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トンガの大噴火 [世の中]

 トンガ諸島で発生した大噴火はすごかったですね。衛星写真を見ると噴煙は最大直径400~500キロにも及んだようです。仮に富士山で同規模の爆発が起こったら、水戸名古屋富山あたりまで噴煙の下におさまり、かなり長時間にわたって太陽光がさえぎられて暗闇に覆われることになります。
 火山島の名は、フンガトンガ・フンガハアバイとか言うそうで、なんだかユーモラスでもありますが、ネットのコメントでは「いかにも噴火しそうな名前だ」などとも言われています。もともとはフンガトンガフンガハアバイというふたつの島だったのが、2009年に起こった海底噴火によりつながってしまったのだとか。
 いま調べてみたら、しょっちゅう噴火を繰り返しているところであるようでした。1912年1937年に海底噴火が観測され、1988年にも近くで噴火しています。2009年のあとにも、20142015年にかけて散発的な噴火があり、そして今回に至るわけですので、もうバリバリ活動中の火山と見なして良いのでしょう。
 今回の噴火が急に注目されたのは、1991年ピナツボ火山の噴火に匹敵、あるいはさらに大規模かもしれないそのスケールもさることながら、各地に津波被害をもたらすほどの強力さを持っていたからです。日本では、当初「津波の恐れはない」などと報じられていましたが、予想外のスピードで津波が押し寄せてきて、気象庁はたちまち前言をひるがえしました。
 昭和30年に、南米で起こった大地震の影響で、北海道や三陸地方に大被害をもたらしたチリ津波というのがありました。津波というのは地球を軽々と半周して、南米から日本まで届いてしまうということが、このとき完膚なきまでに実証されてしまったわけですが、にもかかわらず今回の津波をあまり予測していなかったというのは不思議な気がします。
 チリ津波を惹き起こした南米の地震(チリ地震)は、マグニチュード9.5で、観測史上世界最大の地震とされています。ちなみに東日本大震災は9.0で、マグニチュードというのは1000の2乗根(ルート1000、およそ32弱)を底とする対数で表される数ですから、0.5違えば約5.6倍の差がつくことになります。チリ地震は東日本大震災の5.6倍くらいのエネルギーを持っていたというわけです。
 実は、地震のエネルギーというのは火山噴火のエネルギーとは桁違いに大きいのです。まあそれぞれの規模の違いがありますから一概には言えませんが、大雑把に言って地震は火山の1万~10万倍くらいのオーダーのエネルギーを持つとされています。どんなに激烈な噴火であっても、地震に較べればそのエネルギーはたかが知れていると言っても良いわけで、今回の津波を予測できなかったのは、そういったエネルギー差のことが頭にあったために、つい軽視してしまったというところかもしれません。
 しかし、今回は2千キロ離れたニュージーランドでも爆発音が聞こえたというほどで、ものすごい衝撃波が発生していたようです。この衝撃波により気圧変動が起こり、その気圧変動が津波を加速させたのかもしれない、ということでした。とにかく、いままで起こらなかったことが起こったというのは確かでしょう。われわれの科学は、まだ地球についてはごく浅いところまでしか解明できていないということなのだと思います。

 ともあれ巨大な波紋が太平洋じゅうに拡がり、ニュージーランドやオーストラリア、南米などにも津波が押し寄せました。もちろん日本にも到達し、漁船をひっくり返したりはしましたが、幸い死者は出なかった模様で、何よりでした。東日本大震災のときの経験が役に立ったとも言えるでしょう。避難はごくスムーズにおこなわれました。神奈川県などではシステムのミスでひと晩に600回以上もアラームを鳴らして、センター試験を控えた多くの受験生の睡眠を奪う大迷惑をかけたりしていたようですが、なんにしても死者を出さないことより優先すべきものは無いのです。
 日本に到達した津波は、高くて3メートルほど、平均して1メートルくらいだったようです。東日本大震災のときの20メートルの大津波に較べれば大したことはないように思われるかもしれませんが、津波というのはたとえ50センチ程度であっても、巻き込まれれば命を落とす危険があります。テレビで、どこの国だったかでそれこそ50センチ程度の津波に襲われたところの映像を見たことがありますが、かぶった波が引くときの力がおそろしく強いのでした。地面に立てた柱がすっぽ抜けてゆくほどです。人間程度ではとても立っていられないでしょう。
 津波の伝わる速さは時速数百キロに達します。チリ津波のときは時速750キロだったと伝えられます。ジェット旅客機並みのスピードで海水の揺動が伝わってくるわけです。海水そのものが動いているわけではなく、揺動が伝わるだけではありますが、その運動エネルギーの大きさは想像がつきます。それが陸地にぶつかり、いわば弾性衝突してはね返るわけですので、引いてゆくスピードもものすごいことになっているのでした。

