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ドナルド・キーン博士の訃報 [ひとびと]

 ドナルド・キーン博士の訃報に接し、大変残念に思いました。まあ享年96歳だったとのことですので、大往生と言ってしかるべきでしょう。
 博士の多大な業績に関しては、そのほんの一端を知るばかりですが、誰よりも「日本文学者」であったひとだと思います。
 この場合の「日本文学者」とは、「英文学者」「仏文学者」などという言いかたと並べたつもりです。普通「日本文学者」と言うと、「日本の文学者」と考えてしまい、数多く居る作家や劇作家や評論家などを思い浮かべますが、そうではなく、「日本文学を研究する学者」としてこの名称を使いました。
 この名に価する学者が、日本人の中には案外見受けられない気がします。それは当然かもしれず、「英文学者」「仏文学者」と言ってイメージするのは、英国人やフランス人の「自国の文学を研究している人」ではないでしょう。大学の英文学科や仏文学科で教えている先生、という印象が強いと思います。ある国の文学を総合的に取り扱う学問というのは、むしろ他国の学者によっておこなわれることのほうが多いのではないでしょうか。
 その意味ではキーン博士は間違いなく「日本文学者」であり、日本人の中に博士に比肩するほどの学問的業績を上げた者がそれほど見られないことを、われわれが恥じる必要はありません。日本文学というものを総体的に俯瞰するためには、「外からの眼」というものが必要不可欠なのかもしれないのです。

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はやぶさIIりゅうぐうに立つ [世の中]

 日本の宇宙探査機「はやぶさII」が小惑星「りゅうぐう」に到達したというニュースには、私も人並みに心躍りました。
 先代の無印「はやぶさ」が一旦ロストしながら小惑星「イトカワ」に辿り着き、ちゃんと帰ってきたのも感動ものでしたが、かなり長期間ロストしただけにいろいろ故障も生じていて、探査そのものはいささか不満足な結果に終わったのを受けての第2弾でした。今回はJAXAの総力を傾けて万全の態勢で臨んだ探査というわけです。ターゲットであるりゅうぐうに接近しつつも、数ヶ月にわたって調査を続け、確実な着陸地点を決定し、そこに誤差3メートルの精度で当てたというのですから、いわば針の穴を通すような緻密な制御が要求されたでしょう。
 何しろ地球とりゅうぐうは3億4千万キロ離れています。これは月までの千倍近い距離で、光速でも約20分を要します。ということは、こちらからの指示がはやぶさIIに届くまでに20分、通信を受け取ったはやぶさIIがそれを地球に向けてフィードバックするのに20分、つまりはやぶさIIがちゃんとこちらの言うことを聞いているか確認するだけで40分のタイムラグが発生することになります。最終段階では、お尻がムズムズするような、じりじりする通信作業が続いたことと思われます。
 今後のことを考えると、超光速の移動手段は無理でも、通信手段くらいはどうしても必要になりそうな気がします。超光速というのはいまのところ実現不可能とされていますが、よく誤解されているように相対性理論で禁止されているわけではなく、人類がそれを実現するツールをまだ手にしていないだけだと私は思っています。ただ超光速の通信手段が実現すると、理論的な帰結として時間を逆行した通信──つまり過去への通信が可能になってしまうので、そこはなんらかの解決が必要でしょうが。

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餃子放談 [いろいろ]

 今夜の夕食はマダムのリクエストで、パスタと餃子というメニューでした。なんだか妙な組み合わせと思われるかもしれませんが、いずれも彼女の大好物であり、5歳の誕生日のときにこの組み合わせのメニューにして貰って以来、何やら特別感のあるものになっている様子です。
 私もどちらも好きな食べ物ではありますが、餃子を食べるなら白飯が欲しい気はします。最近はあまりやりませんが、餃子を熱々のごはんに乗せ、箸で崩して醤油をかけ混ぜて食べるというのがけっこう好きでした。
 まあ、イタリアンのコースで、パスタはプリモ・ピアット(ひと皿め)として扱われるわけで、セコンド・ピアット(ふた皿め)つまりメインのほうはいろんなタイプの料理が宛てられます。カプレーゼ(トマトとモッツァレラチーズのスライス)などもセコンド・ピアットとして扱われ、日本人などはパスタまででかなりおなかがいっぱいになってしまうことが多く、そういう場合にはセコンドにはカプレーゼがお奨めです。そのように、なんでもありな雰囲気のあるセコンド・ピアットですので、そこが餃子になったと考えても良いのかもしれません。

