SSブログ

理事長の任期満了 [日録]

 住んでいるマンションの管理組合の総会があり、私は理事長だったので出席しなければなりませんでした。
 総会と言っても、全住民が一堂に会するというわけではありません。年に何回か、理事会というのが開かれ、それは4、5人の役員と管理会社の担当者が出席しておこなわれます。いつもマンションの管理員室を使っています。管理員室は4畳半一間くらいの狭い部屋で、テーブルを置いてその人数が入るとほぼほぼいっぱいになってしまうのですが、総会も同じ場所で開かれます。つまり、いつもの理事会とそう変わらない人数しか出席しないというわけです。以前は町内会館などを借りてやったこともあるのですが、やっぱり出席者が少ないということで、わざわざそんなことに使用料金を払わなくても良いだろうということになり、狭い管理員室をそのまま使うことになったのでした。
 「新米理事長の戸惑い」という文章を書いたのは、いま調べてみると2014年の6月のことです。ということは、その前年の秋の総会で私は理事長に就任したことになります。以来、6年の長きにわたって理事長の役職に居続けたのでした。
 本来、マンションの理事長などという役職は、そんなに長くやるものではありません。けっこう権限の強い役職であり、本人がその気になったらかなり強引なことでもできてしまいます。長期政権(?)になるといろいろと弊害が出てきかねず、たいていは2年くらいの任期で交代するのが普通だと思います。
 それが6年もやってしまったのは、やむを得ぬ仕儀とはいえ、自分でもどうかと思います。

 むろん、やりたくてやっていたわけではありません。
 私はひとりで住んでいた頃は、ほとんど管理組合に興味が無く、理事になったこともないし、総会にもほとんど出席したことがありませんでした。ところが、結婚してから、マダムがわりにこうしたことが好きで、私の代わりに総会に出て、早速役員になって戻ってきました。マダムの父がときどき町内会長になっていたりしたせいかもしれません。役員というのは世帯ごとなので、マダムが役員になったのは私がなったということでもあります。
 それでも数年間は、監事ということで、初秋ごろの決算期に収支内訳をチェックする役目だけでした。分厚い書類が届き、私が数字を読み上げてマダムがレシートなどと突き合わせるという作業分担をして、監事の仕事をそつなくこなしていました。理事会にはいつもマダムが出席していました。いつも私が出られない曜日だったのだと記憶しています。
 が、そのうち、防火管理責任者を引き受けてきました。これは2日間の講習を受けなければならないということで、あまりやりたがる人が居なかったのでしょう。マダムが講習を受けたわけではありません。私に受けろと言ってきたのです。
 「あ、うちの主人ならわりと時間が自由になるんで、できると思います」
 とか気軽く言って引き受けたに違いありません。わずかながら手間賃が出るということで、マダムとしてはなんだか私に「仕事をとってきてやった」みたいなドヤ顔でした。
 仕方がないので、戸田まで2日通って講習を受けました。防火管理責任者というのは、万が一火災が起こって、その場の状況によっては、刑事罰に問われることもあるらしいと知り、内心慄え上がりました。
 そんなわけで私は、一度も理事会などに出席しないまま、防火管理責任者になりました。
 その後、しばらく理事長を務めていた人が、転居のため続けられなくなりました。新しい理事長を決めなければなりません。
 それを決める日、私はわざわざマダムに、理事長など決して引き受けるなよと釘を刺して外出しました。
 ところが、帰ってくると、釘を刺しておいたのにマダムがあっさりと理事長を引き受けてしまっていたので、思わず脱力しました。
 その頃の役員は、理事長の他はお年寄りばかりで、
 「やっぱりこういうことは若い人がやって欲しいわよねえ」
 などとおだてられて、うかうかと乗ってしまったと思われます。
 そんなに大変な仕事というわけではないから、などとも言われたようです。
 「大丈夫、大変だったら、わたしも手伝うから」
 とマダムは請け負ったものでしたが、以後、まったく理事長業務を手伝ってくれたことはありません。
 それから6年、ちょっと勘弁してくれよと言いたくなることも無かったわけではありませんが、ともかく続けてきました。

 なんでそんな長期になってしまうかというと、要するに総会の出席者が少ないからです。
 ほとんど「いつものメンバー」なので、そのまま続けることになってしまうのでした。

