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埼京線と相鉄線 [世の中]

 来月末から、JR埼京線相模鉄道線と直通運転をおこなうそうです。
 例によって、私は鉄道好きなわりにその種のニュースに疎く、鉄道ニュースサイトなどではずいぶん前から報じられていたにもかかわらず、駅に貼ってあったポスターを見てはじめて知り、最初は何かの間違いかと思ったほどです。
 相鉄が、建設中の神奈川東部方面線を介して、東急と直通するという話はだいぶ以前から聞いていました。この路線によって、相鉄は念願の新横浜駅乗り入れを果たし、同時に東京都心へのルートを手に入れることになると、大きな期待を寄せているということも耳にしていました。
 東部方面線は、東横線の日吉に連絡し、そのまま目黒線側に直通して、メトロ南北線都営三田線埼玉高速鉄道などとの直通運転も見据えているとも言われていました。私の家の近くを通っている埼玉高速鉄道に、近いうち海老名行きとか湘南台行きとかが走るようになるのだろうかとワクワクしていたものです。
 そんな話を聞いていたもので、埼京線との直通というニュースは完全に盲点になっていました。そんなことがあるのだろうかと茫然としてしまいました。
 だいたい神奈川東部方面線は、埼京線とはずいぶん離れています。大崎から湘南新宿ラインと同じルートを通って、横須賀線に乗り入れるにしても、なおかつかなりの距離があります。
 しかし、この直通運転のために必要だった新線は、相鉄の西谷から羽沢(駅名は羽沢横浜国大となる予定)までの2キロあまりだったそうです。埼京線電車は羽沢までどうやってゆくのだろう、と不思議に思いました。
 実はこれも私のもの知らずであって、そもそも現在の横須賀線は、東海道新幹線に並行して造られた貨物線に通勤電車を走らせているというものです。これが武蔵小杉のあたりから、いわゆる武蔵野南線に乗り入れ、鶴見に出るというルートをとっています。武蔵野南線の終点(というか起点)である鶴見には、旅客列車の駅は設けられなかったので、横須賀線はそのまま横浜までノンストップで走ることになります。
 この貨物線、鶴見で終わりではなく、そのままもっと先まで続いていたのでした。調べてみると、これがなかなか尋常な規模ではなく、生麦あたりから再び東海道線と分岐し、羽沢を経て、相鉄の上星川駅のあたりを横切って、東戸塚駅まで到達しています。この路線をほとんど見たことが無かったのは、おおむね地下を通っているからなのでした。
 直通電車は、この貨物線を羽沢まで利用し、そこから東部方面線に乗り入れて西谷に向かうということなのでした。東部方面線の羽沢~西谷間は新幹線とダブっており、たぶん新幹線の用地を利用しているのでしょう。
 もともとの形の埼京線は、池袋赤羽を結んでいる赤羽線と、赤羽から大宮まで東北新幹線の腹付線増部分をつなぐことで成立しました。新幹線が通過して騒音や振動の公害が予想される地域住民への見返りとして、通勤新線としての埼京線を同時に造ったという経緯です。その埼京線が、東海道新幹線の用地を利用して造られた新線を通って神奈川県央部へ向かうというのも、何かの縁でしょうか。
 なお、私が以前から聞いていた、東急への乗り入れも、もちろん放棄されたわけではなく、数年後に予定されているようです。相鉄側からすれば、手っ取り早く開通させられる羽沢までを早速使って埼京線への乗り入れを果たし、その後日吉まで完成させて東急への乗り入れを果たすという順序になるわけです。

 それにしても、こうなると電車の走行ルートが相当に複雑なことになりそうです。東部方面線が完成した暁には、相鉄から、従来の横浜行き、埼京線ルートで新宿大宮行き、東急ルートで西高島平浦和美園行きなどが走ることになります。そして相鉄側も、海老名と湘南台のふたつのターミナルがありますから、かなり複雑怪奇なことになると思われます。
 埼京線側からは、りんかい線乗り入れと相鉄乗り入れの2ルートが生まれます。新木場行き・海老名行き・湘南台行きなどが走るわけで、大崎までは一緒とはいえ、誤乗防止に充分なアナウンスが必要となるでしょう。
 東横線の田園調布日吉間についても、ややこしいことになりそうです。まあ、東横線と目黒線はずっと並行して複々線状態で、のりばが分かれていますので、誤乗の危険はそれほど無いかもしれませんが。

