「WEST CODE 西武謎道中」解決篇(1) [趣味]
西武鉄道で毎年開催している「WEST CODE」という謎解きイベントシリーズの第4弾です。都営地下鉄&京王電鉄の「鉄道探偵」シリーズが昨シーズンは見送られたことを考えると、西武が続けてくれているのはありがたいと思うべきでしょう。まあ鉄道探偵シリーズはすでに開催7回を数え、若干ネタ切れの気配も無いではなかったのですが、昨シーズンの開催時期がオミクロン株の蔓延に重なってしまったことで見送られたというのはほぼ間違いないでしょう。その点「WEST CODE」シリーズは春から夏の開催だけに、コロナウイルスの活動力もやや低下する時期で、見送る必要も無かったわけです。
また、「WEST CODE」はストーリーそのものはシリーズになっておらず、制作上の「縛り」が少ないのも良かったかもしれません。前回の「タイムトレインの切符」は喧嘩した「親友」との仲を修復するという青春ものっぽいストーリーで、終わってみるとなんとも甘酸っぱい印象が残りましたが、今回は一転して時代劇仕立てです。
舞台は江戸の西北方にある「イルマ」国。国主の久米川家政(くめがわいえまさ)が高齢となり、そろそろご子息に家督を譲っては、と家臣からも進言され、その気になって息子の正丸(しょうまる)に跡を継がせようとします。ところがその肝心の家督相続の儀の日、正丸は忽然と姿をくらませるのでした。あとには謎めいた置き手紙が残されているのみ。家政は3人の家臣(一助・二格・三平)とともに息子の行方を追うのだが……というのがストーリーの発端となります。
6月10日の朝、10時過ぎに家を出ました。金曜日だったので、19時半からChorus STの練習が入っており、それまでに謎を解き終わらなければなりません。移動時間を考えると7時間半ほどのプレイタイムが捻出できそうです。まあ妥当なところでしょう。楽譜などの重い荷物をJR池袋の駅構内のコインロッカーに預け、身軽になって西武の乗り場に向かいました。
それではリプレイを開始します。
謎1の駅割り出しは、開始前にできるようになっています。というかこれを割り出さないと始められません。
冊子に、タテ5×ヨコ10のマスを並べた薄緑色の文字盤があり、漢字とカタカナが書き込まれています。そして、
5×10ということで、まず考えたのは、この文字盤が五十音表をあらわしているのではないかということでした。しかし、中には「テ」「ガ」「ミ」「イ」「ル」「マ」の文字はありましたが、「デンシャ」の文字位置とは特にリンクしないようです。
漢字の「電」「車」も盤面にあります。よく見ると「テ」「ガ」「ミ」と順に拾うと「テ」と「ガ」のあいだに「電」の文字があり、「ガ」と「ミ」のあいだに「車」の文字がありました。なるほどそういう解読法かと納得しました。
同様に「イ」「ル」「マ」を拾うと、それぞれの文字のあいだには、こんどは2文字ずつはさまっていました。「シ」「也」と「代」「衣」です。一瞬考えましたが、なんのことはない「池袋」という文字を分解しただけでした。
というわけで、最初の駅は起点である池袋です。
西武の南口というのは私はまったく知らなかったのですが、マダムが知っていました。明治通りを少し進んだ先、ジュンク堂などがあるあたりに近いところに、地味な改札口があるというのでした。周囲の様子は若干マダムが知っていたのと違っていたようでしたが、無事に辿り着きました。改札口を背にしてまっすぐ行くと、オフィスビル「ダイヤゲート池袋」の前の道に突き当たります。右を見ると白い塔(棟?)みたいなものがあり、その隣にデッキに昇る階段がついています。これが問題の階段でしょう。
白い棟というのはエレベーターだったので、私たちは階段を昇らずにエレベーターでデッキに上がりました。そこで周囲を見回してみれば話は簡単だったのですが、まずとりあえず階段の下り口のほうへ移動してみました。
デッキは池袋駅を見下ろす感じでとても眺望が良い場所でした。見るとあちこちに、謎解きの冊子を携えたグループがたむろしています。平日なのでプレイヤーはあまり居ないかな、と思っていたのですが、案外な数でした。
ここで、一番大きな[ ]へ進み、ガラスを探せ……というのが指示文の後半です。[ ]はちょっとした図形で、正方形の両側が塗られて、真ん中に細い白い棒のようなものがある形でした。これが何を意味するのかわかりづらいのでした。ドアのようでもあり、道のようでもあります。
マダムは早速スマホでヒントサイトにアクセスしていましたが、ヒントサイトには「駅を割り出す謎解き」のヒントしか無く、「手がかりステッカーを見つける探索」については何も書かれていなかったとか。
あちこち見回しましたが、エレベーターを下りたあたりに行ってふと見上げると、西武百貨店のロゴが大きく掲げられています。「SEIBU」。そしてその「I」のところが、まさに問題文にあった図形と同じ形をしているではありませんか。そして眼を落すと、近くのガラス柵に、タカラッシュ!イベントおなじみのステッカーが貼られていました。思ったより小さいステッカーで、このあとも見落としやすいかもしれません。
ステッカーの内容は、薄青い長方形に書かれた文字対照表です。
謎2は、黄色い正方形に書かれたアルファベットです。盤面は井桁に区切られ、左上から順番にA、B、C……とIまで文字が振られています。
このアルファベットは、もちろんたったいま得られた文字対照表により、ひらがなに変換することができます。そして、横のところに、
「 り 」=?
