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続・ミサイル襲来 [世の中]

 昨日は朝から北朝鮮のミサイルが飛来して大変な騒ぎでした。NHKでは、今月からはじまったばかりの朝ドラを放送中止して特別報道体制を組んでいましたし、昼過ぎから夜にかけても、繰り返しミサイルの話を報じていました。
 予定されていたマラソン大会を中止する学校なんかもあったようです。
 結局、問題のミサイルは日本に着弾はせず、4000キロ以上を飛んで太平洋に落下しました。
 これはグアムの米軍基地を直接狙うための実験だったのではないか、と言われています。確かに4000キロ以上飛ぶのであればグアムに届きそうです。
 北朝鮮のミサイルは、このところ飛距離を確実に延ばしてきています。すでに中距離弾道ミサイルと称して良いようなシロモノになっています。
 韓国や日本のような近隣の国々だけでなく、USAの領土を直接狙えるとなると、その脅威度は格段に上がったと言えるでしょう。もはやUSAの同盟国を人質にとる必要は無く、いきなりUSAと対峙することができることになります。
 はたして、北朝鮮は何を目指しているのでしょうか。

 北朝鮮のもくろみは、とにもかくにも体制の維持であろうと思われます。
 「金氏王朝」による専制体制の継続です。
 朝鮮民主主義人民共和国、などというお題目を信じている人はもうどこにも居ないでしょう。北朝鮮は共和国でもなければ人民の国でもなく、民主主義でもありません。いちおう朝鮮労働党以外にも政党があって、選挙がおこなわれているのだから民主主義だ、と言い張る向きもありますが、その「野党」はダミーであることが明白ですし、選挙も茶番劇に過ぎません。
 朝鮮労働党の一党独裁……ですらないでしょう。北朝鮮という国のありかたを現実に即して表現するならば、「金氏北朝鮮王国」というのがいちばん正確だと思います。世襲君主による独裁王国であり、朝鮮労働党というのは絶対君主のもとにある貴族たちであるにすぎません。
 北朝鮮の体制をつぶさに見れば、そのありかたが李氏朝鮮と瓜ふたつであることに気づくには、そんなに鋭敏な洞察力を要する話でもありません。国王のもと、王族たちが威張り返り、その下で貴族たちが好き放題やらかし、さらに両班(ヤンパン)という特権階級が幅を利かせ、常民(サンミン)、白丁(ペクチョン)、奴婢といった連中をひたすら搾り上げていたのが李氏朝鮮の体制でした。金日成金正日金正恩の3代の「指導者」が国王そのものであり、その一族もまた「王族」としてふるまっています。王族は威張り返っているのですが、ときにより「国王」の意向により理不尽に殺されたりすることもあるわけです。
 朝鮮労働党の幹部たちが「貴族」であり、一般党員が「両班」というところでしょうか。
 白丁や奴婢は文字どおりの奴隷です。主人である両班などの好き勝手に売買され、完全に生殺与奪の権を握られていました。もちろん見目の佳い婢女などは簡単に犯されました。その場合普通の国では側室になったりして、その子供ともども身分が引き上げられることが多いのですが、李氏朝鮮ではそういうことは一切無く、婢女はいくらお手つきになっても婢女のままで、その子も奴婢身分から脱することはできません。
