SSブログ

スーパーマーケットの閉店 [世の中]

 私の家の近所が、スーパーマーケットの激戦区であることは前にも書きましたが、残念ながら本日、その有力な一軒が閉店しました。
 川口銀座とも呼ばれている樹モール商店街の入口近くにあり、お客の動員数でも一二位を争っていたと思われる「ザ・プライス」です。
 ご存じのかたも多いでしょうが、「ザ・プライス」はイトーヨーカドーのロープライスチェーンです。この店もかつてはイトーヨーカドーでした。サッポロビール工場の跡地に建設されたショッピングモール「アリオ川口」のテナントとしてイトーヨーカドーが入った頃、もとからあったイトーヨーカドーがザ・プライスに模様替えしたのでした。
 私が川口に越してきたのは32年前ですが、その頃はもちろんイトーヨーカドーです。当時はまだ、そんなにスーパーが多かったというわけでもなく、私が利用しているのはそのヨーカドーと、トポスという店でした。トポスはダイエー系のロープライスチェーンで、当時としては圧倒的に安く、特徴的な黄色いレジ袋は、京浜東北線の電車の中でもよく見かけました。つまり、電車に乗って川口のトポスに買い物に来ていた人も多かったということです。
 そんなに安かったのに、あるいはそんなに安かったがゆえに、トポスは間もなく閉店してしまいました。川口店だけでなく、他の店舗も次々と閉店してしまったようです。ダイエーにはすでに、ロープライスチェーンを維持できる体力が無かったのかもしれません。
 私もトポスの愛用者でしたが、潰れてしまっては仕方がありません。イトーヨーカドーが、ほぼ私の利用する唯一のスーパーマーケットとなりました。実は川口に来て数年後に自転車を盗まれ、そのまましばらく自転車の無い生活をしていたので、徒歩でしょっちゅう通えるスーパーがそこだけだったという事情もあります。
 トポスの跡地には、コモディイイダというスーパーが入りました。関東圏ではまあまあ知られていますが、全国区の知名度は無いローカルチェーンです。それなりに頑張ってはいるのですが、トポスほどの圧倒的格安感は無く、徒歩で通い詰めるほどの魅力は感じられませんでした。最近の激戦区状態になると、余計に特徴が無い感じで、自転車を使うようになって行動範囲が拡がったいまでも、それほど立ち寄る機会がありません。

 しかしイトーヨーカドーがザ・プライスとなって、こちらは通う頻度も増えた気がします。
 その後、うちからもっと近い場所に西友ができ、駅前にはマルエツができ、線路向こうにはOKができて、選択肢が急激に拡がったにもかかわらず、ザ・プライスは私の多用するスーパーマーケットランキングでずっとトップを占め続けました。
 なお、西友は24時間営業であるのと、値引き品の充実度がメリットです。通常商品はさほど激安という印象ではありません。マルエツはとにかく駅前なので帰り道に寄りやすいのと、ときどき新製品をお試し価格のように安売りすることがあるのがメリットで、通常商品は他の店より高めです。OKはいろいろ使いやすいのですが、線路向こうというのが、わずかなものとはいえ心理障壁となって、ザ・プライスほどには行く頻度が高くなりません。
 スーパーマーケットにはそれぞれ得意分野があるものですが、ザ・プライスの場合は生鮮食品が安定して安いのも、多用する理由のひとつになっていたと思います。野菜などはたいていこの店で買っていました。

 実はこのザ・プライスの前身であるイトーヨーカドー川口店には、マダムも想い出があります。
 もう20年ほど前、もちろん私と結婚する前のことですが、彼女はある製パンチェーンでアルバイトをしていたことがあって、そこから派遣されて川口のイトーヨーカドーまで、お彼岸の和菓子を売りに来ていたそうなのでした。イベント的なフェアの場合、イトーヨーカドーの店員ではなく、メーカーの人間が販売にくることがよくあるそうです。
 売れ行きが芳しくないので、マダムは(当時はマドモワゼルでしたが)即興で歌を歌ってお客を振り向かせたのだとか。
 20年ほど前なら、私はもう川口に住んでいたわけだし、イトーヨーカドーでよく買い物もしていましたが、そんなキテレツな和菓子の売り子は記憶にありません。残念ながら私が行かない日であったようです。
 まさかその7、8年後に、その川口に住むことになるとは、もちろん当時のマダムは夢にも思わなかったのでした。
 ともあれそんな想い出があるので、彼女もザ・プライスには若干の思い入れがあったようです。今回閉店になると知って大いに嘆き、特設されたメモリアルコーナーでお別れメッセージを書いたりもしていました。

