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コロナ渦中の演奏会 [お仕事]

 何度か以前のエントリーでも触れていたと思いますが、指導している女声合唱団コーロ・ステラの第11回演奏会の復活公演が今日開催されました。
 本来は7月に開催予定だったのですが、コロナ禍により延期されていたものです。
 7月には緊急事態宣言は解除されていたわけですが、その直前まで続いていて、3月頃から6月にかけて、練習がまったくできていませんでした。そもそも練習場所が全然取れなかったのです。どこの施設でも、合唱の練習や芝居の稽古などには場所を貸してくれませんでした。練習中にコロナがうつるというわけではなく、練習後にお茶を飲んだりお酒を飲んだりする場でいちばんクラスターが発生しやすい、ということは比較的早い時期に検証されていたのですけれども、それでも合唱はダメ、というところばかりだったのでした。
 従って、宣言が解除されても、7月に予定どおり演奏会を開催することは無理でした。とても人様にお聞かせするような演奏はできなかったでしょう。
 場所は府中の森芸術劇場を押さえてあったのですが、涙を呑んで取り止めました。当時、コロナ禍が理由のキャンセルの場合、キャンセル料を免除もしくは減額してくれるホールが多かったのがわずかな救いと言えるでしょうか。
 演奏会をキャンセルした7月から、かろうじて練習が再開されましたが、部屋の定員を半分にするというような施設が多く、なかなか練習場所の確保には苦労したようです。もともとコーロ・ステラは決まった練習場所を持っておらず、世田谷区内の地区会館とか区民集会所などを渡り歩く合唱団でした。それでも近年は、新代田区民集会所経堂地区会館にほぼ固定していたのですけれども、そのどちらも定員が半減された結果、超過になってしまったのでした。そんなに人数の多い合唱団ではなく、指導者などを合わせてもせいぜい20人程度なのですが、揃って練習するためには、本来の定員が40名以上の場所を探さなければならなかったわけです。
 7~8月は、そんなに広い場所を取っておらず、メンバーを半分ずつに割ってAチームBチームとし(星組月組宝塚歌劇団みたいな名前をつけていたようですが)、同じ日に時間差で練習するという強行軍をおこないました。指導者は同じことを2回やらなければならず、なかなか大変でした。3クラスの生徒に同じ内容の講義をしなければならなかった、中学校の講師だった時分のことを思い出しました。
 9月からは、広い部屋を取るようになりましたが、場所は従来以上にバラバラで、ジプシー合唱団ぶりに磨きがかかっていた印象です。上北沢とか池尻とか、これまで行ったことの無いような場所に行ったものでした。なお上北沢区民センターの多目的室は、駅からも近いし、広々していて天井も高いし、音響も悪くなく、今後も使ったら良いと思いましたが、そうそうは取れないのかもしれません。
 ともあれ、11月に復活公演をすることは、比較的早い時期に決まっていました。11月の時点でのコロナの蔓延状況がどうなっているか、まったく予想もつかない状態でしたが、せっかく練習を重ねてきたものを、いちどちゃんと形にしておきたいという気持ちが大きかったものと思われます。
 場所は何度も使っている代々木上原けやきホールになりました。このところ、コーロ・ステラの演奏会は、けやきホールでは収容しきれないほどのお客が集まるようになり、それでいろいろな会場を取るようになったのですが、今回は平日午後ということで、それほど集まらないことが予想されました。なおこの時期の土日のけやきホールは、まったく空きが無かったようです。やはり春から夏ごろに予定されていて、コロナ禍で延期になった演奏会などが、この時期に復活公演をおこなうというケースが多かったのでしょうか。

 今回の演奏会では、信長貴富『ノスタルジア』外国曲篇から4曲、ベンジャミン・ブリトゥン『キャロルの祭典』からの抜粋、大田桜子『ねこにこばん』、それに私が昔サニーサイド・ミュージックから上梓した『世界名作劇場・アルプスの少女ハイジ』からの抜粋、というプログラムの予定でした。しかし練習期間などを勘案した結果、『ねこにこばん』は割愛し、ハープ伴奏を入れるつもりだった『キャロルの祭典』はピアノ伴奏となりました。また、いつもなら「客席の皆様もご一緒に」という歌がひとつ用意され、メンバーが着替えているあいだなどに私があらかじめお客たちに歌唱指導しておくという段取りであったものが、さすがに客席で歌うのはまずいだろうということでカットされました。開催延期が決まる前は、去年のNHKの朝ドラ「なつぞら」の主題曲だった「優しいあの子」というのを用意していたのでしたが。
 そんなわけで、いろんな意味でコンパクトになりましたが、それでもこの時期に復活公演を試み、やり遂げた熱意は素晴らしいものだと思います。
 1週間前くらいからまた新規感染者数が急激に跳ね上がり、「第3波」到来かと騒がれています。まあ、寒くなってきたらまた増えるだろうということはずいぶん前から予想されていて、今さらあわてることも無いような気がするのですが、Go Toイートは中断されるし、Go Toトラベルのほうも縮小されそうだし、また世間がいろいろうるさくなりそうな雲行きです。こうなってはまた延期するべきではないかという話も出たようですが、延期したからと言っていつになれば安心して開催できるのかもわからないし、むしろ本格的にうるさくなる前にやってしまったほうが良いかもしれない、ということで、予定どおり11月24日に決行することになりました。

