SSブログ

早い梅雨明け [世の中]

 観測史上初めての、6月中の梅雨明けということで、この週末は実に暑かったですね。また猛暑が訪れるのかと思うとうんざりします。
 平年の関東地方の梅雨明けは7月21日頃だそうですから、今年の梅雨明け(6月29日)はそれより3週間以上早いということになります。去年も比較的早かったのですが、それでも7月8日でした。
 そうは言っても、今週の水曜くらいからはまた雨模様になるようで、それがまたしばらく続くようです。梅雨明けなんて嘘じゃないのかと言いたくなりますが、梅雨明けというのは雨が降らなくなるということではなく、梅雨前線が行ってしまったということなので、たぶん水曜からの雨は、梅雨とは違うタイプの降りかたということなのでしょう。
 また、早い夏の訪れということで、またぞろ温暖化の影響がどうとか言い出す人が出てきそうです。アメリカの西海岸などは平年より気温が低いそうですから、全地球的に見れば温暖化しているとは言えなさそうです。とはいえ、局地的現象としてのヒートアイランド化は、特に首都圏では確実に進んでいると思います。
 実際、陽が暮れてから外出したりすると、なんとも曰く言い難いような匂いを感じることがよくあります。熱帯を旅したときなどに、夜によく漂っている、藻を積み重ねたような、潮が混ざったような、一種青臭いような生臭いような匂いで、この匂いに接すると、ああおれはいま南国に居るんだなあと実感したりします。その独特の匂いが、近年の東京でもしばしば感じられるのでした。

 何度か書きましたが、近年の東京の夏の気温や湿度は、ジャカルタとほぼ同じくらいになっているそうです。ジャカルタは南緯6度、ほぼ赤道直下と言って良い場所にある街であり、温帯にあるはずの東京がそんなところと同じくらいというのは、何やら信じがたいような気がします。しかし、ジャカルタの気候の諸元を調べてみると、平均最高気温は31~33度くらいであり、平均最低気温は25度前後であり、平均湿度は80%内外といったところです。まあジャカルタの場合は、この状態が一年中続くという点で東京とは違うわけですが、この数値を見ると確かに東京の夏と大差ないことがわかります。
 気温とか湿度といったことは、緯度だけで決まるわけでないことはもちろんです。同じ緯度にあっても海沿いか内陸かではまるで違う気候になりますし、海沿い同士を較べても、近くに暖流があるか寒流があるかによって全然違うことになります。ガラパゴス諸島などもほぼ赤道直下にありますが、寒流のフンボルト海流のただ中にあるため、陽差しは非常に強いものの、気温はそれほど上がらないと聞きます。
 日本列島は世界最大の暖流である黒潮に面していますから、同じ緯度の他の地方に較べて、夏に高温多湿になるのは避けられないと言えるでしょう。
 もっともその、「同じ緯度の他の地方」というのが、案外われわれはきちんと認識していなかったりもします。例えばヨーロッパであれば、南国の代表みたいなナポリでも、青森とほぼ同じ緯度です。ローマ札幌ミラノ稚内がだいたい同じくらいになります。南欧が暑いのは、ほとんど海流の無い地中海を挟んでアフリカの沙漠地帯と向かい合っているからでしょう。逆に言うと、ヨーロッパ人から見ると日本というのはずいぶん「南の島」に思われるようで、札幌オリンピックをやることになったときに、

 ──あんなところに雪が降るのか?

 と疑った人が相当居たようです。
 東京のある北緯35度の線を西へ西へと辿って、その近辺にある都市を見てみると、これまた意外の念に打たれます。まず釜山があり、中国大陸に渡ると開封とか西安といった歴史的な都市がほぼこの緯度です。有名な函谷関もそうですね。これらはもう少し北にあると思っていた人が多いのではないでしょうか。
 さらに西へ眼をやると、インドパキスタンが係争しているカシミール地方を経て、アフガニスタンの首都カブールイランの首都テヘランが35度線の近くにあります。シリアキプロスのほぼど真ん中を突っ切り、クレタ島をかすめます。やがてアフリカ大陸にぶつかりますが、チュニスアルジェも35度線より北にあることに驚かされます。ジブラルタル海峡もこの線の近くです。
 アメリカ東海岸人にとってのいわば「南国リゾート」であるバミューダ諸島なども、35度線よりわずかに南にあるだけです。アメリカ大陸に入ってしまうとほとんどろくな都市が無く、この線より南にあるUSAの大都市と言えば西海岸のロスアンジェルスしかありません。ちなみにロスアンジェルスは北九州市と同じくらいの緯度です。
 こうして世界地図を見てみると、東京あたりは、むしろ冬にあれだけ気温が下がるのが不思議と考えたほうが良いのかもしれません。内陸にある中国の都市とか、高山帯であるカシミールあたりを除けば、同じ緯度上で、冬に雪が降るイメージを持てる地域がほとんど無いことに気がつきます。テヘランやロスアンジェルスが雪に埋まっているところを想像できるでしょうか。
 日本の太平洋岸でも、冬にそれなりに気温が下がるのは、これまたかなり大きな寒流である親潮も近くを流れているからで、だいたい黒潮と親潮が押し合うことで、酷暑、冷夏、暖冬、厳寒などのさまざまな気候現象が生まれると言って良いでしょう。それぞれの海流の勢力は年によって変わりますし、エル・ニーニョとかラ・ニーニャとかの南米附近で起こる現象の影響を受けたりもします。
 だから、暑い日が多いのが温暖化の顕れだ、なんてことはいちがいには言えません。
 とはいえ、私の子供の頃に較べると、やはり夏の気候はだいぶ変わってきているように思えます。

