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「快速急行」を考える [いろいろ]

 準急快速と見てきましたが、列車の種別というのは会社によっていろいろと考えかたが違い、面白いものです。
 今後も、ダイヤ改正のたびに、新しい種別が作られたり、今までの種別が無くなったりすることがあるでしょう。時刻表および各社サイトと首っ引きで、準急や快速の走っている路線、そしてその走りっぷりを調べてきましたが、半年も経てばもうデータが違っていることになるに違いありません。
 私は関東在住ですので、首都圏の鉄道に関してしか実感を持っては述べられませんが、例えば西武拝島快速など、驚くほど短命に終わった種別にはやはりそぞろ哀れを催します。
 もう1回かけて、各社の興味深い種別について考えてみたいと思います。タイトルには「『快速急行』を考える」と書きましたが、快速急行だけに限らず、快速特急やその他の種別、あるいは過去存在した印象深い種別についても触れたいところです。もちろん、網羅的なことははできないでしょうが……

 快速特急快速急行と呼ばれる種別が産まれるに際しては、多くの場合、それまでの特急や急行の停車駅が年々増えてしまい、利用者の不満の声があがるようになってきたという事情があるようです。
 たいていの路線で、優等列車の停車駅というのは増える一方です。JRの特急だって、停車駅に関して言えば昔の準急、あるいはそれ以下というのがいくらでもあることは前にも書きました。
 新しい団地や商業施設ができるとか、新しく観光の目玉として売り出したいところができるとか、さまざまな理由で、あらたな停車駅が設定されます。急行停車駅のまわりは地価が高いので、デベロッパーがそれ以外の駅前を開発し、そちらの駅のほうが急行停車駅より利用者が多くなってしまったりすると、急行を停めて欲しいという要望が強まります。ところが、今までの停車駅を通過することに関しては、附近住民から猛烈な反対の声が上がります。仕方なく、今までの停車駅に加えてあらたな停車駅を作ることになります。
 好例は小田急江ノ島線でしょう。江ノ島線の急行停車駅は、ずっと以前から、相模大野で小田原線と分岐すると、南林間・大和・長後そして藤沢ということで決まっていたようなものでした。ところが、東急田園都市線相鉄いずみ野線が江ノ島線沿線に延びてくるにあたって、上記の地価の理由が大きかったと思うのですが、田園都市線は南林間ではなくその隣の中央林間に、いずみ野線は長後ではなくその隣の湘南台に接続しました。
 あらたに交通の要衝となった中央林間と湘南台は、当然ながら近代的な駅ビルやショッピングモールなども建造されて、南林間や長後よりはるかに利用者が多くなったのでした。
 小田急としては、南林間・長後に替えて、中央林間と湘南台を急行停車駅としたかったに違いありませんが、それでは南林間と長後の利用者がおさまりません。仕方がないので、両方に停めることにして、急行停車駅は中央林間・南林間・大和・長後・湘南台・藤沢ということになりました。
 ところがこれでは停車駅が多すぎて、速く走れません。ただでさえ小田急の急行はのろいというのが定評で、批判の声はますます強まるでしょう。
 それで、小田急は新種の急行を導入したのでした。あらたな要衝駅となった中央林間と湘南台に停まり、南林間と長後を通過するという種別です。これを、隔駅停車に近くなった旧急行と併存させたのです。これで、旧停車駅の顔を立てつつ、より大きな利益の見込める新停車駅に力を入れることが可能になりました。
 この新急行は、当初「湘南急行」と名付けられましたが、その後快速急行が運行するようになるとそちらに切り替わりました。この事情により、小田急の快速急行は、小田原線よりむしろ江ノ島線をメインステージとしており、毎時3便のうち2便は江ノ島線に乗り入れます。
 他の会社でも、快速急行の誕生には似たような経緯があるようです。ですから、急行の上位列車といえども、「昔の急行」の停車駅と似たようなパターンであることが多いのでした。快速特急も同様です。

 現在、快速急行が走っている会社は、私の知る限りでは、大手で東武・西武・小田急・名鉄・近鉄・阪急・京阪・阪神・南海、それに富山地方鉄道があります。近畿の大手5社にすべて走っているのは興味深いですね。以前は西鉄にもあったように記憶していますが、いまは急行と特急だけに整理したようです。