 通常4ステージ構成であるところを、3ステージだけにしておりますので、当然ながら演奏会の所要時間が短く、従ってリハーサルも短くできたため、会場入りは正午で充分でした。10時半くらいに家を出るつもりが、出がけにいろいろと細かくトラブってしまい、10時45分ころになりました。とはいえ目的地は代々木上原ですので、そんなに焦ることもありません。
 『世界名作劇場』の中の「母をたずねて三千里」のオープニングテーマ「草原のマルコ」で、間奏にリコーダー二重奏が入ります。本当はケーナが良いのですが、ケーナを演奏できる人はそう多くないので、リコーダーで代用しています。前々回に「みんなのうた・世界めぐり」というステージをやった際、ペルー民謡の「花祭り」でやはりリコーダー二重奏が入っており、その時にリコーダーを吹いてくれた宮本靖代さん、それにうちのマダムのふたりにまた頼みました。
 今回はいささか音域が高くて、普通に小学校などで使っているソプラノリコーダーでは演奏困難です。最初の合わせをした日、マダムはソプラノを持って行って、まあ少々練習不足気味だったせいもあるのですが、かなり心配な音を出してしまいました。そのあとで、合唱団のメンバーが、もっと高い音が楽に出るソプラニーノリコーダーを貸してくれました。ところがマダムは妙に気合が入ってしまったようで、自分であらたにソプラニーノを購入しました。そんなに高い楽器ではないとはいえ、他で使う機会も少なそうです。私が昔書いたリコーダー八重奏のための曲でも、ソプラニーノは使いませんでした。過剰投資にならなければ良いのですが。
 ともあれ、マダムと一緒に会場へ向かいました。最近、11月なかばとは思えないような暖かい日が続いていましたが、今日はやや肌寒さを感じました。ふたりとも、ほぼ本番の衣裳そのままで移動しました。この点はこの季節で良かったところです。いつものように7月だと、会場への行き来だけでも汗だくになるので、本番の衣裳を着たままなど移動できません。つまり、荷物が増えるわけですが、今日は荷物もコンパクトで済みました。
 リハーサルは、ところどころ確認しながらの通しという感じで進みました。けやきホールではずいぶん前にいちどリハーサルをしているのですが、その後いろいろ変わったこともあり、動きなどもつきましたので、そのチェックなどもしなければなりませんでした。
 リハーサルが終わると、もう開場まで20分かそこらです。私たちは着替えが無いので楽なものでした。もっとも靖代さんとマダムは、受付スタッフのサポートも頼まれていたので、開場が近づくとそちらに行きました。今回は、お客の数はいつもより限られているとはいえ、感染者が出た場合の経路確認のために、チケットにすべて記名して貰うことになっていたので、本来の人数では手が足りなかったようです。お花とか菓子折りなどは断っていたはずですが、それでも持ってくる人が居て、その対応も必要だったのでしょう。
 開演したらお役御免です。マダムは客席に入って第2ステージまで聴いていたとのこと。