 奴隷という身分は、時代と地域によっていろいろなありかたがあるのであって、ギリシャローマの奴隷はそれなりに一定の人権を認められていたようです。主人が恣意的に傷つけたり殺したりすればいちおう罰を受けることになりましたし、お金を貯めて自分自身を「買い戻す」こともできたと言います。また中世のインドやエジプトなどでは「奴隷王朝(マムルーク王朝)」というのがあり、奴隷出身者が次々と政権に就いています。鞭で追い立てられて苛酷な労働を強いられた、USAの黒人奴隷のイメージで、歴史上の奴隷をすべて推し量るべきではなさそうです。
 しかし、李氏朝鮮の奴婢は、それ以下でした。両班以上の身分の者が、白丁や奴婢を傷つけても殺しても、まったくとがめをうけることはありませんでした。それどころか白丁や奴婢が小金でも貯めていると、凄惨な拷問を加えてそれを吐き出させたものでした。従ってローマ奴隷のように「自身を買い戻す」など絶対に不可能だったのです。
 そんな世の中が、500年ほども存続しました。ひとつの王朝としてはたいへん長いほうです。しかし、東ローマ帝国にせよ、オスマン・トルコ帝国にせよ、長期にわたって君臨した王朝というのは、たいてい途中で体制が変容してゆきます。内部においてなんらかの改革がおこなわれるのが普通です。李氏朝鮮の凄みは、500年間、社会体制がなにひとつ変わらなかったということです。そこには豊臣秀吉のような出世人も、安藤昌益のような哲学者も、平賀源内のような科学技術者も、ただのひとりも生まれませんでした。かろうじて儒学者にはそこそこすぐれた人も出ましたが、儒学そのものを変革したり、まったく新しい知見を加えたりという、たとえば王陽明のような学者は居なかったし、居たとしてもすぐに処刑されてしまったことでしょう。
 金氏王朝は、明らかにこの李氏朝鮮の体制を受け継いでいます。それが朝鮮人という民族を統治するのにいちばん自然な形であると、おそらく金日成は見抜いたのでしょう。徹底的な強圧と恐怖政治。それらをはね返す気概は、この国の人民にはありません。500年間しつけられ続けて、反骨精神などはとうの昔に刈り取られてしまっています。ぶうぶう文句は言うでしょうが、それ以上のことは起こらないと見切っていたのだと思います。
 この形を維持したいというのが、金氏王朝のただひとつの望みでしょう。
 それには、USAにくちばしを入れて欲しくないわけです。
 なんの得にもならないのに他人の国の体制に口を出してくるのがUSAという国です。まあ実際にはそれもあやしいところがあって、明らかに専制国家であるのにUSAがあまり気にしていないように見えるところも少なくはありません。しかし表向きは、あくまで自由と民主主義を標榜し、それに倣わない国に対して強面で臨んできます。
 金氏王朝がUSAに望むのは、自身の国内のことに口を出してくれるなということに尽きるのではないでしょうか。
 そのために、国民を飢えさせてでも、まったく顧みずに営々とミサイル実験を繰り返しているのだと思われます。

