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動画配信開始 [お知らせ]

 去る5月1日に、Chorus STの演奏会を開催した件についてはすでに書きましたが、そのとき撮って貰っていた動画が配信されました。
 こちらから視聴できます。約1時間半の長い動画ですが、臨場感あふれる雰囲気ですので、よろしければご覧ください。
 1ヶ月ほどこの形で配信し、その後は曲ごとにばらして、お手頃なサイズで視聴できるようにする予定です。
 動画配信については、去年の5月に演奏会が延期になって、その後秋ごろから考えられていたことでした。まだしばらくはコロナ禍が続くことは予想されていた段階です。1年後とかに演奏会をやっても、お客が呼べるかどうかわからないし、このとき集めていた賛助合唱団も、もういちど集まれるかどうか心許ない状態でした。
 しかし、ずっと練習を重ねてきたことだし、中止ということにするのはあまりに惜しい、ということで、演奏会ではなく動画撮影会ということにして、きちんとした業者に撮影して貰い、それを配信したらどうかという案が出てきたのでした。ひとつには、Chorus STメンバーの有力な出自元である都留文科大学の合唱団が、秋に演奏会がわりの動画配信をしていて、その動画を視聴した団員が、こういうのも良いのではないかと考えはじめたことがあったのでした。
 ただ今回の演奏会の場合、「詩人フルリーナと三人の作曲家」「続・TOKYO物語」のふたつの初演ステージがあり、初演を動画配信という形でやってしまって良いものかどうか、また有料にするか無料にするかという問題もありました。
 有料にすればお金が入って、経費のいくぶんかは回収することができます。ただ、有料配信だと配信期間が1週間とかけっこう限られるのと、新曲を広く知らしめるということにはなりにくいきらいがあります。
 また、著作権料の問題もありました。実は上記の都留文大のプログラムで、Chorus STで予定されていたイーヴォ・アントニーニ氏の作品が歌われたのでしたが、有料配信にしたところその著作権料がどえらく高くついたというのです。曲を演奏して料金をとる以上、著作権料がかかるのはやむを得ませんが、動画の有料配信についてはずいぶんと高率で設定されていたそうです。確かに、配信にすれば理論上はホールの定員をはるかに上回る人数が視聴可能なわけですから、ホールの定員によって決まってくる著作権料よりも高率になるのは無理もありません。とはいえ、そんなのはチケットがたちまち売り切れてしまうような人気アーティストの場合ならわかりますが、客席を埋めるのに苦労している弱小団体でも同じ扱いというのは、なんだか納得しがたい気もします。
 有料配信であれば、お金を払って貰う建前上からも、撮影は業者に依頼して、それなりに見ばえのするものを作るべきだろう、と私は思いました。しかし、上記のようないろいろな問題があって、私自身は有料配信にはあまり賛成できない気持ちでした。なんと言っても、自分の作品がふたつもあるので、一般の眼に触れづらい形の配信にはどうしても消極的になります。
 そして無料であれば、そんなにハイクオリティの動画を作ることも無いのではないかと考えました。大体、youtubeなどの動画配信で音楽を視聴する場合、音質は良いものであって貰いたいとは思いますが、画質とか、あるいは画像編集の善し悪しなどは、そんなに気になりません。よくレコードのレーベルの静止画だけずっと映して、その背後で音楽だけ流しているという「動画」がありますが、ぶっちゃけその程度でも充分です。録音の上に、練習時やレクリエーション時、あるいは過去の演奏会などの写真をいくつか静止画で入れるくらいで良さそうに思え、それだったら何も業者を入れるには及びません。メンバーの中でできることでしょう。
 「演奏会」をふたたび開催するか、「動画配信」にするか、しばらくは議論が続きました。そのうち、やはり人々に生の音を聴いてもらいたい、それこそ音楽の本質だという意見が強くなり、大勢はリトライ演奏会開催へと傾いたのでした。