という書き込みがありました。
カギカッコは「り」の文字から不自然に離れており、またそのカギカッコの縦棒と横棒が同じ長さになっています。従って、これは実はカギカッコではなく、井桁の一部と判断されました。"「 " というのは上と左に線のある区切り、アルファベットではI、つまり「ね」でしょう。同様に "」" というのは右と下に線のある区切り、Aこと「ま」です。訪れる駅は「ねりま」……練馬でした。
さっき探索の出発点にした南口に戻り、そこから駅に入りました。同一平面で1番線のプラットフォームにつながっており、これは楽だなと思いましたが、ほかの階段とは離れているので、1番線以外には行きづらいようです。そして1番線というのは降車プラットフォームであるため、南口はもっぱら、池袋に到着する客のための改札口と言えそうです。しかも、1番線に発着するのは各停電車だけなのでした。
私たちはそこに停車していた豊島園行きの電車に乗りましたが、乗車プラットフォームである2番線に面した扉も発車直前まで開いていました。なるほど、この線に電車が停車しているときならば、電車の中を横切って2、3番線に渡ることも可能であるわけです。
遊園地としてのとしまえんは一昨年の夏に閉園しましたが、豊島園駅、そして西武の豊島園線はまだその名前のままです。まあ、駅名を変えるのにはけっこうな費用がかかるもので、東急の多摩川園も遊園地が閉鎖してから20年以上そのままの駅名でしたし、二子玉川園も15年以上そのままでした。小田急の向ヶ丘遊園に至っては、閉園後20年以上を経過した現在でもまだ駅名を改称していません。豊島園もしばらくはこのままでしょう。
豊島園線は練馬で分岐しますので、この電車に乗っていれば練馬に行けます。ほんの10分ほどで到着しました。
練馬での指示は、
中央口から出て、自動でおりる階段に乗り、着いた場所で右へU[ ]……
というものでした。[ ]は小さな硯みたいな形の図形です。実は、小冊子の表紙に、電車の前面の絵が描かれており、その電車の行先表示が、この硯みたいな形でした。そこには「ターン」と記されています。つまり[ ]の中は「ターン」と読めば良いわけです。Uターンですね。
自動でおりる階段というのはもちろんエスカレーターでしょう。中央口を出ると確かに下りのエスカレーターが眼の前にありました。そこを下り、下へ着いたところで右に折り返すと、エレベーターなどがありましたが、手がかりステッカーは見当たりません。おやおやと思い、そのまま突き当りの売店横まで行ってみましたが、やはり見つからないのでした。
マダムが早速ヒントサイトを呼び出しましたが、池袋駅の謎と同じく、「謎解き」のヒントはあっても「探索」のヒントは無いのでした。
途方に暮れて、だいぶ先のほうまで探してみましたが、やはりステッカーはありません。
「こうなったら、ほかのプレイヤーが現れるのを待って、その人が見つけることを期待しよう」
とマダムが、他力本願と言うほかないようなセリフを吐きました。
しかし、ダイヤゲート池袋のデッキで見かけたほどには、練馬駅周辺ではプレイヤーを見かけません。みんな最初で挫折したのでしょうか。
しばらくして、ようやくひと組、冊子を携えたカップルが現れました。彼らも私たちと同じく、エスカレーターを下りてきて、右へ折り返します。そしてやはりステッカーが見当たらないので困惑している様子でした。
しかし、さらにしばらくして、彼らは通路の横の、自転車の停められているあたりでスマホのカメラを構えはじめました。
あそこか! と私たちもあとに続きます。なるほど、2台ほど停められている自転車の奥の壁に、ステッカーが貼られていました。そこには、薄赤い長方形に記された
さんかくのしかくを塗りつぶせ
という文章が。「の」と「を」の字は冊子に記されていたので、残りの部分を書き写します。
書き写していると、年配の婦人が駆けてきて、
「ごめんなさい、ちょっと買い物に来ただけなんで、すぐどけますから」
とさんざん恐縮した様子で頭を下げました。どうも駐輪禁止の場所であったようです。駐輪禁止を前提にしてステッカーを設置したのであれば、なるほど自転車が停まっていては、なかなか見つからないのも無理はありませんでした。
【謎3】