 14時半に開演しました。客席には1つおきに着席禁止の紙(ハイジやネロの絵などが印刷されていました)が貼られており、当然ながら客入りもポツポツですが、それでも平日昼間によく集まってくれたものだと思います。
 第1ステージの前に、恒例の「ステラの四季」を歌います。10周年だったかのときに松永知子さんの詩と私の作曲で作った団歌で、「四季」のタイトルどおり春夏秋冬で4番まであります。いつも演奏会の冒頭で歌いますが、4番まで歌うと長すぎるので、春夏の2節だけ使っています。演奏会がほぼ6~7月なのでどうしてもそうなってしまい、秋冬を歌う機会は来ないのではないかと諦めていました。しかし今回は11月に延期されたおかげで、秋冬の2節を久しぶりに披露することができました。延期されて良かったと言える点のひとつです。
 『ノスタルジア』ステージでは、私は出番がありました。「大きな古時計」ウッドブロックが使われており、舞台袖でカンコンと鳴らす必要があったのでした。毎回、たいてい前半は楽屋でのんべんだらりとしていますが、今回はそうはゆきません。ウッドブロックを叩くのは簡単なのですが、良い音が出る箇所は案外と限られており、テンポを保ちつつスイートスポットを狙うのはなかなかスリリングでした。
 『キャロルの祭典』ステージは楽屋のモニターで聴いていました。モニターを通しているせいか、ソプラノの高音の響きが若干良くないように感じました。やはり「第3波」を迎えて内心の不安が顕れているのだろうか、などとつい考えてしまいます。
 しかし、『世界名作劇場』ステージでは、思ったより声が伸びていて、よく響いていたように思えました。単にのどが温まってきたということだったのかもしれませんが。
 例によっていろいろ扮装に凝りまくっています。今回はマスクを着用した公演にせざるを得ませんでしたが、そのマスクもメンバーが自作して揃えています。
 演奏した曲目は、「アルプスの少女ハイジ」のオープニング「おしえて」「フランダースの犬」のオープニング「よあけのみち」「母をたずねて三千里」のエンディング「かあさんおはよう」とオープニング「草原のマルコ」「あらいぐまラスカル」のオープニング「ロックリバーへ」、そして「赤毛のアン」のオープニング「きこえるかしら」の全6曲です。サニーサイドの本がそもそも、その5番組のオープニングとエンディングを集めたものです(なぜか「ペリーヌ物語」だけ使わなかった)。この初期作品群は、舞台となっている国の民族音楽要素を活かしたテーマソングになっており、その点で「世界めぐり」的な趣向も楽しめるだろうと考えたのでした。
 「おしえて」には、よく知られていますがヨーデルが使われています。ヨーデルを耳コピするのは非常に大変だったのを憶えています。「よあけのみち」はフラマン語の児童合唱が採り入れられています。歌詞カードに「Zingen, zingen, kreine vlinders」と書いてあったのを見たときには、これは一体何語なのだろうかとうろたえたものです。
 「母をたずねて三千里」だけオープニングとエンディングの2曲とも採用したのは、オープニングが目的地である南米の、エンディングが出発地であるイタリアのイメージで作られていたためでした。で、演奏順としては出発地を先にしたわけです。
 「ロックリバーへ」はハーモニカバンジョーといったいかにもアメリカっぽい楽器が使われています。リコーダーだけでなく、ハーモニカも使いたかったのですが、これ以上人を増やすのは難しいため、吹くとしたら私がやるしかありません。ハーモニカ演奏にはあまり自信が無いので、鍵盤ハーモニカでごまかしました。
 「きこえるかしら」はさすがに「カナダっぽい」わけではありませんでしたが(というか「カナダっぽい音楽」ってなんだろう?)、何しろ三善晃センセイのアニメソングというレアな代物です。曲の内容的に、演奏会全体を締めくくるにふさわしいものであったと思いました。
 実は「ロックリバーへ」は、編曲したときにあんまり興が乗らず、単純に3番までの繰り返しにしてしまっていました。それも芸が無いので、2番と3番には松永さんにソロで入って貰いました。その流れで、最後になる「きこえるかしら」も、一部分を独唱にして変化をつけました。前回の映画音楽ステージで、松永さんのソロを入れたら大変好評であったため、二匹目のドジョウを狙った趣きでもあります。
 マスク着用のために若干音質がデッドになってしまったり、言葉が飛びづらくなってしまったりといったデメリットはもちろんありましたが、ステージの出来としてはけっこう良かったような気がします。リコーダーも鍵盤ハーモニカも独唱も、いい感じで入りました。ソプラニーノリコーダーというのは、それなりのホールで吹くと、ピッコロのような快い伸びのある高音になるものだと知りました。またどこかでアレンジに使ってみようかな。
 上記のとおり、「優しいあの子」を予定していた「ご一緒に」コーナーは省略し、エンディングとして中田喜直先生の「別れの歌」を歌って終演としました。ロビーでの挨拶もやめて、舞台上で送り出しをするにとどめます。この前の北区合唱祭も同様でしたが、ウィズコロナの演奏会というのは、どうしても温度の低さを感じずには居られないようです。
 もちろん打ち上げも無く、そのまま撤収、解散となりました。メンバーやお客から新規感染者が出ないことを祈るしかありません。
 そんな状態ではありますが、やはり決行して良かったと思います。再度延期などしていたらきっと後悔したことでしょう。メンバーのやる気も、そこまでは保たなかったかもしれません。
 これから第3波がどのくらいの規模で襲来するのか、いつ頃になれば演奏活動が忌憚なくできるようになるのか、それはまったくわかりません。来年の1月17日に予定している板橋ファミリー音楽会5月1日に予定しているChorus STの復活公演なども、その時期にどうなっているかの予測はまるで立てられないままに、本番に向けて動きはじめています。心配や不安は拭いようもありませんが、それでも動かないことにはどうにもならないというのが正直なところでしょう。音楽に関わる者みんなが、それぞれに頑張るしか無いのだろうと思います。

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