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秘境駅ラリー [日録]

 「東京23区内・秘境駅ラリー」なるイベントをプレイしてきました。
 今回は別に謎解きイベントというわけではないのですが、パンフレットに記された5つの「秘境駅」を割り出すところは若干の推理と検索を必要とします。そうやって割り出した5つの駅を訪れてスタンプを捺し、最後の駅の改札に持ってゆくと粗品を貰える、というものです。
 私はだいぶ前にパンフレットを貰っていたのですが、マダムが一緒に行くことになり、マダムの分のパンフレットを入手しようとしたところ、いろんな駅のラックを見ても置いていないことが多くて、けっこう苦労しました。すでに割り出してあった、スタンプのある駅にだけはたくさん置いてあり、ようやく入手しましたが、もしかして景品がもう尽きてしまったとか、あるいはあんまり人気のないイベントだったのだろうかとか、いろいろ勘繰りました。
 この連休でイベント期間が終わることになっていました。5月7日が最終日です。それでかなりギリギリの今日になって行ってみたわけですが、けっこうほかにもプレイヤーが居て、どの駅のスタンプ置き場にも何人かは群がっていましたので、不人気というわけでもなさそうです。
 終わってからの話にはなりますが、景品もちゃんと貰えました。パンフレットに数量限定と書いてあったので、もう無理かなとも思ったのですけれども、大丈夫でした。

 ギリギリとはいえ、まだ期間中ではあるので、訪れた駅を明かすことはできませんが、問題文のほうを転記しておく分には構わないでしょう。どれも、そう考え込むような問題ではありません。

 ──初代内閣総理大臣ゆかりの町がある駅?
 ──山手線の曲がり角の駅?
 ──王子様にあと一歩の駅?
 ──北区と板橋区にまたがる駅?
 ──駅名が地名から消滅した駅?

 という5つの問題文があり、それぞれに3枚ずつの写真が添えられています。問題文ですぐわかってしまう駅もありますし、写真を見れば見当のつくところもあります。いずれにしろ都区内の駅ですから、秘境駅などというのは相当オーバーな表現ではあります。
 パンフレットの説明によると、

 ──「これまでに降りたことがない」、「何があるか思い出せない」、駅名すら忘れてしまいそうなひっそりと佇む駅を"秘境駅”と名付けました。

 とのこと。これまただいぶ誇大な表現で、要は「地味な駅」というところでしょう。
 「初代内閣総理大臣ゆかりの町がある駅」は、初代総理大臣、すなわち伊藤博文を検索すれば大体見当がつきます。また写真に写っている成田エクスプレスの姿でもある程度わかります。
 「山手線の曲がり角の駅」は、まず山手線内であるという大ヒントがありますし、「曲がり角」のほうも地図を見ればおおむねわかるでしょう。確かになんだかさびれたような出入り口の写真がありますが、私はそこを知っていたのですぐにわかりました。また、それなりに大きいほかの出入り口もあるので、「ここが秘境かぁ?」と苦笑したくなります。
 「王子様にあと一歩の駅」はかなり苦しい問題文と言えそうです。もう少し言いかたは無かったのでしょうか。私はこの駅もよく知っていました。
 「北区と板橋区にまたがる駅」は、それこそ地図を見れば一目瞭然です。この条件を満たす駅はひとつしかありません。私はこの駅で乗り降りしたことはいままでありませんでしたが、ここ数年、マダムが仕事でよく使っています。
 「駅名が地名から消滅した駅」は最初間違えた駅をイメージしていましたが、その後正解がわかりました。プラットフォームと一緒に移っている特急「ひたち」の姿が大ヒントです。ここも、マダムも私もわりによく知っている駅でした。
 というわけで、ほとんどの駅は乗り降りしたことがあることになり、その意味でも「秘境?」とクエスチョンマークをつけたいような気分になるのでした。

 実は5駅中4駅までは、わりと狭い範囲にまとまっているのですが、1駅だけは同じ都区内でも妙に遠いので、やはり都区内パスを使うことにしました。その遠い駅に行くために、充分元が取れるようになっています。
 しばらく前にも同じようなスタンプラリーをやったことがあるのですが、そのときは時間が限られていたため、改札を出てスタンプを捺して、すぐさま改札内に戻るということを繰り返しました。しかし、今日はそれぞれの駅の周辺をけっこう歩きました。天候も良く、散策日和の一日でした。伊藤博文の関連施設まで歩いて行ったら閉まっていたり、少々あて外れもありましたけれども、マダムのよく見ている刑事ドラマに出てくる実在の和菓子屋に立ち寄ったりできて、マダムは充分満足していた様子です。
 写真に写っている出口から出たらスタンプが無く、駅員が追いかけてきて、もうひとつの大きいほうの出口にあると説明してくれた駅もありました。たぶんしょっちゅう問い合わせられるのだと思います。
 「フリーパスとかお使いですか?」
 それならもういちど改札を通って、大きいほうの出口へ行けば良い、と言いかけてくれましたが、
 「いや、ちょっと散歩しながら行くから大丈夫ですよ」
 と答えました。外を通ってゆく道は、私としてはわりと懐かしさを感じるところでした。

