SSブログ

パート譜に関するいくつかの作業 [お仕事]

 しばらくご無沙汰いたしました。前の更新から3週間ちょっと経ってしまいました。
 いろいろと、区切りのつけづらい作業が立て込んでいて、落ち着いて日誌を書いている余裕が無かったのでした。それらもようやく、なんとか先が見えてきた感じですので、やっと更新できた次第です。
 やらなければならなかった作業は、主にふたつあって、ひとつは次の日曜日に公演を迎える『ラ・ボエーム』の楽譜管理です。オペラ公演でオーケストラのリハーサルがはじまると、だいたい私も顔を出すことになっています。オーケストラの譜面というのは、単純な視認による校正で片が付くことは滅多に無く、実際に音を出しながら正誤確認をしてゆくしかないところがあり、私はリハーサルの場に同席して、奏者たちから報告される不審点、疑問点などに応えつつ、譜面に朱を入れてゆきます。本来はそれによって元のデータを修正してゆくわけですが、板橋オペラの場合、同じ演目であっても同じオーケストラ編成になったことがまず無く、データ修正はあんまり必要ありません。
 しかしながら、今回の『ラ・ボエーム』は、小編成オケとしてはぎりぎりいっぱいの規模になっており、これ以上ふくらませるとすれば、もはや原曲の編成を用いるしかなさそうです。おそらく何年かあと、3度目の公演をおこなうとしても(なお初回は2012年)、できれば今回の編成をそのまま使える形にして貰いたいもので、だとすれば今回、できる限りの譜面校正を施しておく必要があるでしょう。
 そのため、例年はほぼ口頭で答えているだけの修正を、今回はきちんと正誤表を作って記録しています。譜面ミスというのは案外と多いもので、すでに第5弾の正誤表まで配布しています。私の入力ミスだけではなく、記譜ソフトのバグとしか思えないような不都合も発生しているようです。また、ちょっとしたマウス操作の過誤で音がずれてしまったりすることもあるらしいのでした。
 加えるに、スコアを作ったのがすでに1年前であるという事情もあります。言うまでも無く、コロナ禍のため去年の公演は見送られたのでした。それで、ある程度のスコアのミスはパート譜を作るときに気づく場合があるのですが、今年になってパート譜を作るにあたり、何しろ1年あけているのでそういう気づきもできず、正誤表の項目数は例年のチェック箇所よりだいぶ多くなっているような気がするのでした。
 板橋オペラのオケリハは、例年5月半ばくらいからはじまるのが常なのですが、今年は短期間で一挙に詰める方針らしく、先々週の金曜日からはじまりました。いままで3回あり、明日が4回目、兼歌い手との初合わせとなります。このペースで正誤表を作ってゆくのは、なかなか忙しいというわけなのでした。