今回のイベントでは、どの手がかりを使って謎を解けばよいのかが明示されているという親切設定になっていました。この種のイベントで、前の問題で使った解読盤や手がかりを、何度も使いまわすということがよくおこなわれます。「鉄道探偵」では同じ解読盤を何度も読み直す問題がおなじみになっていますし、「WEST CODE」の前回でも、最初の頃に出てきたあみだくじ状の図を、3回くらいリユースしたと記憶します。そこに気づかないとなかなか解けない、ということになるわけですが、今回はそこがはっきりしているので、とても助かります。謎3では、薄緑と薄赤の長方形が示されていました。つまり、5×10の文字盤と、「さんかくのしかく」云々の手がかりです。
「さんかくとしかく」ではなく「さんかくのしかく」とあります。「しかく」は文字盤のマスのことで間違いないでしょう。すると「さんかく」とは「三角」ではなく「三画」だと思われます。文字盤には、多くのカタカナのほか、「三」「大」「上」など「三画の漢字」が数多く書き込まれています。
それで三画の漢字と、「シ」「ウ」など三画で書けるカタカナの入ったマスを塗りつぶすと、電卓数字みたいな形で「SI13」と出てきました。SIは西武池袋線のラインコード、そして13の駅名番号を持つのはひばりヶ丘です。
前回は、椎名町・富士見台・保谷と、各停か、せいぜい各停化した準急しか停まらないような駅ばかり訪ねていた気がしますが、電車の本数が少ないと文句でもあったのか、今回は急行などが停車する主要駅で下りることが多いようです。練馬も、急行は停まりませんが、準急と快速、それに東京メトロに乗り入れる快速急行が停車します。
その快速急行に乗れそうだったのですが、タッチの差で間に合いませんでした。快速急行と緩急接続をしていた各停に乗り、石神井公園で急行に乗り換えました。
ひばりヶ丘は学生時代、ピアノのホームレッスンをしにしばらく通ったところですが、当然ながら駅前の様子などはまるっきり変わっていて、どこがどうだったのかさっぱり記憶がつながりません。その家の子供が、出はじめの「ドラゴンクエスト」にハマっていて、訪ねるといつもファミコンの電子音が鳴っていたのを思い出します。私自身がドラクエをやりだしたのは、それから5年以上経ったあとのことでした。
駅での指示はごく簡単で、改札を出て右へ曲がり、階段をくだって、↑↓が描かれたガラスの下を探せ、というのでした。階段を下る前に、エレベーターのガラス窓に↑↓が描かれているのにマダムが気づきました。もちろんこれのことでしょう。階段など使わずにエレベーターで地上へ下り、近くを探すとすぐにステッカーが見つかりました。この日、全部で8駅を探索しましたが、ここがいちばん見つけやすかったように思います。
薄い紫の長方形の中に、
C=8
E=5
F=3
I=4
と書かれています。これが次の手がかりです。
【謎4】
「1~9の数字を用いて、縦・横・ナナメの和を同じ数にするとき、1 2 9 6がつく駅」というのが問題文です。魔方陣のひとつ、三方陣と呼ばれるものを作る問題で、ほかの謎解きイベントでも使われていたことがあります。
三方陣はタテヨコナナメの和がそれぞれ15になります。「憎し(二九四)と思えば七五三、六一八はいつも十五」という語呂でよく憶えられますが、ほかにもいくつかの解法があります。
黄色の井桁アルファベット、薄紫の文字数字対照表、薄青の文字対照表が手がかりになります。ひばりヶ丘駅で得た文字数字対照表を井桁アルファベットの相当する文字のところにあてはめます。4つも数字の位置が分かれば、残り5つもすぐに割り出すことができます。上の語呂合わせの「二九四」と「六一八」を入れ替えた形になっていました。
文字対照表を参照すると、数字とひらがなの対照表ができました。これを、冊子に描かれている薄オレンジの枠の中に書き込みます。
1=む 2=ら 3=せ 4=ね 5=す 6=ま 7=で 8=か 9=や
この対照表で、「1 2 9 6」を変換すると、「むらやま」となります。西武鉄道で「むらやま」が含まれる駅名は「東村山」だけです。これが4番目の駅でした。舞台が池袋線から新宿線に変わります。
所沢で乗り換え、ひと駅乗って東村山へ。最近は特急停車駅になりましたが、構内は何やら工事中のようで落ち着かない雰囲気です。
