SSブログ

札幌・弘前公演行(4)札幌から弘前へ [旅日記]

 11月13日(日)に、札幌教育文化会館で開催された小樽商科大学グリークラブ創部100周年記念演奏会はつつがなく終わり、その後のレセプションも済んで、私はホテルに戻りました。昼間に降っていた雨はほとんど上がり、傘は要らないくらいでしたが、冷たい強風が吹いています。むしろ風が強くて傘が役に立たないくらいでした。翌日から急に気温が下がるという天気予報でしたが、さもあらんと思わせるような冷風でした。
 前夜で味を占めて、またセイコーマートで朝食を調達してゆこうと考えました。ホテルから宿への道筋に1軒あるようでしたので、そこに寄ろうとしたのですが、スマホの地図を頼りに行ってみると、寝静まったような集合住宅がひとつ建っているばかりでした。ぐるりと回ってみると、その建物にはいくつかのテナントが入っているようですが、セイコーマートは見当たりません。地図の縮尺をぎりぎりまで大きくしてみましたが、どう見てもその建物の内部にあるとしか思えず、しかも地図には「営業中」との表示も出ているのに、まるっきり気配がないのです。しまいには郵便受けの並ぶエントランスに入って、階段を昇りかけてみたりしましたが、コンビニエンスストアがあるようにはどうしても思えませんでした。なんだか狐につままれたようで、不気味です。
 仕方なくそこは諦めて、次に近いセイコーマートへ足を運んでみたら、なんのことはない前夜に寄った店舗でした。電灯が消えてひっそりとしています。
 扉をよく見たら、日曜・休日は20時閉店の旨が書かれていました。24時間営業のコンビニではなかったのです。
 すると最初に行った店舗も、実在したとしてももう閉店していたのだと思われます。スマホの地図の「営業中」はあんまりあてにならないことを知りました。
 やむなく、近くにあったローソンで食糧を買い求めましたが、すっかり遠回りになってしまいました。演奏会場の教育文化会館とも、レセプションのあるホテルとも近いところに宿をとったつもりなのに、あんまり意味が無かったようです。

 翌14日(月)は5時前に眼が醒めてしまいまいした。私は旅に出ると妙に早寝早起きになってしまう癖があります。前の晩も23時前には寝ていたので、いちおう6時間くらいは寝たことになります。この日は7時くらいに出発するつもりだったので、寝直すのは危険と考え、起きて準備にかかりました。
 この日は札幌から弘前へ移動します。N響団友オーケストラでピアノを弾く仕事が偶然入り、梯子をすることにしたのでした。
 この区間の移動は意外と厄介で、最速なのは新千歳空港から青森空港に飛んでバスで弘前に向かう方法でしょう。しかし2万5千円くらいかかるし、私はなるべくなら飛行機を使いたくない人間です。
 次は特急「北斗」新函館北斗までゆき、新幹線に乗り換えて、新青森から奥羽本線で向かう方法です。奥羽本線には特急「つがる」が走っていますが、本数が少ないし、さしたる距離ではないので普通列車でも構いません。これだと、接続にもよりますが所要は6時間程度、料金は1万5千円くらいです。新幹線乗り継ぎ特急割引を適用してさえその額です。
 津軽海峡を渡るのに新幹線を使わざるを得ないのがどう考えてもネックで、運賃のほかに最低でも3000円近い特急券が必要になります。以前は、普通列車の走っていない木古内蟹田間は特急「白鳥」などに乗っても特急券が要らないという救済措置があったはずですが、新幹線になってその取り決めは平然と破られました。
 ここを新幹線を使わないとすればフェリーに乗るしかありませんが、函館青森は4時間ほどで、さすがに時間がかかりすぎます。しかも函館・青森ともに、港は駅からだいぶ離れており、バスでの移動時間を加えるとさらに大変なことになります。
 それでは津軽海峡の新幹線はやむを得ないとして、特急「北斗」に乗るのをやめて普通列車で函館まで行くかと考えると、これは無理です。途中で乗り換えなければなりませんが、接続は決して良くなく、とりわけ途中の豊浦長万部間は運転本数が激減して、容易に通り抜けられません。札幌を朝に発っても、函館に着くのが夜になってしまいます。弘前にあまり遅く着くのもよろしくありません。なおこの場合の料金は1万2580円です。
 もう少し便利で、かつ廉価な方法は無いのだろうかといろいろ案じました。そして、発見しました。
 大通バスセンターを7時24分に出る高速バス「函館ニュースター号」で函館まで行き、道南いさりび鉄道の普通列車で木古内へ。木古内から新青森までは仕方なく新幹線に乗るとして、あとは奥羽本線の普通列車で弘前まで行きます。こうすると、弘前には17時27分に到着できます。函館までの行程を、鉄道から離れるというのがミソでした。そして料金は、1万1130円也。普通列車利用より安いのでした。
 もちろん、高速バスは事前購入のネット割引などが適用されてのことですが、それにしても札幌~函館間はJRの運賃よりはるかに安くなります。それでいて、所要時間は特急「北斗」より1時間余計にかかる程度。
 函館でなく五稜郭で道南いさりび鉄道に乗り換えることにすればもう少し安くなりますが、まあその程度は構わないでしょう。五稜郭で下りても道南いさりび鉄道は途中の上磯止まりの列車に乗れるだけですし、木古内行きを待つにしても、五稜郭駅近くには時間を潰せるようなところがありません。
 そんなわけで、私は鉄ちゃんの本分を忘れ、高速バスに乗ることにしたのでした。これほどの運賃の差があるのでは仕方がありません。また私は、バスや船の旅も嫌いではないのです。

