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「仮面ライダーV3」視聴コンプリート [趣味]

 TOKYO-MXテレビで毎週金曜日に放映していたデジタルリマスター版「仮面ライダーV3」を、ようやく最終回まで見終わりました。番組自体は去年の秋に終了しており、いまはそれに続けて「仮面ライダーX」のやはりリマスター版を放映しています。毎週録画はしていたのですが、実際に見るのはある程度まとめてだったので、最終回まで見るのにだいぶ時間がかかってしまった次第です。

 ──あなたと共に生きた仮面ライダーは誰ですか?

 と問いかけるテレビCMが、番組を見ているとときどき入ってきました。先月の半ばまでサンシャインシティでやっていた「THE 仮面ライダー展」のCMなのですが、私が「共に生きた」と言えるのは圧倒的に「V3」なのでした。
 本放送当時に見ていたというわけではありません。私が小学2年生から3年生にかけての時期だったはずですが、たぶん本放送はいちども見ていないはずです。このころの特撮番組は、比較的すぐに再放送がおこなわれるのが常で、私も夕方にやっている再放送を見たのですが、それもとても毎回というわけにはゆきませんでした。
 それでも、歴代シリーズでいちばん親しんだのは「V3」であったのです。いちばん多くのクラスメイトが話題にしていたのがこれであり、持ち寄りの学級文庫にあった「テレビマガジン」で毎号コミカライズを読んでいました。前年の無印「仮面ライダー」の頃はクラスでの盛り上がりもさほどのこともありませんでしたし、翌年の「X」「アマゾン」でも同様でした。なぜか3年生のクラスでのみ、うまく歯車が咬み合ったということなのでしょう。
 主題歌を完璧に歌えたのも「V3」だけでした。無印ライダーの主題歌は、

 ──ゴー、ゴー、レッツゴー、……あれ、なんだっけ? 轟く爆音? 輝くナントカ?

 と、途中微妙に迷うところがありましたし、「X」以降の主題歌はそもそも全然知りません。「V3」の主題歌は、友達が担任の先生のことを歌った替え歌なんかもあって、なんだか異様に耳に残っているのでした。
 再放送のたびに何話ずつか視聴していたわけですが、それをついにまとめて見たのが、半世紀後のデジタルリマスター版であったのでした。いい齢のおっさんがそんなことで昂奮しているのも滑稽でしょうが、子供時代の中途半端な想い出にけりをつけた記念みたいなものなので、ご容赦を願います。

 無印ライダーのラストで倒されたかに見えたショッカー首領が、ぴんぴんした状態で翌週から起ち上げたのがデストロンでした。無印の最終回から「V3」の開始回まで、作中ではどのくらいの時間が流れたのかよくわかりませんが、そんなに長い時間は経っていないような雰囲気です。ちょくちょく商売を変える立花藤兵衛が、まだ同じスポーツ用品店を営んでいますし、少年ライダー隊も健在です。とにかく「V3」が、無印ライダーの直接の続篇として作られているのは確かです。「X」以降は、中盤以降で前のライダーが出てくることはあっても、基本的には独立した世界線での出来事のようになっていますけれども。
 最初のプランでは、V3に変身するのは、無印ライダーの協力者であったFBI捜査官の滝和也であることになっていた、という裏話も聞いたことがあります。滝は敵組織の戦闘員なら倒すことができる強さを持っていたので、改造手術を受ければ仮面ライダーにふさわしい力を得ることもできたでしょう。しかし、やはり使い古しのキャラではなく新しい主人公を投入すべきだということになって、本郷猛の大学の後輩である風見志郎が登場したのでした。
 風見は第1回の時点で、デストロンの怪人ハサミジャガーに両親と妹を殺害されます。なかなか重い背景を持ったヒーローと言うべきで、家族殺害の直接的描写のある番組は、当時としてもあまり無かった気がします。前年の「帰ってきたウルトラマン」で、主人公の恋人とその兄弟がナックル星人に惨殺されるという回がありましたが、そちらにしても「V3」の第1回にしても、いまならコンプライアンス的に却下されそうな脚本です。しかしそれだけに、見ていた子供たちに深い印象を与えたことは間違いありません。主題歌にも