出口は思いきり所沢寄りになっていて、本当にここで良いのか迷いました。プラットフォーム半ばにある、出口につながっていない連絡地下道のほうが立派なほどでした。もしかすると、こちらを出口にするように改装しているのかもしれません。
西口を出て左へ曲がり、連なる白い壁を探せ、と指示がありました。改札はひとつしかなく、出てから右へ行けば東口、左へ行けば西口ということになります。白い壁というか、工事のための隔壁みたいのが連なっており、そのかなり先のほうにステッカーが貼られていました。
手がかりはふたつあります。ピンクの枠に
白を塗りつぶせ
紫の枠に
OPENを読め。
と書かれています。これも、細字のところは冊子にすでに印刷されており、太字のところを写し取ったわけです。
さらに、「手がかりを書き写したら、近くにある自動でのぼる階段の前で、下に文字を埋めよう」と指示があります。見回すと、駅に接した「東村山市市民ステーション サンパルネ」の建物の屋外エスカレーターがありました。なぜその前という指定があるのかと思いましたが、その疑問はすぐに解けました。文章の下に、薄青緑の枠があり、そこに色とりどりのマス目が並び、それぞれのマス目の下に漢字が書かれていたのですが、このマス目の色が、エスカレーターのすぐ近くにあった看板の「ONE'S PLAZA」という文字に対応していたのです。そしてこの「ONE'S PLAZA」には「OPEN」の文字が含まれています。それぞれのマスの下を見ると、「行」「先」「表」「示」の漢字が記されていました。「OPENを読め」というのはこのことでしょう。
しかし、これはもう次の「最後の謎」にさしかかっています。昼食時でもありますし、もうひとつの「白を塗りつぶせ」の解読は、食事をしながらおこなうことにしました。サンパルネの中に、いかにもこういう施設にありそうな食堂があったので、そこに入ってみました。
【最後の謎】
サンパルネ3階の「イルソーレ」なる食堂に入りました。雰囲気は社員食堂か市役所の食堂みたいな感じですが、「Il Sole(太陽)」という名前のとおり、大きなガラス窓に覆われて明るいスペースです。お年寄りがたくさん入っていました。
マダムは唐揚げ定食、私はミックスフライ定食を注文し、席について冊子を拡げました。
「最後の謎」は、薄青緑と紫の手がかりを用いて答えを出す段階、薄緑と薄赤とピンクと薄オレンジの手がかりを用いて答えを出す段階、そして目的の駅を割り出す段階の3つに分かれています。うち、最初の段階のは「行先表示」とすでに答えが出ています。
次の段階の問題は、まずピンクの手がかり「白を塗りつぶせ」からスタートとなります。カギは最初から使っている薄緑、つまり文字盤でしょう。文字のマスに白いところはありませんでしたが、漢字の「白」が3マスに入っており、そこを塗りつぶすと、さっき練馬駅で塗りつぶして出てきた「SI13」のうち、Iと1がつながって「8」のようになりました。Sもそうなると数字の「5」と読むのが正しそうです。つまり「5 8 3」という数字が出てきたわけです。
これを薄オレンジの数字ひらがな対照表に照らし合わせると、「すかせ」という文字が出てきます。
私は最初これがなんのことかわからず、何か見落としがあるのではないかとあちこち探しましたが、なかなからちがあきません。そこへヒントサイトをカンニングしたマダムが、
「すかせ(透かせ)でいいみたいだよ」
と言いました。
はっと気づきました。この答えが駅名を直接示しているのではなく、「行先表示 透かせ」という指示文であったのです。
すぐに表紙の電車の絵の、いままで「ターン」と呼んでいた行先表示のところを、電灯に透かしてみました。絵では行先表示が黒っぽく塗られていて、なかなか透かし見るのに苦労しましたが、表紙の裏に描かれていた切符の絵の一部が透けて見えました。左下がりの短い斜線と、右払いのような長めの弧線があったのですが、弧線のほうが「ターン」の「ー」と重なり(裏に映しているので当然左払いになっています)、斜線のほうが「ン」と重なり(右下がりの斜線になっています)、全体としては「タナシ」と見て取れたのでした。次の目的地は田無です。