 それにしても、地元トンガはどうなっているのでしょうか。
 トンガはオセアニア地域で唯一の王国です。人口は約10万人で、日本の中型都市よりも少ないくらいで、まさにお伽噺のような島国です。しかし19~20世紀の列強支配のもとでも独立を貫き、英国の保護国にはなったものの植民地にはいちどもなっていません。その意味ではタイなどと同様とも言えるでしょう。伝統的には専制君主国でしたが、つい最近の2010年から立憲君主国に移行しました。
 昔からけっこう親日的な国で、トンガ出身の力士も何人も居ます。また現国王トゥポウ6世陛下は、2019年の今上天皇の即位礼のときに王妃陛下と共に来日しています。
 東日本大震災のときは、1000万円近い義捐金を送ってくれたりもしました。人口やGDPなどを考えると、日本の経済規模に換算すれば一千億円にも相当すると言え、国民ひとりあたりでは台湾を抜いて世界一の義捐額であったそうです。
 そのお礼の気持ちも込めて、ぜひ日本からも多大な復興支援をしたいところですが、現地の状況がまだはっきりしません。
 ニュージーランドの空軍が飛行機を飛ばしましたが、噴煙のために視界が悪く、至るところに火山灰が降り積もって着陸できるところも無さそうで、為すすべもなく引き返したと聞きます。また船で近づこうにも、港湾も火山灰由来の軽石だらけでとても碇泊できそうにないと言うのでした。そういえば去年の8月に小笠原の海底火山が噴火して、伊豆沖縄などに大量の軽石が流れ着いて始末に困ったという話がありましたね。火山灰というのはなかなかあなどれないようです。
 通信状態も良くありません。幸い日本大使館とは衛星電話でつながり、トンガ国内に滞在していた40人ほどの日本人とは全員連絡がついたとのことでしたが、トンガ政府からの公式な声明が、あったような無かったような状態ではっきりしません。声明はトゥポウ陛下でも首相のトゥイオネトア氏でもなく、国会議長のファカファヌア氏から為されています。国王や首相はどうしたのでしょうか。亡くなられたのか、避難もしくは負傷により、声明を出せる状態に無いのか。
 国民2名の死亡が確認された、という報もありました。あれだけの大爆発で、犠牲者がその程度で済むのだろうかと思います。まあ、フンガトンガ・フンガハアパイ自体は無人島なので、爆発そのものに巻き込まれたということは無さそうですが、15メートルの津波が来たそうでもあり、実際はもっと亡くなっているような気がします。
 さしあたっては水が足りず困っているようです。水道に火山灰が入ってしまったようで、飲めたものではなくなっているのでしょう。一刻も早く支援物資を届けたいところではありますが、上記のとおり飛行機や船が近づけない状態であることに加え、もうひとつ問題があります。
 それは、トンガがいまだにひとりのコロナ感染者も出していないという事実です。南洋の離れ小島には、さしものコロナウイルスもまだ拡がっていないのでした。これから支援物資が届けられたり協力隊が送られたりしはじめると、それらの人の行き来に伴って、コロナもトンガに入ってしまうのではないかという危惧があります。難しいところです。ともかく、日本からできることが何か無いか、よく考えてみることが大切でしょう。

 ピナツボ火山の噴火よりも大規模かもしれないとなると、今後数年間は寒冷化が起こるのではないかと思われます。ピナツボの噴火の数年後、日本でも冷害でコメの収穫が激減しました。いわゆる「平成の米騒動」です。

 ──コメは一粒たりとも輸入しない。

 農家の票を確保したくて、直前までそんなことを言っていた政治家たちでしたが、たちまち掌を返し、タイ米を大量に輸入したのでした。米を買おうとするとタイ米を抱き合わせで買わされたものです。それでもタイ米の評判が悪かったので、ついにブレンド米などということをやりはじめました。
 バカな話で、タイ米はインディカ種なのですから、そもそも調理のしかたがジャポニカ種とは違います。インディカ種は、たっぷりの湯で茹でたのち茹で汁を棄て、しばらく蒸らしてやればおいしく食べられるのであって、ジャポニカ種と同じ炊きかたをすると匂いが鼻についてかないません。そういうことを説明したパンフレットでも配布すれば良いものを、なんの説明も無しに抱き合わせたりブレンドしたりしたもので、

 ──タイ米は臭くてまずい。

 という風評被害が拡がってしまったのでした。おかげでタイの人々の感情も害してしまい、外交的にも大失敗となりました。
 現在ではタイ米はわざわざ「香り米」「ジャスミンライス」などと名づけられて、カルディなどでよく売れています。カレーライスやピラフにするのなら非常においしいし、肉料理などに添えるにしてもジャポニカよりも良いようです。ブレンド米などにしては、ジャポニカの良さもインディカの良さも共に潰してしまったようなものでした。
 半年ほどではありましたが、大変な騒ぎだったのをよく憶えています。
 もしかすると来年、あるいは再来年に、同じような冷害が起こるかもしれません。いや、たぶん起こるでしょう。トンガの噴煙は明らかに成層圏に達しており、細かいチリは大気循環に乗って世界中に拡がるはずです。太陽光がかなりの程度遮断され、地表は冷えはじめるでしょう。
 おそらくそれは、短期的には温暖化の影響を上回ると思われます。こうなったときに、最近カーボンニュートラルがどうとかかまびすしいヨーロッパ諸国などがどのように掌を返すか、ちょっと楽しみな気もしているのでした。

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phaos

こんにちは
一つだけ情報をお伝えしておきますと。
ここhttps://news.yahoo.co.jp/byline/shinoharashuji/20220116-00277593
にあるように, 神奈川県では一晩に 626 回のエリアメールが出されたのですが, それは延べ (各地域の合計) であって, 各地域二十回ずつ位というのが正確です。
横浜市川崎市の各区と横須賀市は二十回で, 大体夜中に三十分に一回位ずつエリアメールが届き, その度にアラームが鳴って, 寝るに寝られない状態でありました。
僕も今週はずっと眠くて辛かった。
by phaos (2022-01-22 11:15) 

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