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映画音楽の編曲 [お仕事]

 コーロ・ステラのために書いた『大地の歌 星の歌』は出来上がりましたが、それとは別に私はもう1ステージ分の編曲をしなくてはなりません。ここしばらく、私はすっかり「お楽しみステージ」担当になっており、いわゆる合唱曲とは違う、編曲ものを手がけていました。
 何度か書きましたが、『唱歌十二ヶ月』を採り上げたあたりからそんな傾向になりました。特に10月の歌「村祭」のときなんかは、笛や太鼓も繰り出したお祭り騒ぎにしたもので、なんとなく毎回、ちょっとしたお祭り騒ぎを加える方向性が生まれてしまったようです。その次は『サウンド・オブ・ミュージック』をやり、『アニソン・フラッシュ!』をやり、去年の演奏会では『みんなのうた・世界めぐり』をやりました。歌う側の衣裳などもだんだん凝るようになって、『アニソン・フラッシュ!』あたりからはほとんどコスプレ大会みたいな雰囲気になりました。
 こうなってくると、毎回新たなネタを考えるのも大変になってきます。一般によく知られた曲であり、メンバーがコスプレできて多少の動きなどもつけられるステージで、アレンジはそう難しすぎないけれどもちょっと洒落た感じ……となると、いろいろありそうで、意外と思いつきません。
 『サウンド・オブ・ミュージック』に続いてミュージカルでまとめるという手はすぐに考えつきますが、いろんなミュージカルからいいとこ取りした名曲集みたいのはあんまり面白くないし、かと言って1ステージを1作品でまとめるとなると、やはり少なくとも5、6曲は欲しいところで、1作品のなかでそんなに知られたナンバーがあるミュージカルというのも案外見当たらないのでした。
 知られたナンバーがそこそこの曲数あったとしても、女声合唱で歌うのがふさわしいかという別の問題もあります。男性の立場からのラブソングを女声合唱で歌ってみても、さほど面白いものではありません。あれこれ考え合わせると、使えそうなのはせいぜい『マイ・フェア・レディ』くらいでしょうか。

 それでミュージカルというくくりから少し飛躍して、映画音楽ということにしてみようかと考えました。あえて「ミュージカル映画」は外すことにしようと思います。
 ちょっと考えただけでも、「ライムライト」「慕情」「男と女」「白い恋人たち」「太陽がいっぱい」とかいくらでも出てきます。本腰を入れて探し始めたらものすごい数のリストになってしまいそうです。
 ただちょっと心配だったのが、コーロ・ステラに英語の歌詞を歌わせるのはなかなか大変で、以前フォスターのステージをやったときにもだいぶ苦労しました。だから日本語歌詞にしたいと思うのですが、目当ての曲に日本語歌詞がついているとは限りません。むしろ基本的にはついていないと考えるべきでしょう。
 正指導者の松永知子さんに相談してみたら、
 「それは、私訳とかにしても良いんじゃないですかね」
 と言われました。確かに『サウンド・オブ・ミュージック』のときは、意外と定訳のついていないナンバーがあり、「私のお気に入り」やら「すべての山に登れ」なんてのまで私訳の歌詞をつけたものでした。そんな有名な曲、とっくに定訳があるものだとばかり思っていたのですが。
 まあ、いざとなったら自分で訳詩をするしかないか、と思って調べはじめたら、驚きました。これまた意外なことに、けっこういろんな曲に訳詩があるのです。
 上に例に挙げた5曲ですが、「ライムライト」「慕情」「白い恋人たち」にはすでに日本語歌詞を発見しています。「太陽がいっぱい」はまだ探していませんが、あるかもしれません。
 「ライムライト」なんてメロディーは有名ですが、歌いやすいラインとは言えず、まさか日本語歌詞があるとは思いもよりませんでした。しかし、ちゃんと山川啓介氏が訳しており、森山良子さんが歌っているのでした。見事にぴったりと音節が合っていて感心しました。例の、下から湧き上がるような上行型のところなど、