 武蔵小杉から羽沢横浜国大までは、いまのところどの資料を見ても途中駅について触れられていません。鶴見までは横須賀線と同じ線路を走るわけなので、新川崎には停まるかもしれませんが、上記のとおり鶴見自体にはプラットフォームが無いので通過でしょう。そこから羽沢横浜国大までひとつも駅がないとすると、相当な駅間距離となります。十数分間無停車ということになるはずです。
 発表していないだけなのか、とりあえず駅無しで開業してみるのか、情報に疎い私にはよくわかりませんが、当初は無停車にしても、そのうちいくつか駅が設置されるのではないかと思います。この貨物線は、横浜線東横線横浜地下鉄ブルーラインと交差します。横浜線との交点には駅がありませんが、東横線の妙蓮寺駅には近いし、ブルーラインの岸根公園駅はほぼ直下(どちらが下かはわかりませんが)です。この2箇所にはいずれ駅ができるのではないでしょうか。横浜線の大口駅も近いと言えば近いので、新大口駅くらいできるかもしれません。
 相鉄からは各駅停車と特急が乗り入れてくるそうです。ただし全列車、埼京線内は各停となります。ほとんどは新宿止まりですが、朝晩だけ武蔵浦和発着とか、稀に通勤快速になって川越まで行く電車もあるらしい。まあ、埼京線の各停というのは、大崎池袋間は山手線の快速みたいなものですので、途中から急に走りっぷりが見劣りするということもありますまい。また、当面は湘南台発着の電車は無く、すべて海老名発着になるようです。
 現在の相鉄の特急は、海老名便は二俣川大和、湘南台便は二俣川いずみ野にしか停まらないという、なかなかのかっ飛びっぷりを見せてくれる電車ですが、新しく西谷がジャンクションとなり、たぶん全列車が停車することになるのでしょう。特急はすべて埼京線へ向かうのか、今までどおり横浜発着便も残すのか、そのあたりのダイヤ編成も楽しみです。これまでの西谷駅は、快速も停車しない小駅でしたが、どのように変貌するでしょうか。相鉄利用者は工事の様子などで先刻承知とは思いますが、あまり相鉄に馴染みの無い私としては、試乗しにゆくのを心待ちにしています。

 なおこの直通運転開始と同時に、埼京線の快速の停車駅が変わることになっています。埼京線の快速は、開通当初から、赤羽・戸田公園・武蔵浦和・与野本町・大宮という停車駅をずっと守り続けてきましたが、このたびついにそれが崩れます。快速は武蔵浦和以北各停ということになるそうです。
 乗降客数が、武蔵浦和を境にして段違いになってしまうそうで、そのため武蔵浦和発着の電車を多くするということらしいのでした。そうすると以北の本数が減りますので、快速を停車させることにしたようです。その代わりに、いままでは列車間隔が偏っていて、この区間では最大18分くらい待たなければならなかったのを、おおむね10分おき程度にするというのでした。
 もとから快速の停車しない、中浦和・南与野・北与野の利用者にとっては、本数は変わらないものの待ち時間が整理されて少しだけ便利になると思われます。与野本町の利用者だけは、毎時9本だった電車が6本になるので大ダメージです。しかしこの駅だけが突出して乗降客数が多いというわけでもなかったようなので、まあ仕方のないことかもしれません。
 それにしても、快速と名乗りつつ、通過運転をするのは赤羽~武蔵浦和間だけになってしまうのでした。京浜東北線の快速運転も、なんだかんだで停車駅が増えてきてしまいましたが、首都圏の速達列車というのは、どうしてもそういう宿命を辿りがちであるようです。
 なお、通勤快速はいままでどおり、武蔵浦和のみ停車で走るそうです。