 大通バスセンターは、大通東1丁目にあり、宿のある南1条西9丁目からは1キロちょっと離れています。宿は地下鉄の西11丁目駅に近く、バスセンターはそのままバスセンター前という駅があるくらいです。2駅間あるので、地下鉄に乗ってゆくことも考えたのですが、早起きできたので、チェックアウトも早めにして歩いてゆくことにしました。
 急に気温が下がると聞いていましたが、そんなにとんでもない寒さというわけではありません。むしろ顔をなでる風がすがすがしいくらいなものでした。
 スーツケースをころがしてゆくのが少々難儀でしたが、ちょうど良い朝の散歩といった趣きで、バスセンターに着きました。
 と、そのかたわらにセイコーマートがあります。7時開店だったようで、開けたばかりという雰囲気でした。すでに前夜にローソンで買った朝食を食べてきてしまっていましたが、セイコーマートを見かけては寄らずにはいられません。オヤツ代わりの蒸しパンとお茶だけ買いました。
 バスセンターは主にJRバスのターミナルであったようで、北海道バスの運営する「函館ニュースター号」の停留所は外にある旨、わざわざ貼り紙がありました。待合室も「ニュースター号」(函館のほか、釧路稚内などもある)のためには使えないようです。なお札幌周辺で一大勢力を持っている北海道中央バスのターミナルは、少し離れた場所に堂々と鎮座しています。新参の北海道バスはやや冷遇されているのでした。
 腕時計が少し遅れていたようで、まだ時間があると思っていたのに、いつの間にか「函館ニュースター号」が到着して客が荷物を預けはじめています。私もあわててバスに駆け寄りました。
 「函館ニュースター号」は独立3列シートのゆったりした座席配置でした。始発はすすき野で、すでに何人かは乗っていましたが、昼行バスなのにカーテンを閉ざしています。息が詰まりそうなのではないかと思いますが、その閉鎖空間が良いのかもしれません。
 大通バスセンターのあと、札幌駅前に寄って乗客を拾います。全部乗っても、真ん中の列(B列)はひとりも居ませんでした。ひとりB列を予約していた人が居たようですが、運転士が
 「窓際空いてますが、移りますか」
 と訊いたら移っていました。左側の窓際(A列)は全部埋まったようでしたが、右側(C列)は何席か空いていました。平日だから混まないだろうとは思っていましたが、採算が取れるのだろうかと心配になります。
 特急列車との時間差が少ないので、もしかしたら中山峠あたりを突っ切って最短距離で走るのだろうか、と思いましたが、そうではなくJRの特急と大体同じ、苫小牧から登別を経て室蘭洞爺から長万部をまわるルートでした。確かに途中の都市の便宜も図ろうとするとそうなるでしょう。ただ鉄道よりも内陸側をゆるく走るので、距離は若干短いかもしれません。苫小牧までは、札幌に来るときに乗った「高速とまこまい号」の逆ルートです。
 その苫小牧を過ぎて間もなく、第1回目の休憩が入りました。樽前サービスエリアです。青空が見えているのに、冷たい雨が落ちてきていて閉口しました。それより、このサービスエリアには、トイレのほか、セブンイレブンが一店あるだけでした。イートインスペースもついていない、ごく普通のセブンイレブンです。ほかの施設はなんにもありません。これは本当にサービスエリアなのか、パーキングエリアなのではないかと思いましたが、トイレの前にあった路線図を見ると、確かにサービスエリアです。
 ちなみに第2回目の休憩は、長万部の少し手前になる豊浦パーキングエリアでした。サービスエリアがあんなものだったとしたら、パーキングエリアはどうなのだろうかと、若干怖いもの見たさみたいな気分で下りてみました。
 トイレの前に、自動販売機が2台並んでいます。以上。
 ガソリンスタンドくらいないと、パーキングエリアとしての役割が果たせないと思うのですけれども、北海道の高速道路はこんなものらしい。走行中に見たほかのPAも似たようなものでした。
 片側一車線で中央分離帯も無い、対面通行の部分もけっこうありましたが、途中で渋滞することも無く、ごくスムーズに走り続けました。
 渡島半島部に入ると、JRの線路とはほぼ並行して走りますが、高さがだいぶ違うためか、車窓の光景が相当に違って見えたのが新鮮でした。駒ヶ岳の見えかたもかなり違っています。
 道央道大沼公園までで、そこから一般道に下り、新函館北斗駅に向かいます。平野の中にぽつねんと出現するような、構えだけは立派な駅ですが、周囲にはビジネスホテルが2軒あるくらいで、時間を潰せるような場所はまったくありません。ここで下りることにしていなくて良かった、と思いました。
 函館新道を通って函館市に入ります。予定時刻より10分くらい早いようです。このあたりになると降車しかできないので、早い分には構わないのです。
 函館着は12時35分くらい。バスはその先、湯の川温泉のほうまで走りますが、乗客は函館駅で全員下車しました。
 函館駅はなんだか混雑しています。これから函館を発とうとする人が多いようです。
 道南いさりび鉄道の切符を買い求めます。窓口とは離れた場所に、券売機がぽつねんと立っていました。木古内まで買うと、思っていたより若干安いので驚きました。道南いさりび鉄道の起点は五稜郭で、函館~五稜郭間はJRの線路を走るわけですが、この部分がわずかながら割引運賃となるようです。
 少し時間があるので、駅を出て、朝市食堂の中の店でイクラ丼を食べました。朝市食堂と称していますが昼でも夜でも開いています。中には10軒ほどの食堂が入っていて、カニやイクラがけっこう安く食べられるのでした。