 グアムまで届くようになったとして、おそらくこれでUSAも少しは恐れて、金氏王朝の言い分を聞くようになるだろう、と考えているのでしょう。
 しかし、USAというのはそういう国ではありません。
 他国から脅されたり舐められたりするのを、極端に嫌うのがUSAです。
 北朝鮮が、自国領土に届くミサイルを保持するとなっては、むしろいよいよ本腰を入れて対応策を執ってくるはずです。もしかすると「斬首作戦」を発動するかもしれません。はたして金正恩をはじめとする指導層は、それがわかっているでしょうか。どうも、USAを舐めてかかっているように思えてなりません。
 いままでは、韓国とか日本とか、同盟国ではあるけれどもあくまで外国にしか届かないミサイルだったからお目こぼししていたのを、グアムを直撃するかもしれないとなれば、のんびり構えては居られません。USAは必ず何かの手を打ってくると思われます。
 現在進行形で、ウクライナを支援することでかつての宿敵ロシアを追い詰めつつあるUSAのこと、自信もついてきているでしょう。USAを脅すつもりが、逆に虎の尾を踏んだことになりそうです。

 ミサイル発射について、日本政府はすぐさま抗議しましたし、北海道知事なども批難のコメントを出しました。
 しかし、言葉での抗議など、北朝鮮にとって馬耳東風に過ぎないだろう……ということも、いまや誰でも思っているに違いありません。
 どんな相手とも、よくよく腹を割って、誠意をもって話し合えば必ず問題は解決する、と戦後の日本人は教えられてきましたし、信じてもきました。
 それは北朝鮮に対してすら同じでした。拉致被害者の返還は、こちらが誠意をもって交渉すれば為されるはずだと思ってきましたし、実力で奪還するなどという案はことごとく潰されました。
 しかし、実際に帰ってきたのは、「一時帰国」したのを安倍晋三官房長官(当時)が留めて帰さなかった何人かしか居ません。騙し討ちのようなものとして、当時ずいぶん叩かれましたが、そのほかの手段で日本に戻れた拉致被害者は、いまのところひとりも居ないのです。
 そして世界は、「誠意をもって話し合う」などということをどれほど重ねても、どうしようもない相手が実在するということを証明する方向にどんどん向かっています。
 ロシアもそうでした。日本側がどれほど誠意をもって北方領土の返還を求め続けてきたことか。いつかは返してくれると信じて、言われるままにずいぶんお金も出してきました。しかし、ロシア側はその日本の誠意などというものを、これっぽっちも顧慮していませんでした。「日本側との交渉など、儀式のようなものだった」とうそぶいたメドベージェフ元大統領の言葉が、すべてを物語っています。そしてそのロシアは、なんら話し合うことなく、ウクライナに突然侵攻しはじめたのです。
 話し合いで解決できる問題など、ごく限られた範囲のことではないか……多くの日本人が、いまそう感じはじめています。井沢元彦氏が「話し合い絶対主義」とさえ呼んだ日本人の価値観が、揺らぎはじめているようです。
 揺らぎが国内でのことになると、ちょっと治安が悪化しそうで怖い気もします。すでに、話し合いという「迂遠な」やりかたをスルーし、短絡的な行動に出る手合いがけっこう増えています。若者だけでなく、いい齢をした爺さまが、信じがたいような切れかたをした事件を起こすことも珍しくありません。「問答無用」の風潮が拡がってしまえば、なんとも殺伐とした世の中を招きそうです。
 しかしながら、「世界」はまだまだ殺伐としているのが現実であるようです。言葉は通じても会話の成り立たない相手が、まだまだいくらでも居ると思われます。
 敵基地攻撃力の保持とか、防衛費倍増とか、ほんの10年前なら某新聞が気が違ったかのように騒ぎ立て、多くの人が反対したであろう話が、最近はごくすんなりと受け止められてきているのも、「世界は思ったほど優しくない」ということを、あらためて日本人が気づきはじめた結果でしょう。これは日本人が右傾化したとか軍国主義化したとか、そんな話ではありません。この責任は世界のほうにあります。USAの庇護下で太平楽を並べている場合じゃない、と考えたときに、自分でも世界に向き合おうとして、気がつくと自分がいかにお花畑であったか頓悟したということなのだろうと思うのです。
 近くのいくつかの国は、日本が右傾化・軍国主義化しつつあると批難してくることでしょうが、それは日本が「自分らにとって都合の良い国でなくなりつつある」というだけの意味ですので、特に耳を貸さなくてもよさそうです。
 北朝鮮の拉致被害者を、実力をもって奪還するのでも私は結構だと思いますし、ロシアの弱体化につけこんで北方領土をえげつなく譲らせるのも悪くないと思います。実際に戦争をする必要はありませんが、戦争を辞さないという覚悟を見せることは重要ではないでしょうか。戦後の日本は、「戦争はしませんから」という前提をふりかざし過ぎて、交渉に迫力を欠くことになったようです。
 話し合いも結構。しかし、そこに必要なのは「誠意」などではなく「覚悟」であると心得たいものです。日本政府に「したたかな交渉」を期待するのは無理なことかもしれませんが、いまからでもぜひやって貰いたいものだと、いち国民として願わざるを得ません。

 ところで、北朝鮮のミサイルは、距離は飛ぶようになりましたが、命中度はどうなのでしょうか。いくら長距離を飛んでも、狙いが定まらないのでは実用になりません。「数撃ちゃ当たる」というほどの物量も、あの国にはありそうにないのですが、USAが今回、案外平静に構えているのは、

 ──当たらなければどうということはない!

 と多寡をくくっているのかもしれませんね。

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