く済んだので驚きでした。このルートは、京成とJRの2社にまたがるので、加算運賃で高くなりそうなものですが、川口からそのあたりまでになると、JRの距離対運賃の上がりかたのほうが急速であるようで、検見川浜でも新検見川でも800円(IC運賃でも799円)かかります。いっぽう京成~JRと乗り継ぐと、合計660円(IC運賃で645円)で済むのでした。これほどの違いがあるとは私も驚きました。
 磯辺女声コーラス第18回演奏会は、9月14日(土)14時より、千葉市文化センターアートホールで開催されます。『続・TOKYO物語』の他には、山中惇史『トヨさんの言葉』より、信長貴富『ひざっこぞうのうた』より(チェロ付き初演)、それにアラカルトステージ『愛のうた』が演奏されます。ご興味がおありのかたはぜひご来聴ください。

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joe

店長、お久しぶりです。今日は桜木町まで神奈川県合唱コンクールを聴きに来ています。
by joe (2019-08-20 14:01) 

コンビニ作曲家MIC

#joe様
小文字になったのですか(^_^;;
どうも、お久しぶりです。
神奈川県の合唱コンクールですか。
どなたかお知り合いが出られているのでしょうか。
桜木町というと、みなとみらい21のホールかな?
またお会いしたいですね。
by コンビニ作曲家MIC (2019-08-22 22:35) 

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