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「フィガロの結婚」編曲ほぼ終わる [お仕事]

 「フィガロの結婚」の編曲作業がもうじき終わりそうです。編曲譜そのものはもうできているのですが、パート譜も作らなければならず、そちらはまだ少し残っています。
 板橋オペラの第1回として上演した2004年の時は、カットした歌が多く、歌と歌のあいだはセリフでつなぎ、オーケストラと言っても10人足らずで、ごくシンプルなものでした。上演時間が長いと不評であると考えたので、確か2時間かそこらで終わるように作ったのだったと記憶しています。
 編曲は、基本的にはヴォーカルスコアのピアノをそのまま使って、それに他の楽器を重ねるという方法でした。オケの中のピアノの奏者が、リハーサルピアニストとしても参加するということになっていたため、ヴォーカルスコアのピアノと、オケの中のピアノパートが違うことをやっていると負担が大きい、ということで、制作側からそのように指示されたのでした。ピアノパートはヴォーカルスコアを丸写しすれば良いわけなので、ある意味頭を使わなくて済むのですが、編曲作業としてはあんまり面白くなく、いささか不満を覚えていたりしたものでした。

 2007年、第4回のオペラ公演で「フィガロ」を再演しましたが、歌がいくつか追加され、少し長めになりました。しかしセリフでつないでいたのは同様です。オーケストラはちょうど10人になりましたが、ピアノの扱いは第1回と同じでした。
 セリフでなく原曲どおりのレチタティーヴォを用いるようになったのは、一昨年の「ドン・ジョヴァンニ」からです。なおそれまでの他の演目はどうだったかというと、「こうもり」「メリー・ウィドウ」はオペレッタですので、もともと曲間をセリフでつないでいます。また「カルメン」は昔ながらの番号オペラとはいえ、「曲間」というものがあまり存在せず、ほぼすべてのテキストを曲の中で処理していますので、セリフかレチタティーヴォかという問題は起こりませんでした。ついでに言えば去年の「ラ・ボエーム」無限旋律オペラであるため、これまたその問題は発生しません。
 日本語のセリフと原語のレチタティーヴォを較べると、かかる時間がさほど変わらず、日本語にしたところで大した時間節約にはならないということがわかって、それならば原曲を用いたほうが作曲家に対する礼儀にもかなうだろうということで、レチタティーヴォを用いるようになったわけです。もともとは、歌をカットしたために話の辻褄が合わなくなるところを、セリフを新作して無理矢理つなげていたのですが、だんだんカットする歌が少なくなり、セリフを用いなくとも話の筋はつながるようになったという事情もあります。
 今回は、一昨年の「ドン・ジョヴァンニ」に続いて、原曲レチタティーヴォを用いた上演となります。歌のカットは後半に若干あるだけで、ほとんど完全版ということになりました。当然ながら、上演時間は大幅に長くなりました。3時間半でおさまれば上乗というところです。
 オーケストラは前2回からはね上がり、17人となりました。これだけ居れば、ピアノがヴォーカルスコアそのままを弾く必要はありません。むしろピアノが無くても良いとも言えます。オケの中のピアノの奏者は、練習ピアニストを兼ねないということになりました。編曲の自由度が上がったと言えます。
 「板橋編成」で、サクソフォン主体のアンサンブルであることは今までと同様なのですが、弦楽器が増えたのが嬉しいところです。今までも、ヴァイオリンが2挺くらい加わっていたことはありますけれども、今回はヴァイオリンが3挺となりました。3挺あれば、ソロヴァイオリンではなく「弦楽合奏」としての響きを期待することができます。また、チェロとコントラバスが入るのも初めてのことです。何年か前からコントラバスが参加してくれるようになって、低音の支えがずいぶん楽になりましたが、今回はさらにチェロも入ったため、低音部分を弦楽器だけに託すことが可能になりました。今まではそれができなかったので、バリトンサクソフォンとトロンボーンが大忙しで低音部を担当していたのですが、その2本がついにチェロの役割から解放され、だいぶ楽ができそうな雲行きです。編曲の自由度も上がりました。
 ただしバランスのほどは合わせてみないとわかりません。今までヴァイオリンが入っていても、1挺や2挺ではサクソフォンアンサンブルに較べるとボリュームが弱いため、ソプラノサクソフォンもまた第一ヴァイオリンを重ねた動きになっていることが多かったのです。今回3挺になったので、ソプラノサクソフォンもその役割からなかば解放させてみました。弦の役割を代行しなくとも、木管も金管も本式のオケよりずっと少ないので、やることはいくらでもあります。はたして3挺のヴァイオリンが「板橋編成」の中で充分に第一ヴァイオリンとしての役目を果たせるかどうか、実験ということになります。

 ヴァイオリンは基本的には3挺を1パートとして一緒に使うことにしたので、演奏者は17人ですがパートの数は15です。この他、レチタティーヴォのところではキーボードがハープシコードトーンで伴奏をおこないますが、これは編曲とは関係がありません。
 各曲に15部のパート譜を作成するのはなかなか手間取ります。いくつかの曲では省略したパートもありますが、それにしても相当な数になります。私は全29曲中16曲を担当したので、パート譜の数は240部近くなるわけです。
 序曲を除いて第15番にあたる第二幕のフィナーレはとてつもなく長く、なんと940小節もあります。去年の「ラ・ボエーム」は上記のとおり無限旋律オペラですので、小節数なども幕ごとに最初から最後まで通算されていましたが、940小節を上回るのは第一幕だけでした。つまり普通のオペラのひと幕全体に匹敵する長さをこのフィナーレは持っていることになります。
 前回まで、このフィナーレは700小節くらいのところで終わっていたのですが、今回はこれも完全版となりました。最後の240小節ばかりの部分は、年配の女中頭マルチェリーナが、「借金を返せなければ貴女と結婚する」と誓約した古証文を主人公のフィガロに突きつけるシーンで、前回まではマルチェリーナがらみの筋をばっさり省略していたので、この部分が必要なかったというわけです。
 これだけ長いと、パート譜もおのおの10ページを超え、譜めくりポイントなども頭をしぼらなくてはうまく設定できません。ここ数日はそんなことに没頭していました。
 とりあえず、あと2日ほどあればすっかり終わりそうな段階まで進めました。明日の昼から5月2日の晩までちょっと留守するので、その前に全部終わらせたかったのですが、さすがにそれは無理でしょう。まあ今週中というところです。
 去年の「ラ・ボエーム」の編曲(パート譜作成含む)は連休明けまでかかりましたので、それよりは若干(数日)早いというところです。公演日は去年より1週間遅い6月9日で、演奏者も多少は余裕を持てるかもしれません。
 4月は毎年板橋オペラの編曲で埋め尽くされていて、いつもヒヤヒヤものなのですが、われながら感心することに、なんとかなってしまっています。ありがたいことに今年も、無事この時期を乗り切れそうです。


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