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二転三転の演奏会 [日録]

 先週末から昨日くらいまで、えらくバタバタしていました。
 東京都に3度目の緊急事態宣言が発令されたのが原因です。
 この5月1日に、Chorus STの演奏会が予定されていたことは、何度か書いたと思います。本来は去年の5月5日に開催するはずだったのですが、第1次緊急事態宣言のために延期となり、ほぼ1年後に復活公演をおこなうことが決まっていました。
 もとは上野東京文化会館で開催することになっていました。ところが、このホールは予約が1年半前だったか1年3ヶ月前だったかで、今年の5月を確保するのはもう無理だったのでした。また、小ホールは舞台面が狭く、今回の演奏会の賛助出演として集められた30周年記念合唱団を含めた40人ほどを、「密」にならないように乗せることができません。
 それで、場所は王子北とぴあに変更しました。第1次の緊急事態宣言が明けて、ぜひ復活公演をやろうという話の流れになったとき、たまたまホールが空いており、また毎年参加している北区合唱祭などで馴染みの深い場所でもありました。小ホールのつつじホールはやはり狭くて無理ですが、大きなさくらホールのほうであれば40人規模の合唱団が乗っても「密」にはなりません。
 しかし、大ホールだけに客席数も1300人程度と、ずいぶん多くなっています。ソーシャルディスタンス確保ということで50%定員にしても、650人です。Chorus STの演奏会のいままでを考えると、入場者数は多くて300人というのが良いところであり、外出を控える人の多い昨今では200人も覚束ないかもしれません。
 30周年記念合唱団の人々にも集客を頑張って貰って、なんとか500人くらいは集めたいところでした。
 当然ながら合同練習などもあらためて組まなければならず、ホールの大きさもさることながらそのあたりで費用が余計にかかることになります。そんなこともあって詳細がなかなか決まらず、チラシやチケットを作るのもだいぶ遅れました。
 なんとか頑張って知り合いに声をかけ、それでもやや心許ない集客になりそうで、ラストスパートをかけなければならないと考えているさなかの、第3次緊急事態宣言でした。
 期間は4月25日から5月11日まで。ゴールデンウィークをまるまる含んだ発令です。いやもちろん、ゴールデンウィークに人がふらふら出歩かないように釘を刺したわけでしょう。
 とはいえ、もし緊急事態宣言が発令されても、演奏会を中止するという考えは私たちにはありませんでした。
 実際、第2次緊急事態宣言発令中の今年1月17日に、板橋区立文化会館ではファミリー音楽会決行しました。入場者は当然ながらきわめて少なかったとはいえ、かなり盛り上がり、良い音楽会だったと評判も上乗でした。
 「また5月に緊急事態宣言が出たらどうしよう」
 と心配する仲間も居ましたが、私は一貫して強気なことを言っていました。それはファミリー音楽会の経験があったからでした。そういう時期だからこそ、人々は生の音楽を聴くことに飢えているはずです。
 最悪、無観客になっても決行しよう。私たちはそう決意していました。
 一週間後に迫った本番へ向け、集客ももう少し頑張ろうと話し合った先週金曜日(23日)の練習後、帰宅してみると運命の通告が。
 緊急事態宣言を受け、北とぴあは発令期間中、休館すると発表したのでした。
 もちろん、その期間中、施設を使う予定だったものは、すべてキャンセル。
 使用料は全額返却ということになりました。

