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ファミリー音楽会終わる [日録]

 しばらく間があいてしまいました。忙しいことは忙しかったのですが、日誌を書く時間を捻出できないというほどでもありませんでした。なんとなく書きはじめることができなかっただけとしか言いようがありません。また更新頻度が下がってしまうきっかけになりかねないので、気をつけなければ行けませんね。
 まあ、大した話題が無かったというのも事実です。世の中ではコロナウイルスと、それが惹き起こすウイルス性肺炎が猛威をふるっているかのようですが、感染者は外国帰りの人たちを中心にだいぶ増えてきた感じですけれども、発病者はいまのところわが国ではさほど居ないように思えます。ひとりお婆さんが亡くなりましたが、コロナウイルスが単独の原因であったかどうかはまだ定かではありません。甘く見るのは禁物ですが、必要以上に怖れることもないだろうというのが私の見かたです。薬屋やコンビニでマスクが売り切れ続出というのは、ちょっと落ち着け、と言いたくなる感じです。
 今日は月遅れのファミリー音楽会があったのですけれども、客席で眺めたところでは、客入りはいまひとつといったところだったようです。出演者のひとりが開演前に、
 「チケット買ってくれた人で、今日来ないっていう人がずいぶん居るのよね。コロナが怖いから人混みに出たくないって、特にお年寄りが。今日は売れた枚数ほどには人が来ないかも」
 と言っているのを聞きました。入場券は千円なので、買ってあっても、当日行かないことにしてもあんまり損した気分ではないのでしょうか。こちらも、売れているのだから損はしていなくとも、お客が少ないのはやはり張り合いがありません。コロナウイルスの風評で実害を受けたようなものです。
 今日はそれに加えて、朝から晩まで小雨が降りしきるような天気でした。雨が降るとイベントの観客はまず8掛けというのがこの業界の常識です。実はいちばん良いのは、朝のうち降っていて、昼から晴れるという天気で、これだと他に逃がさずに客を集められるとされています。
 そんなわけであんまり条件は良くなかったのですが、ともあれ開幕です。
 例年、板橋のファミリー音楽会は1月に開催することが多いのですが、さまざまな理由で1月に開催できず2月になることがあります。最初の頃は「お正月」ファミリー音楽会と称していましたが、2月になることがあるので「お正月」という冠はいつの間にか外れました。理由でいちばん多いのは、ホールの改装や改修です。どんな改装をしているのか、座席はあいかわらず狭苦しいし、床にはいつまでも反響を殺すカーペットが敷かれているし、詳細はよくわからないのですが、ともかく1月にその工事が入って2月にずれこむということが何度かありました。3月になったこともあります。
 昔は私も企画運営に関わることが多かったのですけれども、最近は頼まれるアレンジをおこなう程度の関わりになっています。それも数年前まではずいぶん何曲もアレンジしていたものでしたが、曲数もだんだん減ってきた気がします。ここしばらくの演奏会の構成が、それほど多くのアレンジを必要としない形になってきているようです。
 と言っても、アレンジする労力のほうは減っていません。

 去年のファミリー音楽会で、ドヴォルジャーク「新世界より」を、メドレーっぽく再構成して全部で10分ほどで演奏してしまうということをやったところ、これが案外好評だったのでした。オープニングとしてこの曲を置いたので、合唱も入っていて聴き応えがあったようです。第二楽章は「遠き山に陽は落ちて」などの歌詞付きでよく知られていますのでそこは良いとして、第三楽章や終楽章にも、私がでっち上げた歌詞をつけて合唱を加えてみたのでした。
 それで、同趣向の企画を今回もやることになり、今度はホルスト「惑星」を扱ったのでした。7楽章もあるし、原曲は四管編成という非常に大規模なオーケストラだしで、「新世界より」に較べるとだいぶ手間がかかります。これも「木星」には英語でも日本語でも歌詞がついていますが、他の曲には歌がつきません。「海王星」に女声合唱が入るとはいえヴォカリーズだけです。
 私は「金星」にヴォカリーズを加え、「木星」の他の部分にまたでっち上げの歌詞をつけて合唱曲化し、「海王星」のヴォカリーズにも若干歌詞をつけました。前回、終楽章で「緑と文化の輝くまち」という板橋区のキャッチフレーズを入れたら、聴客はともかくとして、歌い手たちに大受けでしたので、今回も同じ言葉を入れることにしたのです。この際、この企画が続くのなら毎回「緑と文化の輝くまち」を入れてやろうと考えています。どんどん予算を減らしてきて、ちっとも「文化を輝かせる」ような意志と行動が見られない役所に対するイヤミでもあります(笑)。
 この「惑星」メドレー、「10分間DE『惑星』」のスコアは60ページ近くなり、今年は出演する器楽奏者も多くてパート譜もたくさん作り、なかなか作成には手間がかかりました。これがシリーズ化されるとなると、大変そうです。