 人は弱くて寂しいから……

 と、実にうまく処理されています。文字で書いただけではわかりづらいのですが、この言葉を乗せて歌ってみると、あの細かく曲折した複雑なメロディーが、非常に歌いやすいのでした。
 感心した勢いで、すぐに編曲をしてしまいました。
 「慕情」はラブソング翻訳の女王というべき岩谷時子さんが訳しています。それも、倍賞千恵子さんのために訳したものと、森昌子さんのために訳したものの2種類があって、それぞれ違った訳しかたになっています。私は倍賞版を採用することにして、これもかなり短時間で編曲を済ませてしまいました。映画音楽の中でもこういう名曲中の名曲になると、私自身にもそれなりのイメージが出来上がってしまっているので、編曲するにもそんなに頭をしぼらなくて良いようです。
 編曲作業を済ませたのはその2曲ですが、「白い恋人たち」はザ・ピーナッツが日本語歌詞で歌っているのを確認しています。ただ、原曲が3拍子であるのに、このザ・ピーナッツ版では4拍子にアレンジされており、私としてはそこは原曲どおりにしたいところですので、この歌詞が3拍子にうまく乗るかどうかがちょっと心配だったりします。
 「男と女」に関しては、対訳をしているブログなどはいくつか見つけましたが、日本語歌詞まではできていないようです。フランシス・レイによる和声のつけかたなどが独特で、ぜひ採用したい歌なのですけれども、歌詞についてはあの

 ダバダバダ ダバダバダ

 というスキャットにうまくつなげるのが難しいのでしょうか。ちなみに正確には、最初の「ダ」は無くて、前に来る単語の最終音節が入ります。

 Comme nos voix ba da ba da, da ba da ba da
 Chantent tout bas ba da ba da, da ba da ba da

 あえてカタカナで書けば、

 コムノ ヴヮバダバダ ダバダバダ
 シャントトゥ ババダバダ ダバダバダ

 なのですね。今回楽譜や歌詞サイトなどを見てはじめて知りました。
 なんとなく、うまい具合に訳してやりたいというような意欲を感じぬでもありませんが、今回は既成の日本語歌詞がある歌に限るべきだろうかと迷ってもいます。

 それから、記憶に残る名曲を挙げてみると、1950~60年代くらいに集中してしまうのも気になります。できれば、広い年代の曲を取り扱ってみたいとも思います。
 マダムは私より映画音楽に詳しいので相談してみたら、「ニュー・シネマ・パラダイス」など本田美奈子さんが日本語で歌っていたから条件に適うんじゃないかと教えてくれました。「ニュー・シネマ・パラダイス」は80年代の映画ですので、これは使えそうです。
 しかしそんなマダムも、ランダムに映画音楽を挙げて貰うと、やっぱり50~60年代の曲が増えてしまうようでした。要するにその頃が映画の黄金期であったということなのでしょうから、やむを得ないものがあります。
 50~60年代が少し多めになってしまうのは仕方がないということにしましょう。あと、30年代や40年代、70年代あたりからも代表選手を出したいところです。20年代にまでさかのぼるとサイレント映画になってしまうので、ちょっと趣きが違ってくるかもしれません。また、90年代以降の新しい作品になると、まだ「誰でも聴いたことがある名曲」というところまでには昇華し得ていないと思われるし、第一ロックっぽいのが多くなってきて女声合唱で歌うには限界がありそうな気がします。
 その上で、あんまり曲調が似たものも続けたくありません。できれば拍子なども各種取り揃えたいところです。実は冒頭で私が思いつくままに挙げた5曲、この点ではけっこう絶妙なセレクトでした。「慕情」は普通に4/4拍子ですが、「ライムライト」は4/4拍子と書かれることが多いものの実質は2/2拍子ですし、「白い恋人たち」は3/4拍子、「太陽がいっぱい」が6/8拍子、そして「男と女」は拍子がめまぐるしく変わるいわゆる変拍子の曲です。無意識にあれこれ取り揃えてしまっていたようです。
 2曲は早々と編曲を済ませてしまったとはいえ、選曲もこれからで、はたして思ったとおりに揃えられるかどうかわかりませんが、わりと楽しくなりつつある自分に気づいて意外の念を覚えています。


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