 茫然自失とはこのことです。
 施設が使える限りは、緊急事態宣言発令となっても決行しよう、と決めていたのですが、その施設が使えなくなってしまったのでは、どうしようもありません。
 合唱団としても残念なことになりましたが、私個人としても困ったことです。
 というのは、この演奏会で『続・TOKYO物語』の混声版初演がおこなわれ、同日に楽譜が刊行されるからです。
 これも、本来なら去年の5月5日に予定されていたことです。校正もほぼ終わり、あともう少し詰めれば印刷所に廻せる、という状態で、延期が決まりました。
 初演は延期されても、楽譜だけでも刊行できないかと思ったのですが、版元のカワイ出版としては、やはり初演前に楽譜を出すのはNGという判断でした。それで、楽譜の出版も1年延びてしまいました。
 楽譜には初演データが附記されます。2020年5月5日だった初演日は2021年5月1日となり、場所は東京文化会館小ホールから北とぴあさくらホールとなりました。しかしとにかく出版が決定し、最終校正を済ませて印刷所に廻りました。5月1日には、さくらホールのロビーで楽譜販売がおこなわれることになっていました。女声版のときは、物販をおこなうとホール使用料が2倍近くに跳ね上がるということで断念しましたが、今度こそ初演即発売という夢がかないそうだったのでした。
 この夢も、覚束ないことになってきたようです。
 今後、そんな機会が訪れるかどうかわかりません。楽譜の出版は、普通は初演や再演などの音源を編集会議にかけて検討し、それから刊行準備というのが順序です。『続・TOKYO物語』は、先行する『TOKYO物語』がベストセラーであったことが下地にあり、その続篇ということで、例外的に初演と刊行が同時進行で準備されたわけです。
 どうやらその機会が失われるというのは、私にとっては大変無念な話でした。

 24日の朝から、Chorus STの団員は大わらわで動きはじめました。
 再度の延期は避けたい、どういう形になるとしても5月1日に演奏をおこないたい、という気持ちが盛り上がったのでした。
 普通、ホールの予約というのは半年とか1年前とかにおこなわれ、そのあとは「空いているところを狙う」しかありません。直前になるとキャンセル待ちみたいなことも可能にはなりますが、それにしても残り1週間以下という時点で押さえられるホールはごく限られます。
 しかも、都内のホールはまず無理でしょう。緊急事態宣言が発令されたのは東京都に対してです。北とぴあがそれを受けて使用中止を決めた以上、同等のホールは同じように使用中止になっていると考えるべきです。うちのマダムは「お上の言うなりになってない、穴場のホールなら」と言っていましたが、40人の合唱団が乗れるだけの広さの舞台があるホールで、そんな穴場のところがあるとは思えません。
 となると、近隣県を探すことになります。幸い、東京に隣接する各県には宣言が出ていません。
 私も、埼玉会館松戸森のホールに電話をかけてみましたが、残念ながら先約ありでした。それにしても、
 「今度の5月1日なんですが……」
 と言うと、相手は
 「えっ……」
 と息を呑むような気配になります。やはり1週間前にそんなことを言い出す人は珍しいのでしょう。とはいえ、Chorus STと同じく期間中に演奏会を予定していて、場所を変えても決行しようという個人や団体は他にもあるのではないでしょうか。
 やはり難しいかな、と思っていると、人海戦術の甲斐あってか、ふたつほど候補が上がってきました。5月1日が空いていて、舞台もなんとか使えそうなホールです。ただし、両方ともかなり遠方です。
 ひとつは、千葉市若葉文化ホール千葉駅もしくは都賀駅からモノレールに乗って、終点の千城台で下車してすぐのところにあります。当然ながら、都内や神奈川・埼玉あたりからすれば非常に遠くなります。
 もうひとつは、東松山市民文化センターで、東武東上線東松山駅近くです。ホールスタッフで協力してくれる予定だった混声合唱団板橋アルモニーの人たちなら、東上線沿線が多いので好都合だったかもしれませんが、沿線と言っても東松山となると、池袋から1時間近くかかります。しかも、駅近くと言っても、徒歩20分(バス5分)というのでかなり不便です。
 交通の便は同じくらい、ただし千葉のほうが駅前すぐで得点になります。しかし、若葉文化ホールは40人の合唱団員が舞台に乗るのは無理で、いくぶん客席などに下ろす必要があります。東松山のほうは舞台には乗りますが、40人というのがぎりぎりの限界で、惜しいことに指揮者やピアニストを加えるとその限界を超えます。横の反響板を外せば可能とのことでしたが、反響板を外せば当然ながら音は悪くなります。
 どちらを選ぶかで迷いましたが、指揮者がどちらかというと千葉を使いたそうな感じであったのが決め手となったか、翌25日に団長たちが下見と打ち合わせに出かけた結果、若葉文化ホールに軍配が上がりました。
 しかし、そこからがまた大変です。若葉文化ホールは、普通なら500人余の入場者を収容でき、合唱団の一部を客席に下ろしたにしても、300人くらいのお客は入れられるはずなのです。それが、ソーシャルディスタンス確保のため、このホールでは50%どころではなく、25%を定員にしていたのでした。つまり、せいぜい75人しか入れないことになります。
 王子だったものが千葉の先になったので、そこまで足を伸ばすのはかなわない、という人が当然出てくるでしょう。また、宣言が出て、外出をいままで以上に控えたいと考える人も居ると思います。だから、なんとかお客を収容することはできるかもしれませんが、とにかくこれまでチケットを買って貰った人に事情を説明し、必要とあれば返金するということをしなければなりません。
 どうもアマチュアの団だけあって、チケットは「買って貰う」のではなく「差し上げる」ケースが多そうです。差し上げたものなら、返金する必要は無く、ただ説明だけすれば済みます。しかし、私は基本的にチケットを無料ではさばかない人間なので、いちいち返金しなければなりません。
 お金のこともさることながら、誰に売ったかを思い出して連絡しなければならないので厄介です。コーロ・ステラで、こんど『続・TOKYO物語』の女声版を歌っているので、その混声版初演ということで10枚以上売れたのですが、休み時間にわりと一気に求めてきたので、誰に売ったかよく憶えていなかったりします。これは団員である母に取りまとめて貰うしかないでしょう。小樽商大グリーOB会でも2枚売りましたが、名前も連絡先も存じ上げません。こういう危うさは、たぶん他のメンバーは抱えていないのではないかと思います。
 あちこちに連絡を取って、なんとか売り先を把握できました。とにかく連絡だけはしないと、1日に北とぴあに足を運ばれたりしたら大迷惑をかけることになります。
 北とぴあのチケットはそのままお使いになれます、と連絡したあとに、チケットは無効にして名簿方式にすると通知が来たりして、また追って連絡をしなければならなかったりもしました。急な変更でバタバタしていると理解はして貰えるでしょうが、何度も何度も頭を下げているような気分です。だいぶ信用を落とした気がします。