 エンディングの全員参加演奏も私の担当です。今年は中島みゆき「地上の星」が選ばれました。オープニングとともに、「星」をテーマとしたわけです。前に室内オーケストラ用に編曲したことがあったので、こちらはそれほど労力を使いませんでした。と言っても、楽器が多いという事情は変わりませんが。
 それから恒例の「お楽しみステージ」。出演者のコスプレ大会のようになっていて、プログラムに曲名も記されませんが、いつも大受けする企画です。例年はもともとコミックソングっぽい歌を選んでいますが、今回はクイーン「We will rock you」「Bohemian Rhapsody」をつないだ小メドレーになりました。去年、映画「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットしたことを受けているわけですが、「We will rock you」のわかりやすいリズムが若干コミカルでもあります。ウィキペディアを見るとこのリズムを「ズンズンチャ」と書き表していましたが、演奏家協会内ではすっかり「ドンドンパ」で通用するようになりました。この曲はほとんど打楽器と斉唱に終始するので、アレンジ的には楽ですが、珍しい英語の歌とあって、歌い手さんたちは四苦八苦していたようです。
 「Bohemian Rhapsody」のほうは、まともに全曲演奏すると非常に長いので、途中で切りました。読んでみるとバチ当たりで自分勝手な歌詞が蜿蜒と続いていて面白いのですが、まあ聴いているほうにも意味はほとんどわからないだろうし、きりのよいところで終わらせたほうがすっきりするでしょう。
 お楽しみステージの最後は、いつもドリフターズが使っていた「盆回し」の音楽で締めていましたが、今年は「ドンドンパ」があるのでそれを使えば良いと思い、盆回しのアレンジはしないでおきました。ところが、10日ほど前のリハーサルのあと、やはり盆回しが欲しいと言われ、急遽作成するはめになりました。その理由を訊いてみるとそれなりに納得はしました。つまり、今年は演奏会全体が「ドンドンパ」押しで、他の演目でも何度も使うことになるため、お楽しみステージの退場にまで使うとくどくなるということだったようです。仕方がないので盆回しのアレンジをしましたが、やや業腹なところもあったので、序奏としてドンドンパをつけてやりました。

 オープニング、エンディング、そしてお楽しみステージというのが、私の編曲担当としては定番で、あといくつか追加されるのが常です。今年はワルトトイフェル「スケーターズ・ワルツ」で、ピアノと弦楽器のための編曲を求められました。弦楽器はヴァイオリン・チェロ・コントラバスが1本ずつという変則編成で、少々面食らいましたが、ピアノ三重奏プラスコントラバスというつもりで作ってみました。結果的にチェロはわりに高音域が多くなり、最初から最後までほとんどテノール記号のままになってしまって、初合わせのときにはときどき混乱していたようでした。チェロ奏者はト音記号とヘ音記号とテノール記号を普通に読み分けることができますが、ひたすらテノール記号だけということになると、若干迷うこともあるのかもしれません。
 スケーターズ・ワルツは子供の頃からよく知っている曲で、小学校の時の「お昼の放送」でもしょっちゅうレコードがかけられていたし、家にあった平易なピアノ連弾曲集にも載っていました。しかし、省略されることの多い序奏やコーダは、今回耳コピしてはじめて全貌を知ることができました。それ以前に、ワルトトイフェルという作曲家はその名前からしてもドイツ人だとばかり思っていたのですが(ドイツ語で「森の悪魔」という意味ですね)、フランス人だったということは今回調べてみてわかったことです。
 まあ、アルザスとかロレーヌとかいうあたりは、フランスになったりドイツになったりということを頻繁に繰り返した歴史を持っているので、住民も混在しているのでしょう。アルフォンス・ドーデ「最後の授業」という短編小説は、普仏戦争でフランスが負けたことで、ドイツ(プロイセン)に割譲されることになったアルザスの小学校の話で、フランス語で授業ができるのが今日で最後だということをえらく悲壮感に満ちた調子で語り上げていますが、実は当の住民たちにとっては「しょっちゅうあること」に過ぎませんでした。19世紀になって顕著になったナショナリズム運動にかぶれた作家が、さも大変な問題であるかのように採り上げただけのことです。
 ワルトトイフェルはまさにこの地方にあるストラスブールの出身らしいので、ドイツ名ではあってもフランス人ということになるようです。ドイツ語読みすべきかと思って「ヴァルトトイフェル」と書いたこともあるのですが、それは間違いだったようですね。「フランスのヨハン・シュトラウス」なる異名もあるそうです。「スケーターズ・ワルツ」の他は「女学生」くらいしか私は知りませんが……