 ザ・プライスは川口のみならず、隣駅の西川口にもあり、その隣の蕨にもありました。いずれももとはイトーヨーカドーだった店で、イトーヨーカドーは駅前型の店舗をすべてザ・プライスにしたのかと思いました。本来のヨーカドーは、アリオ川口店のように、駅からは少し離れたショッピングモール展開型にしたのかもしれません。
 西川口店はいまでも繁盛しているようですが、蕨店はその後閉めてしまいました。トポスもそうでしたが、ロープライスチェーンを維持するためには、経営企業の体力がそれなりに必要であるようです。
 もっとも、今度の川口店の閉店は、経営が維持できなくなったための措置ではありません。
 樹モールの、ザ・プライスが建っていた区画の店が、ほぼすべて同じ日か、近いうちに閉店となってしまったのです。このまえ同じ区画にあるマクドナルドへ行って、そこも閉店になることを知り、どうしたことかと思って周囲の店をチェックして、それがわかりました。
 つまり、この一角で、大規模な再開発がおこなわれるらしいのです。

 このあたりの店舗の建物がもう老朽化していること、また計画的に建物を並べたわけでなかったためにデッドスペースが多く空間の有効活用ができていないことから、この一角をほぼすべて取り壊し、大きなタワーマンションを造り、その下層階を巨大なショッピングモールにしようという計画であるようでした。
 確かに、ザ・プライスも「48年のご愛顧に感謝」とかやっていました。前身のイトーヨーカドーが建ったのが48年前なのでしょう。ザ・プライスに換わるときには、内装は変えましたが、建物はそのまま使っています。
 集合住宅などだと60年は保つとされていますが、店舗の場合は半世紀も経てばそろそろ寿命でしょう。耐震建築などの面でも心許ないものがありそうです。
 タワーマンション化の話は、家でネットで調べて知りました。川口は一時期、やたら高層マンションがにょきにょきと建ち並び、あるテレビ番組で「埼玉のマンハッタン」などと評されたこともありますが、ここしばらくは少し落ち着いていました。それが、久しぶりの大型再開発です。
 「埼玉のマンハッタン」のあだ名は、実は荒川の対岸から眺めたときのイメージで、ウォーターフロントに摩天楼が建ち並んでいるさまから名づけられたのだと思います。一時期日本でいちばん高層の集合住宅として有名だったエルザタワーも、いまのところいちばん新しい、うちからすぐ近くのサウスゲートタワーも、荒川河岸に近く、その分川口市の中心部からは少し離れていました。
 しかし、樹モール商店街の一角にそれが建つとなると、まさに市街地のど真ん中で、いままでにないインパクトをもたらすことになりそうです。
 3年くらいかかるかな、と思ったら、読みどおり2022年の完成ということであるようでした。どんな建物になるのやら。
 いまその敷地内にある店がそのまま入ることになるのかどうかは、まだわからないようです。土地や家屋のオーナーが自分で店をやっているのであれば、等価交換などがおこなわれて、そのまま入るのかもしれませんが、大半は借り店舗でしょうから、商売を同じ場所で続けようと思うかどうかはなんとも言えません。ザ・プライスの土地はたぶんイトーヨーカドーの持ち物でしょうが、だとしても等価交換をおこなったか完全に売却してしまったかによって、3年後の様相も変わってくるでしょう。
 駅前再開発ビル「キュ・ポ・ラ」が案外と期待はずれだったので、今度こそすてきなショッピングモールができて欲しいものです。「キュ・ポ・ラ」は私が結婚して間もなく開業したのですが、事前にはずいぶんと夢の多いプランが語られていました。川口駅にもうひとつ改札口ができて、そこから駅ビルに直通できるようになるのだとか、長いビル内商店街ができて、駅から私の家までの半分くらいは雨でも傘が要らなくなるのだとか。しかしできてみたら宏大な敷地のほとんどは単なるタワーマンションとなり、商業施設は駅前広場に面したわずかな部分に設置されただけでした。もちろん新改札などできず、通り抜けもできませんから雨に降られないこともありません。しかもビル風がひどくなって、傘がオシャカになる危険が急増しました。都市計画担当者が「キュ・ポ・ラ」を失敗だと思っているかそうでないかは知りませんが、近隣住民としてはあんまり期待に応えてくれるものではなかったと言っておきたいところです。
 樹モール商店街に新しくできる施設は、もっと使い勝手の良いものになることを期待します。
 ただ、川口市の都市計画は、どうもピントはずれであることがよくあるようで、ちょっと心配です。
 以前、川口駅前には、埼玉県で唯一と言われた地下街がありました。地下街の規模も、構成している店々も小さいけれど、いろいろと面白い店が並んでいて、私はわりと好きでした。
 それを全部無くしてしまい、代わりにどうなったかというと、広い駐輪場ができただけでした。地下街にあった店がどうなったのか、まるでわかりません。
 別に駐輪場を作るために店を立ち退かせたわけではないでしょう。考えていた使い道がうまくゆかなくて、仕方なく駐輪場にしただけだろうと思います、いったい何を考えていたのやら。
 交差点によっては、まったく意味のない信号機が据えられていたりして、どうも私は川口市の都市計画部署には不信の念を抱いています。