 東武の快速急行は、現在では東上線だけに走っています。東上線の準急・急行の停車駅は昔からほとんど変化がないので、この快速急行の導入は、急行の停車駅が増えすぎて……という上記の定石にはあてはまりません。宅地化が奥地まで進んでしまい、川越以西各駅停車となる急行では対処しきれなくなったというのが要因でしょう。もう少し先まで通過運転して欲しいという乗客の要望が強まったのです。急行の上位ランクである快速の導入も同じ理由と思われます。
 かつて平日1往復だけ走っており、休日運転が主であった特急が廃止されるのと同時に快速急行が導入されました。停車駅は特急より少し増えていますが、大差はありません。休日の運転は特急時代と同様3往復だけですが、平日は朝夕の上りに限り8便運転されています。
 下りはどうなっているのかといえば、TJライナーが走っています。東上線ではじめて導入された有料列車で、座席整理券が必要です。座席はセミクロスシートで、これも東上線初です。近鉄のL/Cカー、JR仙石線の2ウェイシートと同様、クロスシートにもロングシートにもなるという可動式の座席となっています。
 全部ではありませんが、快速急行はこのTJライナーの折り返し便として走っているわけです。ですから、夕方以降の快速急行はクロスシートモードで走っています。朝や休日のは、残念ながらロングシートのままです。
 東上線の快速急行は近年になって走り始めましたが、東武の快速急行といえばかつては独特の存在でした。その頃は特急「けごん」「きぬ」日光・鬼怒川へのアクセスのためだけに走り、急行は赤城方面へゆく「りょうもう」だけでした。日光・鬼怒川方面と途中駅を結ぶためには快速が走っていましたが、その快速と同じ車輌を用い、ただ座席は指定席になっている列車がありました。東武ではそれを快速急行と呼んでいたのです。「おじか」「だいや」がありました。
 普通快速急行と言えば、急行より上位であるものですが、この快速急行は明らかに急行「りょうもう」よりも下位でした。車輌もランクが低かったし、停車駅も春日部に停まる点で「りょうもう」より下であることがわかりました。快速よりは上位でしたが、停車駅は杉戸(のちの東武動物公園)と新大平下に停まらないというだけの差でした。「快速と急行のあいだ」あるいは「快速並みの急行」という意味で快速急行という呼称を用いていたように思われます。
 この快速急行は、のちに専用車輌が投入され、快速と差別化されたので、急行に格上げされました。そして世にも珍しい「急行より下位の快速急行」も消滅したことになります。

 西武池袋線の快速急行は、1時間に1本くらいの割りでほそぼそと走っていましたが、メトロ副都心線が東急東横線に乗り入れてから、俄然存在感を放ちはじめました。1時間2往復と倍増し、日中はすべて副都心線~東横線に乗り入れます。たいてい副都心線内では急行、東横線内では特急として運転するので、3路線を結ぶ主力列車と称しても良いでしょう。乗り入れ列車は練馬に停車するようになり、急行との逆転現象が起こりましたが、私の見るところ、そう遠からず急行も練馬に停まるようになるのではないかという気がしてなりません。
 一方、休日は(西武の)池袋発着の快速急行が走ります。こちらは練馬には停車しません。昔の「ハイキング急行」の流れを汲んで、朝の下りのみ運転され、秩父鉄道三峰口長瀞まで乗り入れます。この快速急行には、西武秩父線専用のセミクロスシート車4000系が用いられることがあり、池袋で特急料金を払わずにクロスシートに乗れる珍しいケースとなっています。
 新宿線にもつい最近まで快速急行が走っていました。それまでも土休日や野球開催日などに限って、西武園西武球場前へ向かう快速急行と称される電車が走ることはありましたが、田無以西を若干通過運転するだけの急行に過ぎませんでした。近年の「川越号」と名づけられた快速急行はそれとは一線を画す列車で、高田馬場~田無間ノンストップ、田無以西も特急並みに通過して本川越まで走る本格的な優等列車でした。
 しかし、1時間に1往復というひかえめな運転で、また停車パターンも二転三転したあげく、拝島快速と同時に廃止されてしまいました。あまり利用実績が上がらなかったものと見えます。せめて1時間2往復くらい走っていれば、乗客の認知度も上がったと思うのですが。

 小田急の快速急行については上にも書きましたが、湘南急行の後継者という意味合いが強くなっています。相模大野以西の小田原線のほうでは停車駅は急行と変わりません。
 しかし、新宿側では大いに頑張っています。梅ヶ丘和泉多摩川間の複々線化が完成した際のダイヤ改正で導入され、下北沢新百合ヶ丘間を無停車という、小田急としては画期的と言える飛ばしっぷりを見せる種別となりました。私はこのダイヤ改正より以前、「複々線化が完成したら、新百合ヶ丘まで無停車というような列車を走らせてはどうだろうか」と書いたことがあり、予測が的中して内心得意であったものでした。ただ、私がイメージしていたのは、代々木上原や下北沢も通過して長距離の輸送に特化した列車だったのですが、1日10万人以上の乗降客数をさばかなければならない下北沢を通過することはさすがに無理だったようです。
 準急の項で書いた、快速準急が走っていた頃の急行は下北沢~向ヶ丘遊園間が無停車でしたので、現在の快速急行はそれの再来と言っても良さそうです。遊園地が潰れてしまった向ヶ丘遊園に停める積極的理由もありません(他にも多摩急行が通過します)から、新百合ヶ丘まで無停車というのはちょうど良いあんばいであるように思えます。
 今後の要望を言えば、小田原側ももう少し飛ばしたらどうでしょうか。愛甲石田東海大学前に終日停めることもなさそうな気がします。