 もうひとつの作業は、『星空のレジェンド』のパート譜づくりです。
 数年後、としか言えないようですが、平塚市に新しいホールができることになっていて、そのこけら落とし──ではないにしても落成次第に、オーケストラヴァージョンの『星空のレジェンド』を上演することになっています。オーケストレーションは3年ほど前からはじめていましたが、前半を済ませたところでしばらく停滞しており、残りは去年仕上げました。そのときはスコアを提出したわけですが、本格的にオケ付きでやる前に、カラオケでやってみたいという希望が指揮者から出たらしく、スコアデータを元に音源を作成したのが去年の秋の話です。打楽器やソロヴァイオリンなど、いささか残念な音質にしかならなかったパートもありますけれども、楽器の位置関係や音量などをかなり綿密に調整してパン値やベロシティ値を設定し、ブレスのところで短い休符を加えたりダイナミックスを付け替えたりして音源用楽譜を作り直し、さらに音響ソフトを使ってリバーブ(残響)やサラウンドを付け加えると、けっこうそれなりに聞こえる音源になってくれました。パソコンで何度も鳴らしては悦に入っていたりしたものでした。
 はたしてそのカラオケ(音源データ)を、生演奏の合唱と併せることができるのか、予想がつきません。しかしいちおう今年の9月に、カラオケプラス生合唱という形で上演することが決まっています。
 それはそれとして、何年かあとになる生オケ版の演奏のために、いくつかのオーケストラに打診しているらしいのでした。亡くなった大川五郎先生は、名の知れたプロのオーケストラにやって貰うことを夢見ておられたようですが、予算的にそれは厳しいらしく、学生オケや市民オケなどのアマチュアを考えていると聞きました。
 で、その交渉時に、パート譜が揃っていたほうが好都合ということで、急遽、パート譜を作成することになったのでした。
 その作業は、決して難しいというわけではありません。しかし、とにかく量が多いのが厄介でした。
 何しろ『星空のレジェンド』は全13曲あります。そしてパート数は木管8人、金管10人、打楽器3人、ハープひとり、弦楽器5パートの計27パートです。今回の『ラ・ボエーム』でも23パートでしたから、それより多いわけです。いくつかの楽章ではハープや金管の一部が使われておりませんので、27×13=351にはならないものの、340くらいにはなります。この340という数字が、最終的なPDFファイル数となるわけです。
 記譜ソフト「Finale」のいま使っているヴァージョンでは、スコアとパート譜はリンクさせることができます。つまり同じスコアファイルの中にパート譜を含めてしまうことができるので、Finaleデータとしてはもっとずっと少なくなります。ただすべてのパートがリンクできるかというとそうでもなく、ハープのようにスコアに表示しない書き込み(ペダル指定など)を多量に必要とするパートは別ファイルにしたほうが都合が良いですし、スコアで同一楽器種の複数パートを1段の五線で記譜している場合も、その五線の分の別ファイルを作ってからパートを分けたほうが簡単です。
 さらに、木管楽器などでは、特に第二奏者は楽器の持ち替えをしばしばおこないます。例えば第二フルートはピッコロと持ち替えることが多いですし、第二オーボエはイングリッシュ・ホルンと、第二クラリネットはバスクラリネットなどと持ち替えることがあります。また木管は金管に較べると動きが細かいことが多く、それゆえスコアでも第一奏者と第二奏者の五線を分ける必要が出てくることがあります。それで、フルートならば、「フルート2本を一緒に記した五線」「第一フルートだけの五線」「第二フルートだけの五線」「第二フルート奏者がピッコロに持ち替えたときに使う五線」の4段を用意していたりするわけです。実際のスコアでは1~2段しか表示していませんが、裏を返すとそれだけの用意をしていなければならないのでした。この場合、パート譜を作ろうとすると、「フルート2本を一緒に記した五線」のうち第一フルートの音を「第一フルートだけの五線」に移し、第二フルートの音を「第二フルートだけの五線」に移し、その「第二フルートだけの五線」と「第二フルート奏者がピッコロに持ち替えたときにつかう五線」を一緒にして1段の五線にまとめることになります。こういうことを、スコアにリンクしているパート譜上でやると、スコアが収拾つかないほどぐちゃぐちゃになってしまいます。4段分だけ別ファイルとして、そちらで作業しなければなりません。
 ともあれそうやって作成したパート譜を、PDFファイルとして文書化するのがこれまた厄介です。残念ながら、この作業はいまのところ、まとめてやってしまうことはできず(できるソフトがあるのかもしれませんが、たぶん高額です)、ひとつずつ手作業でやってゆくしかありません。作業そのものは単純なのですけれども、それを340回繰り返すとなると、注意力も集中力もとてももちません。上に書いた『ラ・ボエーム』関連の作業とも同時進行しなければなりませんので、何日にも分けて作業せざるを得ませんでした。
 そうやって340個のファイルが出来上がると、今度はそれをパートごとにひとまとまりのファイルにまとめます。データとしてはそのほうが扱いやすいのです。それぞれのパートの表紙もつけるようにしますが、そのあとで譜めくりのチェックをしなければなりません。
 パート譜の譜めくりのときは、ある程度の余裕が得られる長さの休符のところを宛てるのが常識です。弦楽器の場合はのべつまくなしに弾き続けていることが少なくないので、ふたりでひとつのパート譜を見るようにし(このツーマンセルのことを「プルト」と呼びます)、片方が弾くのをやめてページを繰るということがよくありますが、それにしてもそんなケースはなるべく避けたほうが良いのは言うまでもありません。基本的にはどのページも、長めの休符で終わるか、長めの休符の前で終わるか、どちらかになるように作譜します。
 しかし、曲の進行と楽器の使いかたによって、どうしてもそれが無理ということもあります。その場合は、休符の無いページ替わりのところを、左ページに置くようにして、なんとか見開きで演奏できるようにします。
 そういう形にするために、曲間に白紙のページを挿入しなければならないこともあるのでした。『星空のレジェンド』の一曲一曲はそう長くないとはいえ、パートによっては3~4ページに及ぶ場合があるので、このチェックは不可欠となります。
 いずれにしろ、予想していたより手間のかかる作業ではありました。

 以上2件の、最近忙しかった作業の話を枕にして、別の話題に振るつもりだったのですけれども、ここまでですでに相当な字数を費やしてしまいました。なかば愚痴みたいなもので、恐縮です。
 若干中途半端な気配はありますが、今日はここまでで終わっておき、考えていた話題についてはまた後日書いてみたいと思います。

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。