 3年間だけとはいえ、川口市の目抜き通りである樹モール商店街の一角から、店が一挙に消えてしまうことで、いままでの賑わいを維持できるかどうか、危惧する意見も眼にしました。一旦賑わいが失われてしまうと、あとで新しい商業施設が起ち上がっても、そうすぐには回復しないものなのかもしれません。
 しかしまあ、古い店も多かったわけで──と言っても川越のような歴史を感じさせる街並みというわけでもないし──、いずれは再開発の必要があったでしょう。それがこのたびになったのは、やむを得ないことだと思います。
 ザ・プライス閉店の40分くらい前に行って、買い物をしてきました。今日はすでにOKで買い物をしていたのですが、最後の日を迎える店を眼にしておきたかったのです。フロアはもうかなり整理されていて、売り物もだいぶ減っていました。名残を惜しむ客がたくさん押し寄せていましたが、ラストデーのためにレジがたくさん用意されていて、精算には時間はかかりませんでした。今日売れ残ったものは、たぶん近隣の支店に移されるのでしょうが、なんとなく、店を閉めたあとで店員やパートさんたちに分けられるような気がしてなりませんでした。
 経営不振のためではなく、再開発のための閉店ですので、決してものがなしいわけはないのですけれども、一斉に仕事を失うパートさんたちは明日からどうするのだろうか、などと考えてしまいました。
 私としても、これから生鮮食品をどこで買おうかと迷っています。マルエツや西友はさほど安くないし、OKは割合としては安いけれど分量が多くて値段自体は少し高いし、コモディイイダやヤオコーなどもザ・プライスほどには安くないし、まあ肉のハナマサあたりでしょうか。肉のハナマサは店名にもかかわらず、肉よりも野菜類がお得な印象があります。肉も安いのでしょうが、あまり少量売りをしないので、私のところのような所帯では使いづらいのでした。「ランキング1位」が撤退すると、いろいろ考え直さなければならないことが出てきて、なかなか厄介です。

nice!(0)  コメント(1) 

nice! 0

コメント 1

Pague

お別れを告げて来ましたか。
私は今週は水曜、土曜と行きましたから充分お別れして来ました。
某パンメーカーのバイトは、嫁いで来る5,6年前ですよ。7,8年前は仏蘭西にいて、帰国後すぐな頃、とりあえず単発バイトで食い繋ぎました。それなりに楽しかったです。
by Pague (2019-05-20 00:36) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。