 首都圏以外の運転については時刻表でしかわからないので、実感を伴ったことは書けないでしょう。
 名鉄の快速急行は、空港線にからむ部分に限っての運行であるようです。名古屋本線でも、常滑・空港線が合流する神宮前以西だけの運転になっています。河和線・犬山線・各務原線にも走っていますが、いずれも本数は多くなく、主力列車とは言えません。
 停車パターンも、急行とさほどの差は無いことが多いようです。名鉄は、同じ名称の種別でも、特別停車とか特別通過する駅が多くて、なかなかややこしいのですが、以前の急行の中で特別停車の多かった駅を急行停車駅としてしまい、そこを通過する便を快速急行と呼び分けることにした感じです。
 近鉄の快速急行は大阪線・奈良線・難波線に走っています。大阪線は飛ばしっぷりはなかなかなのですが、便数が少なく、快速急行とは奈良線のための種別であると認識したほうが良いかもしれません。
 奈良線(難波線も含む)の快速急行は路線の主役と言って良いでしょう。奈良線には特急も走っていますが、ホームライナー的な立ち位置で、日中は運転がありません。快速急行は特急とあまり停車駅が変わらず(近鉄日本橋新大宮だけ追加停車)、しかもほとんどが阪神なんば線本線に乗り入れ、やはり快速急行として三宮まで直行します。阪神本線では、時間帯によって停車駅が異なりますが、特急の停まる御影を通過するなど、こちらも頑張っています。関西圏で終日運転して存在感の大きな快速急行という意味では、この近鉄奈良線~阪神本線の列車がいちばんでしょう。
 阪急の快速急行は京都線神戸線に走りますが、朝夕のみの運転です。京阪も同様ですが、ただでさえ少ない便数の中で、通勤快速急行という種別も分けられています。一方南海の快速急行は高野線だけの運転で、下り5便、上り4便が日中に走るのみとなっています。上記の近鉄・阪神以外は、関西圏の快速急行は補助的な存在に過ぎないように思えます。

 富山地鉄などに快速急行が走っているのは不思議な気がしますが、本線の朝の上りに2便だけ運転しています。急行自体も少ないのに快速急行があるのは頼もしい気がします。寺田富山間を通過するのが急行との差であるようです。
 地鉄は、快速急行とは言いませんが、急行の運転をもう少し増やし、全体のスピードアップを図ったようが良いと思います。これから北陸新幹線が通ると、さらにその必要が出てくることでしょう。