 この連休は特に旅行などをすることも無く、あんまりレジャーをしていませんが、今日のイベントは小規模ながら手軽に愉しめました。
 それにしても「秘境駅」とは大げさな、とクリアしてからも思います。これらを秘境などと呼ぶならば、もっとふさわしい駅もあるだろうと言いたくなります。
 例を挙げてしまうと、そこがイベントで「目指す駅」でないことが明確になるので、若干気が引けますが、多くの鉄ちゃんが「都区内の秘境駅」と認めるのは、たとえば京葉線越中島駅があります。地下駅なので駅舎などが無い上に、地上口の階段も見落としやすく、なおかつ地下鉄の門前仲町が近いせいか、駅周辺の商店街なども無くて、まあ地味と言えばこれほど地味なJR駅も都内には少ないでしょう。実際、23区内では乗降客数が最少となっています。ここがリストアップされなかったのは、もしかするとヒント写真の撮りようが無かったからかもしれません。つまり「本当の秘境駅」は、こんなイベントに採り上げられることすら無いのだというわけなのでしょう。
 JR以外では、私が何度か触れた、東武スカイツリーライン堀切駅。通る列車・停まる列車は少なくもないのに、どうにも秘境感あふれる駅です。駅舎にたどりつくのが難しいという特徴もあります。プラットフォームが見えているのに、そちらへ向かいそうな道路がことごとく行き止まりであることを知ったときの私の奇妙な感覚を、ぜひ理解していただければと思います。
 しかしまあ、都区内とあれば利用客はいくらでも居るわけで、普段使いしている人にとっては「何が秘境駅?」と言いたくなるのは間違いありません。今日立ち寄った5駅も、マダムや私がわりによく乗り降りしているところが多くて、秘境駅という表現には首を傾げたくなりました。
 本当の秘境駅とは、停車・通過する列車も少なく、駅に立ってまわりを見回してもなんにも無さそうで、なんでこんなところに駅があるのだろうかといぶかしくなるようなところを言うのでしょう。乗降客もせいぜい1日にふた桁行けば良いくらい、というイメージがあります。
 全国を見ればそんな駅はたくさんありそうですが、飯田線金野・田本・小和田あたりは鉄道趣味本などで紹介されることも多くなっています。天竜川の岸壁にへばりついているような小駅で、駅のまわりには商店も人家もまるっきり見当たらず、プラットフォームの端から山道みたいのが一本延びて行っているくらいで、はたしてどれだけ歩けば人里に辿り着くのだろうかと不安になるような場所です。飯田線は長いわりに両端しかほかの路線に接しておらず、到達しづらいという点も秘境駅の名にふさわしそうです。
 室蘭本線小幌駅などもよく名前が挙げられます。こちらは大動脈の本線なだけに、通過する列車はそこそこ多いのですが、停車する列車はごく少なくなっています。駅前までクルマが入れない構造であるために、クルマ社会の北海道では訪れる人も少ないのでした。かつての函館本線張碓など(現在は廃止)とも同じような立地です。張碓同様、いままで何度も廃止の話が持ち上がっているのですが、その都度なんとか逃れて、いまだに営業しています。
 年に2日しか営業しない予讃線津島ノ宮駅なんかも秘境駅と呼べるかもしれません。毎年8月4、5日のお祭りの日にしか列車が停まらず、時刻表の索引地図にすら8月号にしか載っていないという徹底ぶりです。下り線にしかプラットフォームの無い常磐線偕楽園駅とも似ていますが、偕楽園駅が梅見の季節にはしばらく開いているのに対し、津島ノ宮駅は本当に2日間しか駅を開けず、長期休業中の駅を除いては日本一営業日数の少ない駅なのだそうです。

 都区内の閑散駅ワースト10、などというものをリストアップしている人が居り、なかなか面白いのでご紹介します。なお2017年の統計です。さすがにJRの駅は入っていません。

 第10位 新豊洲(ゆりかもめ)
 第9位 亀戸水神(東武亀戸線)
 第8位 足立小台(日暮里・舎人ライナー)
 第7位 有明テニスの森(ゆりかもめ)
 第6位 新整備場(東京モノレール)
 第5位 南新宿(小田急小田原線)
 第4位 東京国際クルーズターミナル(ゆりかもめ)
 第3位 日の出(ゆりかもめ)
 第2位 整備場(東京モノレール)
 第1位 市場前(ゆりかもめ)