 以上、4曲が今回の私の仕事でした。曲数は多くありませんが、いずれもけっこう規模が大きくて、それなりの手間はかかっています。
 ここ4年ほど、「お笑いグランド・オペラ」という企画をやっています。「ああ椿姫」「おおカルメン」「ややっ蝶々夫人」と来て、今年は「ラララ・ボエーム」でした。このシリーズはもともと、ファミリー音楽会にエントリーするソプラノ歌手が非常に多いために、それを片端からさばくために導入されました。プリマドンナ役の歌手が何人も出てきて、代わる代わるアリアその他を歌うのです。もちろん、その趣向を強引に推し進めるための演出を施してのことです。
 場合によっては1曲のアリアの中で歌い手が交代したりすることもあり、そういう半端な出番をみんなが納得するのかと危惧されたものでしたが、思いのほか出演者はみんな喜び、熱心に参加して、シリーズ化してしまった次第です。歌い手の心理として、単独で発表会的に1曲歌うよりも、歌は半端であってもプリマドンナとして舞台に立つほうが良いということになるのかもしれません。今年の「ラララ・ボエーム」でも、ミミが14人とムゼッタが5人登場しました。
 このステージは規模もだんだん大きくなって、確か去年からは、前半と後半に分けています。全体のプログラムに対する比重も非常に高くなりました。そのおかげで、たくさんの小品をアレンジする必要が無くなったとも言えるでしょう。
 ベテランのコレペティトーア(オペラ歌手のコーチ)である鈴木架哉子さんが最初の「椿姫」からピアノ伴奏を務めていますが、それに数人の木管楽器奏者が加わるという形が標準になっています。これは編曲者を通しているわけではなく、それぞれの原曲のパート譜を見つつ、適当に取捨選択して演奏に加わっているようです。最近、こういう形のステージも増えました。かっちりと楽譜を作って貰わなくとも適当に演奏できる、という若手奏者が多くなってきたのでしょう。頼もしい限りです。

 最近の定番コーナーとしては、あと「ピアノリレー連弾」というのがあります。ファミリー音楽会には少なくとも4、5人、多いときは8人くらいのピアニストが出演しますが、ほとんどは伴奏としての出演でしかなかったため、ピアニスト主体のコーナーも作ろうということになったのでした。しかし普通にソロや連弾などで弾いても面白くないので、いっそ出演するピアニスト全員が加わって何かする、という趣向になったのでした。最初のうちは馴れないエンタメステージに戸惑っていた感じでしたが、去年あたりからすっかりはっちゃけました。去年は私が「剣の舞」を8手用にアレンジしましたが、今年は既成の連弾譜をうまく使って「ペルシャの市場にて」「ギャロップ・マーチ」を弾いていました。
 このように定番コーナーが多くなって、昔ながらの発表会的もしくはガラコンサート的な出し物は少なくなりました。楽器奏者も、うまく振り分けてアンサンブルものをやっています。今回はヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ」第2番の終楽章である「トッカータ『カイピラの小さな汽車』」などまで出てきて、聴いていても興味深いプログラムだったと思います。
 ただ、お笑いオペラが大きくなりすぎたせいか、とにかく長くなってしまったのが今後の検討課題でしょう。今日などはついに3時間を超えてしまいました。これを千円の入場料で愉しめるのだからお得と言えばお得ですが、子供などは飽きてしまうでしょうし、今日聴きに来ていた私の母など、ずっと坐っていたために持病の腰痛が出てきてしまい、途中で抜けて帰ってしまいました。3時間は長すぎで、せめて2時間半くらいまで圧縮したいところです。
 いままで30回くらい、本当にさまざまな趣向を試しながら続けてきたものだと思います。作家の卵にシナリオを書いて貰って芝居仕立てにしたこともあります。紅白歌合戦みたいな構成にしたこともあります。いくつかの定番コーナーが現れては消えました。お笑いオペラにしても、いつまでもネタが保つとは思えず、あと数回というところでしょう。あまりマイナーなオペラを持ってきても仕方がありません。ネタ切れになったときに、「椿姫」「カルメン」といったものをもういちどリニューアルするか、それともすっぱりとコーナーを閉じてまた新しい趣向を考えるか、まだまだ試行錯誤は続くのではないかと考える次第です。

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