 昔も暑い日はいくらでもありましたが、いまといちばん違うのは、晩になれば少しは涼しかったという点です。「夕涼み」という言葉もありました。
 「熱帯夜」というのはたまにあるから話題になったのであって、いまのように毎晩毎晩熱帯夜が続くなんてことは滅多にありませんでした。
 夜が暑くなったのは、これは疑いようもなくヒートアイランド現象です。CO2とは関係ありません。地面がアスファルトで覆われ、建物が片端からコンクリートになって、昼間にたまった熱を捨てる場所が無くなったのです。
 露地に打ち水をすれば、けっこう周りの熱を奪って涼しくなったものでしたが、アスファルトの地面に打ち水をしても蒸し暑さが増すだけです。最近では気化熱を奪う建材なども出てきていますが、まだまだ普及しているとは言えません。
 最高気温が35度を超える日など、数えるほどしかありませんでした。なお、これも何度も書いていますが、気温というのはいまでも基本的には百葉箱の中で測った温度を指します。つまり芝生などの上の、風通しの良い、日陰で測っているわけです。こんな恵まれた環境に居られる人間はあんまり居ないのであって、外に居るたいていの人は、アスファルトの上で、風も建物に遮られ、かんかん照りに照りつけられて歩いています。体感気温はいわゆる「気温」より10度近く高いのではないでしょうか。

 冷房も普及して、エアコンの室外機がけっこうな熱発生源になっています。以前に較べればだいぶ熱の発生も抑えられるようになっているとは思いますが、何しろ数が数です。道を歩いていて、うっかり建物の室外機の近くに寄ってしまって、熱風が吹きつけてくるのに閉口した人も多いことでしょう。
 とはいえ、だから冷房を使うな、とは言えません。特にお年寄りなど、冷房を使わなかったために熱中症にかかってしまうケースが増えています。
 お年寄りは、どうしても冷房を使うのを「もったいない、贅沢だ」と思う人が多いように思われます。また、実際に感覚が鈍くなっていて、暑さの感じかたがそれほどでもないという場合もありそうです。さらに、
 「近頃の若い者はたるんどる。ワシの若い頃は冷房なんぞ……」
 と意地になっているケースもあるでしょう。しかし、昔より暑さが厳しくなっているのは確かなので、無理をせずに冷房を使っていただきたいと思います。

 私の住まいは古いマンション(と称するアパート)の1階で、地面の上に直に床が張られているものですから、夏はとりわけしんどいものがあります。地面から直接熱が伝わってきます。なんで施工者は縁の下というものを作ってくれなかったのだろうかと思います。床の下に空気の層があるだけで、熱伝導はかなり抑えられるのです。
 窓を開けても、地面に近いために熱風しか入ってきません。それにまわりじゅう建物があるので、そもそも風もろくに入らないのでした。虫ばかり入ります。
 そんなわけで、毎年夏になると、冷房をかけまくって、電気代の金額に目をむくことになるのですが、これはもうやむを得ないことでしょう。
 最近、28度という「経済温度」がなんの根拠もない数字であったことが暴露されました。冷房を使う場合に、28度という高めの温度に設定するのがいちばん「エコ」だ、と言われてきたのですが、よく調べてみると、他の温度に設定したときと較べて、電気代にもエネルギー消費量にも有意な差が出なかったということでした。「ちょっと暑い」くらいにしておいたほうが気分的に「節約している」と感じられる、というだけの話だったようです。
 28度というのが体感気温ならまだ良いのですが、パソコンなどの発熱物体が近くにあると容易に5度くらい上がってしまいます。いまや大半のオフィスで、ひとり一台くらいパソコンがあるでしょうから、設定が28度ではとても暑くて仕事になりません。
 公民館などの施設で、冷房を28度に設定しているばかりか、利用者が勝手に設定温度を変えられないよう、温度調節レバーを厳重にテープ止めしているなんてところもあります。そういうところでは、合唱の練習をする程度でも汗だくになってしまいます。ましてやダンスなどで利用することにでもなれば、熱中症で倒れる利用者が居ても不思議ではありません。公共施設の「28度信仰」はいい加減やめて貰いたいものです。

 ともあれ、今年も暑い夏になりそうです。皆様、体調を崩されないよう充分にご留意下さい。

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。