 無理やり、出席していない人に割り振ることも、できないことはないのですが、そういう欠席裁判みたいなことを好まない重鎮が居たのでした。
 去年までは……つまり5年間というもの、ほとんどずっと同じメンバーでした。齢をとって出てこられないというので辞めて行った人も居ます。また、総会のときに出てきてやたらと細かいことにからむ人が居たので、そんなに言いたいことがあるのなら理事会に入ってくださいとなって、あらたにメンバーになった人も居ます。この人、理事会でもいつも長広舌を振るいましたが、よく聞くと大体いつも同じようなことを言っており、しかも理事会で納得したかと思うと、総会でもやっぱり話が長く、なんのために理事会に入って貰ったのかよくわからないことになっていました。
 それにしてもあまりにも固定メンバーなので、去年、ようやく役員の任期の規定を作りました。総会に出てこようが出てこまいが、輪番で役員をお願いするということにしたのです。もちろん欠席裁判ではなく、事前に通告することにしました。
 このマンションも、はじめの頃はそのようだったらしいのですが、役員になってもちっとも理事会に出席しないというような人が少なくなく、流会になってしまうこともありました。それで任期を特に定めない方式に変化した様子です。
 しかし、そうなってしまうと、理事長などになると、それこそよそに引っ越しでもしない限り、いつまでも抜けられないということになりかねません。そんなことになると困るから、余計に警戒して総会に出てこないなんてケースもあったのではないでしょうか。
 このたび、任期は2年ということにしました。1年では、まるっきり総とっかえになったりすると業務が滞るので、2年にして毎年半数交代というルールにすれば良いという考えかたです。そして2年目の人から理事長を選出するという形にすればスムーズでしょう。
 このルールに基づき、去年の総会で、それまでの固定メンバーのうち半数が辞めました。いずれも年配の女性で、そろそろしんどい、という理由でもありました。
 そして本日付けで、残りの半数も解任となりました。私も任期満了というわけで、ようやく、6年に及ぶ理事長の座から降りることができたわけです。

 それほど大変ではない、と最初に言われた理事長職ですが、かなりしょっちゅうさまざまな書類が送られてきて、たちまちケースがいっぱいになってしまったりしました。また建物の小さな修理とか点検とかがあるたびに、確認書類に署名捺印を求められます。ときにはいちどきに十数箇所に署名捺印しなければならないこともありました。私の名前は画数が多いので、手も痛くなるし、しまいにはゲシュタルト崩壊を起こしそうになったものです。
 ともかく、年一度収支のチェックをすれば済んでいた監事のときに較べると、格段に仕事が増えたと思います。管理会社の担当者からも、ちょくちょく電話がかかってきました。現在担当している女性からは、この1年に4、5回かかってきただけでしたが、その前の担当者は、うちのマンションの担当が多かったせいもあるのか、何やら相棒気分にでもなっているのかと思われるほどによく電話が来ました。
 正直なところ、日中在宅していることの多い私だからなんとかなっていたけれども、普通の勤め人などには無理ではないかとすら思えたほどです。
 しかしまあ、そういうわけでもないのでしょう。引っ越して行った私の前任者は、普通の勤め人であったと思います。管理会社の担当者は時間外作業が多くなって厄介かもしれませんが、勤め人は勤め人なりに、なんとか仕事をまわせるのだろうと思います。そうでないと、管理組合など機能しようもないでしょう。むしろ、私のような者にも務まったのだから、役所や会社でしっかり仕事をしている人なら、もっとしっかりできると考えるべきかもしれません。
 あと、理事会や総会で司会をするという仕事もあります。私は議事進行など全然うまくもないのに、板橋区演奏家協会でもたいてい議長役を務めており、マンションの理事会でも議事進行役で、これはまったく胃が重くなる想いでした。上記の、いちいちからむ人の他に、すぐ脱線して雑談が長くなる人も居り、そういう人たちの長話をぶった切るのが進行役の務めなわけですが、そのぶった切るタイミングがなかなかつかめないのです。私はマダムの長話をぶった切るのでさえ苦手ですのに、私より年配のかたがたを相手にすると、余計に気が引けてしまって口をはさみづらくなります。
 そんなこんなで、よろめきながら6年間やってきましたが、やっと肩の荷を下ろすことができました。
 まあ30戸足らずしかない小さなマンションですので、輪番にした以上、また数年すれば理事の就任要請が来るはずですし、2年目には再び理事長をしなければならないかもしれません。しかし、理事としての任期が2年、理事長になったとしても1年、と考えると、だいぶ気は楽です。むしろいままで参加していなかった人も、そういう気楽さで管理組合の活動に加わることで、それなりの参加意識も出てくるのではないでしょうか。
 とりあえず、自分に「ご苦労さん」と声をかけてやりたい気分です。

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。