 モノレールゆりかもめ日暮里・舎人ライナーがランクインしているのは当然と言えば当然で、そもそもその種の新交通システムというヤツは、普通の鉄道では採算がとれそうもないところに敷かれるからです。いわば中型交通手段で済むところに走らせているので、乗降客数が少ないのもうなづけるのでした。
 それにしてもゆりかもめに5駅も入っているのは、場所柄を考えればずいぶんさびれているような気もします。新豊洲・有明テニスの森・市場前はいずれも豊洲への延長線の駅で、まだ認知度が低いということかもしれません。これから増える可能性はあります。
 それに対し、東京国際クルーズターミナルは旧・船の科学館ですし、日の出は桟橋のあるところで、そんなに乗降客が少ないのは解せないようでもあります。船の科学館時代にはもう少し多かったのではないでしょうか。東京国際クルーズターミナルから大型客船に乗り込むような人は、アクセスにゆりかもめなどあまり使わないのかもしれません。また、日の出のほうは、発着していた水上バス路線がだいぶ廃止になった影響でしょうか。また、その気になれば浜松町から歩いても大した距離ではないので、これもゆりかもめを使わない人が多い可能性があります。
 モノレールの整備場と新整備場の乗降客が少ないのは納得できます。たぶん両駅とも、駅名になっている羽田の整備場に勤務する人たち以外には誰も乗り降りしないはずです。ほかの施設はほとんど無いでしょう。
 異彩を放っているのが南新宿です。一日あたり1600人あまりしか乗降客が居ないという、新宿の隣の駅とは思えないような閑散具合。
 まあ私鉄の、起点駅(もしくは起点近くの大駅)の隣の駅というのは、わりとさびれていることが多く、代官山(東急東横線)も、神泉(京王井の頭線)も、下落合(西武新宿線)も、椎名町(西武池袋線)も、北品川(京急本線)も、もとはぱっとしない駅で、プラットフォームも短くて扉を開閉しない車輛があったりもしました。博物館動物園(京成本線)など、さびれた挙句に廃止されてしまったほどです。
 しかし代官山にせよ神泉にせよ、その後駅周辺が再開発され、現在ではむしろオシャレな街として生まれ変わっています。西武の2駅はそこまで達してはいませんが、トキワ荘ミュージアムなど新しい観光スポットもできて、わりに賑わうようにもなってきました。南新宿は、そういう流れに乗れなかったとも言えそうです。それにしても、大私鉄の都心近くの駅にしては情けない限りですね。まあ、小田急の新宿寄りの駅は、参宮橋にせよ代々木八幡にせよ、周囲はなんだかひっそりとしている印象がありますが。
 なお都区内ではなく、「都内」でもっとも乗降客数が少ないのは、白丸(JR青梅線、終点・奥多摩のひとつ手前)だそうです。また「都会の秘境駅」ということになれば、近場である川崎市内に、鶴見線の各駅などがあります。名古屋の東名古屋港(名鉄築港線)、関西の和田岬(JR山陽本線和田岬枝線)などに通じるものがありますね。関西では汐見橋(南海高野線)も「都会の秘境駅」っぽく、こちらは廃止されたJR片町線の片町駅と共通する雰囲気があるのでした。
 都会の秘境駅でも、本当の秘境駅でも、それなりに独特の味があるようです。私は車窓からいろんな駅を眺めてきましたが、列車から下りて、それらの駅を歩いてみたいという気分が、齢をとるに従って強くなってきているような気もします。

【後記】イベント期間が終了したので、「秘境駅」の答えだけ記しておきます。
 初代内閣総理大臣ゆかりの町がある駅?……西大井(横須賀線・湘南新宿ライン)。伊藤博文の墓所があります。
 山手線の曲がり角の駅?……田端(山手線)。確かにここで進行方向が南北から東西に変わります。
 王子様にあと一歩の駅?……上中里(京浜東北線)。王子駅の隣です。
 北区と板橋区にまたがる駅?……浮間舟渡(埼京線)。板橋駅も北区・板橋区・豊島区の接するあたりにありますが、駅そのものがまたがっているのは浮間舟渡です。
 駅名が地名から消滅した駅?……三河島(常磐線)。1960年代までは「三河島町」がありましたが、現在は西日暮里の町内となっています。プレイ日も、三河島駅で景品を貰ったあと、西日暮里駅まで歩きました。わりとすぐに行けたので驚きました。(2023.5.10.)

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