食堂を出て駅に戻り、西武新宿行きの各停電車に乗りました。西武新宿線には快速急行や通勤急行もありますが、日中はほとんど各停と急行だけで、東村山からだとどの電車に乗っても田無までは各駅停車です。ところが、マダムが乗換案内を調べてみると、乗った電車から小平で別の電車に乗り換えたほうが早く田無に着くことがわかりました。どうしたことだろうかと不思議に思いましたが、乗り換えてみて納得。拝島線から来る急行電車を先に通してしまうというダイヤになっていたのです。その先、田無は2面3線を持つ駅ですが、中間線には田無止まりの電車が入るため追い抜きはできません。急行はそこから通過運転となりますが、追い抜きのできる駅は東伏見となり、ここは急行通過駅なので緩急接続ができないのでした。それで、小平で先に接続しておいて急行を先に通すという形になっているようです。
田無には、私が小学2年生の夏から5年生いっぱいまで、3年半ほど住んだことがあります。小学2年生というと、ちょうど半世紀前です。当時の田無はまだ田舎臭さの抜けない町で、卵を買いに近くの農家まで行ったりしていました。紙袋に入れてくれるだけだったので、私がお使いに出て家へ帰ると、たいてい1個か2個は割れてしまっていました。田無という地名だけあって水田はまったくありませんでしたが、畑はずいぶんあった気がします。
また、マダムは玉川上水の大学に通っていたので、少し買い物などをしたいと思うと田無まで出てきたそうです。その頃は駅前に西武百貨店があったそうで、その話を聞いてびっくりしました。私の住んでいた頃には、せいぜい西友しかなかったもので、田無駅前にデパートという光景がどうしてもイメージできませんでした。
それももう四半世紀前の話です。いまでは西武百貨店は撤退し、その代わり西武系のショッピングセンター「Livin」が駅前にそびえていました。私の住んでいた頃と較べると、駅前の景色はまるで違ってしまっていましたが、デッキから眺めた感じでは、まるで変わったのは駅前だけで、駅から少し離れると、まだけっこうローカルな雰囲気が残っていそうな気もしました。
田無駅に着き、
北口を出てすぐに見える「以下のもの」をメモしろ
という指示がありました。「以下のもの」とは、「E」のように見えるポップなフォントの文字と、それに続く3つの大きなマス、そしてその下に7つの小さなマスがあり、いくつかのマスに薄色で番号が振ってあります。
「これって、『Emio』じゃない?」
と、珍しくマダムが、実際に見る前に言いました。「Emio」というのは西武鉄道の駅にたいてい附属している売店やショッピングセンターの名前です。所沢駅のはとりわけ大規模なので「Gran Emio」と称しています。言われてみると、冊子に書いてあった「E」の字のフォントは、「Emio」の「E」であるようでした。たぶん、間違いはないでしょう。
とすると、下の7つの小マスに入る文字も見当がつきます。おそらく「Tanashi」でしょう。そう思って番号の振ってある文字を拾ってみると、「aoi」となり、その後の指示を読むと、神社へ行って「 」龍の案内板を探せ、となっています。そこに番号の振ってある文字を入れることになっています。つまり「青い龍」なのでしょう。
謎解きの手順はまさにそのとおりで、私たちは駅から少し離れた田無神社の鳥居をくぐりました。
田無に住んでいた頃、この神社に詣でたことが一回も無かったことに気がつきました。うちの両親は、特に若い頃は、季節の風物詩などということにまるっきり無感覚で、初詣に出かけたことも一度も無かったし、それどころか私も妹も、七五三すらやって貰っていません。
けっこう立派な神社で、こんなのが近くにあったのか、と驚きました。
五色の龍に守護されているそうで、鳥居をくぐってすぐ、白龍の案内板がありました。私たちは青龍のものを探せば良いわけです。全体案内図を見たら、本殿の右奥のほうに青龍が居るようでした。ステッカーを見つけて冊子に書きこみます。すでに色付きの枠は無く、「これこそ最後の謎」となっていました。ここから、謎解きは後半に入ります。そして、謎自体が急に複雑になってきます。
この項、続きます。
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