 餃子は欧米でも食べられています。イタリアではどうか知りませんが、マダムがフランスに住んでいたころにはちょくちょく食べていたようです。ラヴィオリ・シノワ(中国のラヴィオリ)と呼ばれていたとのこと。最近では日本語の「ギョーザ」がそのままの発音で呼ばれるようになっているとも聞きました。
 ラヴィオリはやはりパスタの一種で、板状に作ったパスタ生地に、挽肉、みじん切りの野菜、チーズなどを包んだものですから、確かに餃子によく似ています。餃子の影響を受けているのかと言えばそうではなく、中世に、カブ(イタリア語でrapa)の薄切りに似たような具材を挟んだという料理があり、それに似ているから名付けられたのだそうです。

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「鉄道探偵と1/3の奇妙な手紙」挑戦記 [日録]

 今日も鉄道謎解きにチャレンジしてきました。東京メトロ「地下謎への招待状」シリーズと共に、毎年おこなわれている、都営地下鉄京王電鉄の共同開催による「鉄道探偵」シリーズです。どちらも私たちは、先々シーズンから参加しています。
 「地下謎」が純然たる謎解きを続けてゆくのに対し、「鉄道探偵」はストーリー仕立てになっており、かなり脱力もののオチがつくこともあるのですが、難易度自体は甲乙つけがたいものがあります。専用の謎解きキットを購入しないとプレイできない「地下謎」に較べ、「鉄道探偵」は無料配布の冊子で進められる(ただし都営・京王それぞれの一日乗車券の購入が推奨されます)ので、ハードルは低いように思われますが、なかなかどうして歯ごたえのある問題が並んでいます。
 今日も、出かけてから帰宅するまで、12時間ちょっとを費やしました。
 もちろん、そのすべての時間を謎解きに費やしたわけではなく、途中で昼食と夕食をとりましたし、コーヒーショップにもいちど入っています。若干腰を据えて考えたいということもあるわけです。それからスタート地点への往路、ゴール地点からの復路にも、それなりの時間はかかっているので、まあ実質プレイ時間は7時間半ほどだったかと思われます。
 冊子には目安のプレイ時間が記載されていて、今回は京王エリアで展開する「兄編」と都営エリアで展開する「弟編」がそれぞれ「3時間~」であり、web上で進められる「解決編」が「15分~」となっていました。途中、電車での移動が必須であるため、おそらく2時間とかそれ以下でクリアするのは無理でしょう。3時間というのも標準ではなく、「~」がついているところを見ると、まあ最低そのくらいかかるという意味だと思います。7時間半というのは、まあまあ良いペースであったのではないでしょうか。

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マダムの救急搬送記 [日録]

 うちのマダムには妙な願望がいろいろあって、それが叶った場合に周囲がけっこう迷惑するんではないかということも含まれています。
 一例を挙げれば、「入院してみたい」というのがそれです。まず入院するほどの傷病を患うというのが困ったものですし、入院となれば費用もばかになりません。ある程度は保険が効くとはいうものの、だとしてもその後の保険料が上がったりすることもあるので、入院などしないに越したことはないわけです。しかしマダムの入院願望は根強く、どんなパジャマを着るかとか、どの縫いぐるみを持ってゆくかとか、そんなことばかりちょくちょく妄想しています。
 私はしばらく前に検査入院をしたことがあり、大いにうらやましがっていました。
 去年の春、マダムは親知らずの抜歯をすることになりました。血管やら神経やらがけっこう複雑にからまって、近所の歯科医では手に負えないというので、大学病院に紹介状を書いてくれました。それで大学病院に行くと、いわゆる日帰り入院をして抜歯手術をおこなうということになったそうで、マダムはなんだかウキウキしながら帰ってきました。日帰りでも、入院というのが嬉しかったのでしょう。
 朝から出かけて、午前中に抜歯手術を受け、しばらく病室で休んで、夕方近くなって帰ってきたわけですが、病室で昼食を食べたのがワクワク体験であったようです。まだ麻酔が効いているので、配膳員がベッドまで運んでくれたそうですが、あとで明細を見たら、その配膳にまで料金がかかっていたのでおやおやと思いました。自分で取りに行っていればそこは料金がかからなかったのです。
 個人病院ならまた違うのかもしれませんが、入院していると、ちょっとしたことにいちいち料金が発生するというのも困った点です。

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