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ふたたび歯の治療中 [いろいろ]

 数日前、何をしていたのか忘れましたが、急に口の中でゴロゴロするものが感じられました。別に固い煎餅なんかをかじっていたというわけでもなんでもなかったと思います。それにしても、いきなりのことなので、さては歯が抜けたのかと狼狽しました。
 私は年齢にしてはわりに歯が丈夫であるようで、あちこち削ったり欠けたりはしているものの、いまのところ全部自前の歯のままです。親知らずが上にしか生えなくて、ずいぶん前にその片方が虫歯になったときに、どうせ咬み合わせる下の歯も無いのだからということで、両方とも抜いてしまいましたので、28本です。還暦近くなってそれらがすべて自前の歯であるというのは、けっこう立派なのではないでしょうか。うちの母などはそのくらいの齢にはずいぶん自前の歯が無くなっていたようです。
 70歳のときに20本以上自前の歯が残っていると保険料が安くなる保険というのもあるそうで、このまま行けばその加入も可能なのではないかと思っています。「80-20」という指標もあり、80歳のときに20本残っていることを目指そうというのですが、さてそこまで大丈夫かどうか。
 そんなわけで比較的、歯には自信があるのですが、このところ一部がポロッと欠けたりすることも相次ぎ、その都度欠損補綴でしのいではいるものの、いきなり抜けてしまうようなことが無いとも言えません。口の中にいきなりゴロゴロしはじめると、少々びびります。
 夢の中で、歯がボロボロと抜けてしまったということも何度かあります。夢判断の本によると、歯が抜ける夢というのは人との別れ、仕事上の降格、努力が無駄に終わるなど、喪失感を抱かせられるできごとの象徴なのだそうです。また体調の低下を意味していることもあるようです。眼が醒めて、歯がしっかりしているので安堵した経験もあるのでした。
 なんにしても年齢的には、歯が急に抜けるというのもあり得ないことではないわけで、少し神経質になってしまうのもやむを得ないでしょう。
 さて口の中のゴロゴロですが、あわてて吐き出してみると銀色のかたまりでした。舌の先でさぐってみると、いちばん奥の歯、左下第三大臼歯に異状が感じられます。その歯は、だいぶ以前に虫歯を治療して、金属のキャップをかぶせてあったところで、そのキャップが外れてしまったのであるようでした。
 左上の第二大臼歯も去年治療し、キャップをかぶせてあります。いまかかっている歯科医は、治療の進行をかなり丁寧に説明してくれますし、治療中でもひとりごとが多くて大体の様子がわかります。だから気分的には明快なのですが、左下第三大臼歯を治療してくれた先生はもっと年配で、あんまり説明が無かったように思います。
 奥歯の重い虫歯だと、まず菌によって溶かされた部分を完全に取り去り、あとをきれいにクリーニングした上で、神経を抜き、その神経の通っていた零コンマ何ミリという小さな孔に薬品を詰め、そのうえに詰め物をしてキャップをはめる……という、なかなか大変な手順が必要になります。去年も10回近く通院しなければなりませんでした。
 下の歯のときもそのくらい通院を重ねましたが、あんまり説明が無いので、いったいどれだけ通えば治療が終わるのだろうかと、だんだん不安になってきたのを憶えています。手順としては去年のケースとさほど変わらなかったのですが、いまどんな状況で、次にはどんな作業をおこなうのかということがわからないと、なんとも心許ない気分なのでした。
 最終的に金属のキャップをかぶせて治療完了となりましたが、その最後なども、何万円だかかかるかもしれない、と脅されました。結果的には6千円くらいで済んでのですけれども、色を気にしてセラミックのキャップなどにしていたらもっと高かったのでしょう。
 そのキャップが外れてしまったわけでした。すでに治療の過程で神経を抜いているはずでもありますし、痛みは特にありません。ただ、キャップが外れた歯の表面が非常にザラザラとして、鋭利なヤスリのようになっています。舌で触ると痛いくらいです。
 外れたほうのキャップは、思ったよりごく薄い金属板だったので意外な気がしました。また、思ったよりずっと浅いものでした。幅というか高さというか、せいぜい5ミリ程度のものでした。大臼歯を覆っているのですからもっと深いものだとばかり考えていたのです。