 とはいえ、コロナ禍が終熄する気配は見えません。われわれは5月1日という予定日に、たとえ緊急事態宣言が出ていたとしても演奏会を決行しようと考えていましたが、本当にそうなった場合、最悪、無観客開催ということを考えなければなりません。そうすると、やはり動画配信の目も少しは考慮しておくべきでしょう。
 動画配信についての調査を担当していた団員は、動画作成と舞台写真撮影の両方をおこなっているスタジオに接触し、演奏会が何事も無く開催された場合は写真撮影を依頼する段取りをつけてくれました。この形にしておいたことが、のちに非常に助けになるのでした。
 すでに何度も書いたとおり、4月25日に第三次緊急事態宣言が発令されました。演奏会の開催を予定していた北とぴあは、発令を待たず、その発表のあった23日に早々と休業を決めてしまいました。その後のてんやわんやについては、詳しく書きました
 場所を移し、5月1日の開催はなんとか可能になりましたが、客席数は激減し、しかも舞台上のソーシャルディスタンスのために歌い手や指揮者を客席に下ろすという措置も取らなければならず、なおかつ50%定員が普通である現状において「25%定員」という非常に厳しい条件を課されたため、呼べる「お客」はわずかな人数となりました。この段階で、動画配信が決まったと言えるでしょう。写真撮影を頼んであったスタジオには、急遽動画撮影を依頼することになりました。
 そして、無料配信にすることも決まりました。北とぴあからは使用料が全額戻されることになっていましたが、新しい会場──千葉市若葉文化ホールの使用料は北とぴあに較べるとはるかに安く、動画撮影をスタジオにやって貰う経費は、なんとかその差額で賄えそうだったのです。つまり会費の追加徴収が無くて済みそうだというのが決め手になったと言えます。
 この時点で、指揮者や合唱団首脳部は、「演奏会」ではなく「動画撮影会」だという意識に切り替えたようです。来聴者も「お客様」とは呼ばず「関係者」という言いかたになりました。出演者のコネで「撮影会」を「見学」に来た人たち、という扱いです。私はどうもそういう割り切りかたができず、そのために最後の1週間、微妙に温度差が生じていたような気もします。
 「動画撮影会」と割り切った結果、たとえば合唱団がステージごとに舞台に入退場するということはやめてしまいました。ソーシャルディスタンスの関係で楽屋にも全員は収容できないし、舞台袖で「密」になることも避けられたため、出演者も基本的には客席で待機し、演奏するときに三々五々舞台に上がるという形にしたのです。動画を公開する際には「板付き」になったところから流すよう編集いたしますので、それで差し支えないわけです。
 それから、第2部である「詩人フルリーナと三人の作曲家」の前に入れるトークコーナーと、第3部である『続・TOKYO物語』の前に入れるトークコーナーを、第1部終了後にまとめて収録しました。これもあとで編集し、それぞれのステージの前にトークしているように見せかけるというわけでした。
 演奏会として見た場合は、いまひとつ締まらない感じだったかもしれませんが、動画撮影会見学というつもりで見れば、舞台裏を覗き見たようなものですので、それなりに愉しんで貰えたようにも思えます。

 さて、録画したデータを2週間ばかりかけてスタジオ側でざっくり編集し、それをChorus ST側でチェックして、さらに1週間ほど微調整したのちに公開となったのでした。スタジオ側との連絡はもっぱら電子メールに頼っていたこともあって、なかなか意思疎通がままならず、こちらの動画配信担当者がだいぶ苦労したと聞きました。私はそこには関わっていなかったので詳細はよく知りませんが、ともあれご苦労様と言いたいところです。
 かくして完成した動画が、昨夜から配信となったのでした。20時に公開しましたが、最初はブレミア配信とかで、いわば生放送というか、ストリーミング配信のような形になりました。つまり、先送りなどはできず、リアルタイムで流しているようなものです。その代わり、それを見ながらチャットする機能がついています。詩人のフルリーナさんもチャットに参加してくれて、楽しいプレミア配信となりました。
 他の皆様方にもプレミア配信を愉しんでいただきたかったのですが、動画のURLが公開されたのが昨日の朝のことで、この日誌で告知する暇は残念ながらありませんでした。プレミア配信後、フリー配信になっているはずなので、ぜひご覧ください。
 演奏会はそのとき限りですが、ネットに動画を公開してしまうと、ずっと残ることになります。私は自分の関わった演奏会の録音を聴き直したりすることがあんまり無い人間で、それはたいていの場合どこかに「あちゃー(@o@;;」とか「うわ~( ゚Д゚)」とか叫びたくなる箇所があるからでもあります。それは他のみんなも同様のようで、プレミア配信前に、いやに緊張している様子でした。
 しかし、今回に関しては、最初のうち若干硬さもありましたが、おおむね好演、いや名演と言っても良いような演奏であったように思われます。何度も聴きたいような気になる本番録音というのは、滅多にありません。
 和音が崩れたり、延ばしている音が微妙にずれたりすることもほとんど見られませんでした。かなり細部までしっかり作り込まれた演奏であったと公言できる気がします。自信をもって人に薦められる動画です。
 それと、マスクを着用して歌っているのにそれをまったく感じさせない、という評にはいくつか接しました。会場からは不織布マスク着用を義務付けられていたし、並びかたも変則的だし、一時はどうなることかと思いましたが、音量・滑舌ともに充分だったようです。
 練習はしばしば緊急事態宣言で中断させられ、決して充分ではなかったと思うのですが、それを上回る「想い」がみんなの中にあったのではないでしょうか。

 合唱団に限らず、演奏活動が一体に制限されている昨今、動画配信という形で活動している人や団体も多くなってきました。こういう形がいつまで続くのか、まだ先は見えません。ワクチン接種ははじまりましたが、集団免疫獲得まではまだ時間がかかるでしょう。視聴する側から言えば、動画配信であっても音楽に接することができるのはありがたいとも言えますが、やはりホールで、お客と一緒に「場」や「空気」を創り上げるのが音楽の王道だ、という考えかたもまだ捨てられません。「供給者」と「需要者」の顔がお互い見えなくなってゆくのが近代産業社会の宿命なのかもしれませんが、音楽もまたそうなってゆくのでしょうか。

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