 道南いさりび鉄道126Dは、函館発13時36分です。なんだか昔懐かしい朱色一色の単行ディーゼルカーでした。車体番号を見ると、はたしてキハ40系です。かつては日本中の非電化路線でわがもの顔に幅を利かせていたディーゼルカーです。道南いさりび鉄道では塗色もそのままに走らせているのかと驚きましたが、実はそうでもなかったようです。七重浜で行き違った129Dは、やはりキハ40でしたが、塗色はシックなモスグリーンで、はるかにオシャレな印象を受けたのです。この朱色は、わざとこの色に塗っていたのだと思われます。
 上磯までで駅数では全線の半分ですが、距離では4分の1以下です。上磯までは函館の郊外という感じなのだと見えます。上磯は北斗市の代表駅ということになっていますが、北斗市はまあ函館市の衛星都市というところでしょう。なお市役所の最寄り駅は上磯のひとつ手前の清川口です。
 上磯からは列車の本数も半減し、ローカル線らしい雰囲気となります。郵便局と一体化したかわいらしい駅舎を持つ渡島当別など、見どころはいろいろありますし、大半海岸に沿って走るので風光明媚です。こんなところをトンネルだらけの新幹線で突っ走るのはつまらないと思います。
 終点の木古内は、以前は細いプラットフォームが何本も並ぶ駅でしたが、ほとんど撤去されて1面だけとなりました。その1面だけのプラットフォームに、単行のディーゼルカーはごくあっさりと滑り込みます。新幹線の駅舎は隣り合っていますが、一体化はしていません。やはりJR同士とは様子が違うようで、別の鉄道会社ということをはっきりさせている感じです。