 ともあれこのままではいけないので、いまのかかりつけの歯科医に電話して予約をしました。駅前で繁盛しているクリニックとあって、たいてい1週間くらい待たされるのですが、今回は案外と早く、4日後の夕方の予約がとれました。
 奥歯のキャップが外れたことの弊害は、間もなく明らかになりました。
 ヤスリのようになった表面に、無意識のうちに舌の脇のあたりが接触してしまうのです。その結果、舌がまるで口内炎にでもかかったかのように痛むのでした。ものを食べるときも痛みますし、しゃべっても痛みます。
 実は昨日(10月30日)、北区の合唱祭があって、Chorus STの一員として歌わなければなりませんでした。しゃべることでこんなに痛むのに、歌うのは大丈夫だろうかと不安になりました。
 それに先立って、28日に練習があり、指導者の清水雅彦さんが来られない日だったので私が仕切りました。いつもの発声練習をしていたところ、痛む要因がはっきりしてきました。
 どうも、母音としては「イ」の発音になるときに舌が接触してしまうようです。子音としては、やはり舌がどこかに触れるような発音のときに、サイドが問題の箇所に接触するようでした。具体的に言うと、カ行ハ行マ行ワ行はまず大丈夫、サ行はやや接触があり、タ行ナ行はかなりつらいものがあります。ヤ行も「イ」の音素が含まれているので触ってしまうようです。
 レガートで「ニナニナニナ……」と発声してゆくトレーニングを私はよく用いるのですが、それをやったらものすごく痛くて、しばらく口を開けられなくなったほどでした。「イ」とナ行の合わせ技なのですから無理もありません。
 肝心の歌については、そんなに問題はありませんでした。一体にしゃべるときよりも口の開きが大きくなり、また舌を口蓋の下のほうに沈ませることが多いためでしょう。本番はなんとか大丈夫そうだ、と安心しました。
 確かに合唱祭での舞台は無事終えられましたが、そのあとで、ほかの団体の合唱指導の仕事があり、そちらに行って3時間半ぶっ通しでしゃべったり歌ったりしていたら、さすがに口を動かすのもしんどい事態となりました。舌だけでなく口腔全体が燃えているかのようです。これはヤバい、とすら思いました。
 皮膚であればひどい擦り傷ということになっていたでしょうが、舌というのは粘膜に覆われています。粘膜というのは皮膚に較べて修復が圧倒的に早いようで、例えば口の中を火傷してもたいていは3日くらいで治ります。皮膚の火傷は3日などではとても治りません。舌や、頬の内側を咬んでしまって血が出るほどでも、やっぱりほぼ3日で回復します。合唱指導でのダメージも、半日くらいで痛みが引いたのには感心しました。

 しゃべるときはそういうこととして、食べるときにも痛むことがあります。食べるものによっていろいろであることに気がつきました。パンとか小麦系のお菓子とか、そういったものが危険であるようで、米飯とかパスタはそれほどでもないようでした。
 パンや小麦系お菓子は、食べると歯にくっつくというか詰まることがあります。問題の歯は、そこで噛むと痛むというわけではないにせよ、キャップが外れた分ものがはさまりやすく、ついつい反対側つまり右側の歯で噛むことになります。そしてその右側の歯に詰まったパンかすやお菓子かすを、舌で排除しようとするわけですが、そのときに舌の横が問題の歯に擦れてしまい、これがまた痛いのでした。
 最奥歯である第三大臼歯に、通常生活上、舌の横側がこれほどに接触しているものなのかということをあらためて知り、蒙を啓かれるような想いでした。人間、どこかに不調を抱えると、それまで思ってもいなかったような発見があるものだとつくづく思います。普通にしゃべるときの歯と舌との関係にも、考えさせられる点がありました。

 今日(31日)の夕方、ようやく診療を受けることができました。これでいつものように一週間以上待たされるようだと、さすがに日常生活に差し支えそうな気がしていたところでした。
 先生は私の口腔内を一瞥しただけで、
 「ああ、これだけ尖ってれば痛いでしょう」
 と言いました。で、すぐ内側を磨いてくれて、角が無いようにしてくれました。
 キャップをつけ直すのは後日になるようです。私は外れたキャップを持って行っていて、必要ないかとも思ったのですがいちおう申し出ると、先生も歯科衛生士も意外と食いつきが良く、見せてくれと言いました。さすがにそれを再利用はしませんけれども、先生は仔細に眺めたのち、
 「ああ、ここに小さな孔が開いてますね。ここから虫歯菌が侵入して、中が虫歯になっていたようです」
 見ると本当に、針でつついたような小さな孔で、虫歯菌がこんな孔も見逃さないのかと驚きました。虫歯になって歯が少し削れたので、キャップが合わなくなって外れたということであったようです。
 最後に、念のためということでX線写真を1枚撮り、今日の診療は終わりました。
 別に仮のかぶせものを装着するということもありませんでした。内側の角が無くなったおかげで、舌がこすれて痛いということは激減しましたが、キャップが外れた分の隙間はまだ空いたままなので、ものがはさまるというのはもう少し続きそうです。
 夏にも前のほうの歯が欠けて、欠損補綴をして貰ったことがあり、最近歯のトラブルが多くなっているような気がします。歯の丈夫さにはわりに自信があったのですが、こうちょくちょく欠けているようだと、そのうち抜けてしまうことも起こるのではないかと、ちょっと不安になっています。

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