 しかしまあ、こういう時期に、予定していた日時に予定していた内容の演奏会を開けるということで、良かったと思うべきなのでしょう。
 今回の演奏は動画撮影して、後日配信する予定になっています。むしろ首脳部では動画撮影がメインと考えられているような雲行きにもなっています。
 配信が決まったら、またご案内いたしますので、よろしければご視聴ください。
 先ほど板橋区演奏家協会の理事会があり、その席で北とぴあが使えなくなった話をしたところ、強気でねじ込めば開けてくれた可能性がある、と言われました。現に会議のあった板橋区立文化会館も、宣言発令中は休館と言っていたのが、協会の何人かでやいのやいの言ったら開けてくれたそうです。会議だけではなく、6月の『ラ・ボエーム』の稽古さえ予定どおりの部屋でできることになりました。江東区などでも同じような動きがあったようです。なるほど言ってみれば、ホール側の契約違反なのですから、強硬に抗議すれば軟化したのかもしれません。使用料を全額払い戻しどころか、違約金を貰っても良いようなものです。
 まあChorus STの場合は、北とぴあとそういうことを押し問答する時間も惜しい状態だったということです。また、プロの音楽家がねじ込むのとアマチュアの合唱団が抗議するのとはまた違った筋合いでもあるでしょう。ともかく、二転三転した演奏会が成功することを祈るばかりです。

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