 木古内で、弘前までの切符を買いました。自動販売機で買おうとしたら、新青森から先も特急「つがる」に乗る設定になってしまって、取り消せません。駅員に頼んで発券して貰いました。
 ここを走っている「はやぶさ」は、全車指定席の列車です。しかし、新函館北斗~盛岡間に限って、特定特急券が発行されています。昔、寝台特急などであった「立席特急券」に近い扱いで、基本的には席は確保できないけれども、空いていれば坐っても良いですよ、という特急券です。この区間で満席になることはまず無いので、それなら安い切符を売って少しでも利用を促進しようというわけでしょう。
 とはいえ木古内から新青森という短区間でも2850円もかかります。奥津軽いまべつまでなら1520円で済みますが、奥津軽いまべつなどで放り出されるとあとが大変です。この駅は津軽線津軽二股駅と隣接しているのですが、津軽線のこのあたりは1日5往復しか列車が無く、しかも新幹線との接続などまったく考えていません。私の乗った「はやぶさ34号」は15時35分に奥津軽いまべつに着きますが、津軽線の蟹田行き列車は15時10分に津軽二股を出てしまっており、その次は18時04分となります。そんなわけで、新青森まで乗らざるを得ないのですが、津軽海峡を渡るのにこんなにぼられるのはどうにも納得が行きません。私は今後とも、時間が許すときは新幹線以外での渡航方法を考えることにしそうです。
 青函トンネル前後の線路は、三線式になっています。標準軌である新幹線と、狭軌である在来線が、同じ線路を走れるようにするための仕掛けです。確か当初は、在来線も廃止はしないという約束だったような気がするのですが、JR北海道はいとも簡単に反故にしました。経営の苦しいJR北海道としては、新幹線を強要することで収入を確保したかったのでしょうが、姑息だと思います。夜間の、新幹線が通らない時間帯には、在来線の夜行列車を残して欲しかった。「はまなす」でも残っていればどんなに良かったでしょうか。
 青函トンネルも、新幹線の速度をもってすればわずか22分で通り抜けてしまい、内地へ帰り着いた、あるいは北海道の土を踏んだ、という感動が何ひとつ得られないのでした。困ったものです。

 新青森着15時50分。この駅に明るいうちに下り立ったのははじめてです。木古内から弘前までの切符は、100キロを超えているので途中下車可能です。奥羽本線の普通電車670Mは1時間後の16時51分発になるので、一旦改札を出てみました。
 何も無い平野の中にぽつんと建てられた新函館北斗駅とは違い、新青森駅はいちおう青森の市街地の届く範囲にあるようでした。それほど寂しい駅前というわけでもありません。路線バスも多数立ち寄るようでした。しかし喫茶店などがあるようではなく、結局駅構内のドトールに入って時間を潰しました。ちょうど、木古内駅のパンフレットラックから貰ってきた謎解きゲームシートがあったので、それを解いていました。
 16時51分は、この地方のこの季節ではもう真っ暗です。670Mはあたりまえのようにロングシートでした。4輌編成でしたが、けっこう乗客が多いようです。下校する高校生が多かったかもしれません。
 弘前までは30分あまりで、17時27分に到着しましたが、もう夜の街に着いたような雰囲気です。
 少し離れたバスターミナルまで行き、土手町循環というバスに乗りました。百円均一の市内バスです。東京近辺のコミュニティバスのような小型のものではなく、車輛は普通のバスでした。10分足らず乗って、中土手町というバス停で下ります。その近くの宿をとっていました。
 弘前での仕事は、最初「前乗り」の予定でした。つまり前夜に着いて宿泊するはずだったのです。しかししばらく経って、「前乗り」をしないことになりました。それでこの晩の宿は自腹ということになったわけですが、どうせなら翌日の、本番あとに泊まる宿に泊まっておけば、荷物など置いておけて楽だと思いました。
 それで調べてみたら、翌日に泊まるホテルはびっくりするくらい高いのでした。オーケストラや合唱団がどうしてこんな高いホテルに泊まることになったのだろうかと不思議なほどでした。とてもそんなところには泊まれなかったので、私はまた、本番の演奏会場に近い宿をとることにしました。今回の会場は弘前市民会館で、弘前城の敷地の中にあります。中土手町は、お城までは歩いて行ける程度の距離にあるのでした。
 コロナのワクチン接種済み証明書を提示すると思い切り割引してくれるという宿で、私はこの前4回めも済ませましたので、その証明書を持参していました。
 証明書を見せてチェックインすると、ルームキーや朝食券と一緒に、「青森おでかけクーポン」なるものを貰いました。前にも安房鴨川のホテルで貰ったことがありますが、要するに協賛店でお金同様に使えるクーポン券です。なんと3000円分もくれたのですが、使用期限は翌日までということでした。
 それならというわけで、夕食に出かけて早速使いました。宿のすぐ近くにあった「創作郷土料理」を標榜する小料理屋で、いろいろ津軽らしい料理の並んだセットメニューを食べたのでしたが、お代は2080円也。ふだんの私なら若干躊躇する値段ですが、クーポン券を2000円分使ったので、なんと実質80円で夕食を済ませたことになりました。弘前は良いぞ、と満腹のおなかをさすりながら私は思いました。
 この項、もう1回だけ続きます。

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。