 快速急行は以上ですが、快速特急を走らせている会社もいくつかあります。
 以前は他の社にもありましたが、現在は京成・京急・都営地下鉄・名鉄・阪急の5社です。なお京急では「快特」というのが正式名称となっています。
 この中で、伝統があり、独特の「格」を備えているのは京急です。京成・名鉄・阪急の快速特急は、普通の特急と称する列車と較べて、停車パターンの上でも車輌などの上でも、それほど際立った差は見受けられませんが、京急の快特だけは、特急とははっきりと違う存在です。最近増発著しく、車輌が不足して、一般車の快特も増えてきましたが、本来は東武の快速と並んで、首都圏の私鉄では珍しいセミクロスシートの専用車輌を使っています。速度もJR東海道線の対抗上かなり速く走っています。
 最近は空港連絡の「エアポート快特」が多くなりました。京急線内の扱いは普通の快特と同じですが、都営浅草線に入っても通過運転するのがミソで、浅草線を走る優等列車はこれだけです。
 なお京急には、この他に「京急ウイング号」というのが走ります。平日晩下りだけのホームライナーで、横浜を通過して乗客の分離を図っています。
 京成の快速特急は、かつての特急と同じもので、佐倉成田間を各駅停車するものを特急と呼び、そこを従来どおりに通過運転するものを快速特急と呼び分けたに過ぎません。朝夕などに、特急の代わりのような形で運転されています。こういうのは、ダイヤの上ではさほど面白くありませんね。京成には通勤特急、アクセス特急という種別も走っています。
 名鉄はかつては特急が最高位でしたが、その後快速特急を分離し、さらに今はミュースカイという新種別も登場しました。ミュースカイは全車指定席で、快速特急と特急は一部~全車自由席ということになっています。ミュースカイは空港連絡を主な目的としているため、中部国際空港岐阜間は神宮前・金山・名古屋・一宮にしか停車しない最速達パターンとなっていますが、快速特急と特急は停車駅にさほどの差はありません。主に名古屋本線新安城国府を通過するのが快速特急、停車するのが特急という程度です。併走するJR東海の快速と新快速・特別快速も、停車駅にさほどの差はありませんが、それと似ているかもしれません。
 阪急京都線に走っている快速特急は、現在は土休日に数便のみとなっています。本来、阪急京都線の特急というのが、大阪の十三から京都の西院まで、ほとんど全線ノンストップで走っていたのですが、JR西日本の新快速に大きく水をあけられてしまい、スピード勝負を諦めてこまめに沿線客を拾う方針に改めました。それで特急の停車駅は、かつての急行並みに増えてしまったわけですが、以前の名残のノンストップ列車をほんの少しだけ残しておいたというのがこの快速特急でしょう。もっとも、淡路に停まりますので、かつての特急よりも停車駅は多くなっています。なお、阪急では京都線と神戸線に通勤特急も走っています。
 京阪も阪急京都線と同じような事情で、ほとんどノンストップだった特急を、ほぼそのままの形のK特急と、もう少し停車駅を増やした特急に分離したことがありましたが、現在はK特急は無くなりました。やはり京阪間ノンストップというのは今や厳しいのでしょう。
 近鉄甲特急(ノンストップ特急)は快速特急あるいは超特急と名付け直しても良さそうに思えますが、近鉄はなぜか特急という呼び名を通しています。甲特急・乙特急というのも、便宜上の呼び名であって、駅や車内の案内ではどちらも特急としか言いません。まあ、京伊特急のように、甲乙の中間みたいなのもありますから、すっきりと呼び分けるわけにもゆかないのかもしれません。

 そのほか特急というカテゴリーの中で独特なのは、前に触れた京王準特急、それから山陽電鉄S特急があります。山陽のS特急は、車輌も一般車、停車駅も多くて東二見以西各駅停車と、特急という名で呼ばなければならない理由がよくわかりません。山陽電鉄には準急も急行もありませんから、S特急を急行と呼んで差し支えがあるとも思えないのですが、何かこだわりがあるようです。
 京成スカイライナーは、内部では「A特急(このAはAランクということではなく、エアポートの頭文字らしい)」ということになっているようですが、営業上は特急ではない別格の列車という扱いです。確かに快速特急よりも格上ですから、無理に呼ぶとすれば超特急としか言いようがないでしょう。名鉄のミュースカイも同様なのでしょうが、ただ名鉄の場合は特急や快速特急にもミュースカイと同型の特別車が連結されていることが多いので、ややあいまいになります。

 名鉄には、かつて高速という独特の種別がありました。これは実際には自由席特急で、全車指定席の「特急」と区別するために名付けられたのでした。差別化のために少しだけ停車駅が多くなっていたと思います。その後、特急にも自由席を連結することになって、存在意義を失って、高速は無くなりました。

 特急、急行、快速、準急という基本形に、「快速」「通勤」「区間」などをつけた変種を併用するというのが、現在の列車種別の考えかたでしょう。ところによっては独特な名称で呼び分けたりすることもありますが、この形は今後も当分維持されると思います。
 しかし、JRより小回りの利く私鉄では、いろいろ試行錯誤を繰り返し、時にはあっと思うような名称の優等列車が登場することもあるかもしれません。
 ローカル私鉄における特色ある優等列車が、おおむね廃止傾向にあるのは残念ですが、静岡鉄道に急行や通勤急行が復活したり、まさかの津軽鉄道の準急導入など、最近になって面白い現象も出てきました。これからも楽しみにウォッチしてゆきたいと思います。


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JOE

店長、阪急の昔の特急は西院ではなく、大宮まで止まりませんでしたよ。その後、大宮を通過させると決まったときはだいぶ反対の声が上がったようですが。
by JOE (2013-11-24 01:26) 

コンビニ作曲家MIC

#JOE様
そうでしたっけ(^_^;;
京都側は尖端の4駅に停まっていたような気がしていたのですが……
特急の大宮通過で反対の声が上がっていたのは、なんとなく記憶にあります。
それを救済するために快速急行が導入された感じですね。
快急は西院と大宮に停まるだけで、あとは特急と同じ停車駅ですし……
さらにその快急の停車駅から淡路だけ抜いたのが通勤特急ですか。
こまめに分けて、涙ぐましいというかいじましいというか……昔の阪急特急の豪快さを知る者としては、やや寂しい気もしてしまいます(^_^;;
by コンビニ作曲家MIC (2013-11-24 20:09) 

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