 ちょくちょく感慨を催していますが、鉄道というのは、線路がつながっている限りは、いろんな可能性を秘めているものだと思います。わずかな改造や増築で、思いもよらなかったルートが開発され、あらたなネットワークが生まれる様子には感動せざるを得ません。

 逆に言えば、ネットワークを作れない鉄道というのは脆弱で、すぐにクルマなどに追い立てられて廃止に向かってしまいます。これは多くの地方ローカル私鉄の運命でもありました。富山地方鉄道が案外頑張っているのはやはり路線網を持っているからです。一方隣の石川県北陸鉄道は、一時は140キロに及ぶ延長距離を持つ堂々たる地方私鉄だったのに、ネットワークを作れていた部分が非常に少なく、そのためにクルマに各個撃破されて、いまや気息奄々です。
 一時期、あちこちにやたらと新交通システムを建造するのが流行しました。モノレールもこの一種ですし、もちろんゆりかもめ日暮里・舎人ライナーのようなガイドウェイ式のものがその代表例です。しかし、複数の路線を持っているのは大阪高速鉄道大阪モノレール)と千葉都市モノレールだけで、あとはまったくネットワークを作れていないため、あんまり振るわないようです。
 やはり、既存の鉄道資源をなるべく活用する方向のほうが、将来的な展望があるのではないでしょうか。富山ライトレールJR富山港線をLRT化したものですが、鉄道資源の活用であったために、他の鉄道、例えば富山地鉄の路面線との直通というプランも可能になります。これを新交通システムなどにしていたら、そんなプランは浮かびようもなく、その路線で完結した事業だけになってしまっていたでしょう。
 東京近郊には、電車の路線図に載っている路線だけではなく、他にも多くの貨物線が張り巡らされています。武蔵野線も、京葉線も、横須賀線も、湘南新宿ラインも、そういう貨物線を有効利用することで生まれ、あるいは生まれ変わりました。このたびの埼京線延長も貨物線の再活用です。トラック輸送が主力となり、鉄道貨物の比重が小さくなってきて、貨物列車も減り、閑古鳥の啼いている貨物線はたくさんあります。そういうところをどんどん旅客化して、少ない投資で新線を開業させて貰いたいものです。
 とりあえずは湾岸線なども旅客化の計画があるようです。これは山手線の田町あたりから分岐し、大井ジャンクション昭和島、もとの羽田空港駅である天空橋小島新田などを経て浜川崎に達している貨物線です。私のイメージですが、これを旅客化したら、常磐線からの上野東京ラインを直通させれば良いのではないかと思います。常磐線沿線から羽田空港へは意外と行きづらいので、こちらに直通すれば便利になりそうです。
 浜川崎から、さらに鶴見線に乗り入れ、弁天橋まで走って、そこから守屋町までのわずかな区間を新設し、再び貨物線に乗り入れて桜木町までつなげるというプランも考えられます。「都会のローカル線」扱いされている鶴見線の活性化にもつながるでしょう。
 貨物線の活用のほか、これは妄想ですが、東海道新幹線に並行して埼京線方式の通勤新線を敷設したらどうかと考えたこともあります。まあその一部は横須賀線や東部方面線ということになるわけですが、私の考えたのは、主に新横浜から小田原までの区間です。東部方面線のことを知らないときに考えたので、西谷まではかぶっていますが、その先、小田急江ノ島線高座渋谷、JR相模線倉見などに接続しつつ小田原まで走らせるという案でした。まあ、末端のほうは需要があるかどうかわかりませんが。
 ともあれ、来月末の埼京線~相鉄線直通、数年後の東急~相鉄線直通が楽しみです。相鉄は、首都圏の大手私鉄としてはただひとつ、東京に眼をくれずに横浜に忠節を尽くしているけなげな鉄道という印象があったのですが、それがついに東京乗り入れを果たし、しかもどうやらそちらが主力になりそうな雰囲気で、いろいろな感興を催します。好結果となることを祈ります。

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