 ──父よ、母よ、妹よ

 と歌う一節があったので、忘れようもありませんでした。
 先輩の本郷が仮面ライダーだと知った風見は、自分も改造手術を受けたいと言いますが、復讐のために人間を捨てることに危惧を覚えた本郷はその申し出を断ります。本郷自身はショッカーに無理矢理改造されたわけなので、心情的にも認められなかったのでしょう。
 しかし結局、ふたりの仮面ライダーの危機を救おうとして重傷を負い、ライダーたちは風見の生命をつなぎとめるために改造手術を施すのでした。
 本郷猛はIQ600だかの超天才という設定でしたから、いきなり改造手術もできたのでしょうが、一文字隼人のほうはもともと単なるカメラマンです。手術のスキルなどは無さそうです。たぶん風見志郎の改造にあたっては、主に本郷がメスをふるい、一文字は助手を務めたというところでしょう。
 本郷と一文字は第2回まで登場して風見のサポートをおこないますが、カメバズーカの爆弾から東京を護るために身を挺し、行方不明となります。そのため、V3に与えられたさまざまな能力を、充分に風見に説明する暇が無かったようです。
 このためしばらくは、風見がV3の「26のひみつ」を、戦いの中で順々に解き明かしてゆくというストーリーになっていました。

 最初のころは、話が2週連続で、2体ずつの敵が現れるというパターンで進んでゆきました。2週でひとつずつの秘密を探り当ててゆき、もしかすると1年間(52話)をかけて、すべての能力が解放されるという予定だったのかもしれません。26という数字には、そういう意図が感じられます。
 しかし、この方針はやがて変更されます。敵が2体とはいえ、いちいち2話ずつをかけて解決しなければならないために、V3があんまり強く見えないという指摘が寄せられるようになったのでした。これは無印ライダーでも、一文字ライダー(2号)に変わった当初、同じような事態が発生していました。2話完結にして丁寧な物語づくりを目指したものの、ライダーが強く見えないと言われたために、やめてしまったのです。V3の場合はそれを反省して、敵を2体ずつにしたのでしょうが、やっぱり印象としては同じように弱く感じられてしまったようです。「強さ」の表現というのは、なかなか難しいものですね。
 2話連続の方針をやめた無印ライダーは、次の一手としてゾル大佐という「大幹部」投入をおこない、結果としてはそれが大成功を収めました。そしてV3も、同じ手を用いざるを得なかったようです。大幹部ドクトルGの投入です。制作陣としては、ちょっと悔しかったのではないかと想像します。
 実は、ドクトルGが2クールめからの登場であったと知って、私は少し驚きました。最初から出ていたような気がしていたのです。ゾル大佐も3クールめからの登場であったわけで、これももっと早い時期からだとばかり思っていました。私が知らなかっただけではありますが、「大幹部」の存在感がいかに圧倒的であったかの証左であるとも言えそうです。
 ドクトルGはなかなか個性的な大幹部で、「仮面ラァァイダV3!」という妙なイントネーションは子供たちに流行しました。私のクラスメイトにも、しょっちゅう「仮面ラァァイダV3!」と叫ぶヤツが居たものです。これは役者さんのアドリブだったそうなのですが、そういったちょっとした工夫が積み重なったことが、人気を呼んでいたのでしょう。なお、ドクトルGの表記は、番組内では一貫して「ドクトル・ゲー」とカナ書きになっていました。「ジー」と読まれたくなかったのでしょう。
 ドクトルGは第30話、つまり第3クールの途中まで登場しました。「V3」に出てきた4人の大幹部の中ではいちばん長く活躍しましたし、折り返し以降まで出ていたので、やはりもっとも印象的だったと言えます。なお最後のほうでは、ショッカーとゲルショッカーの4大幹部──ゾル大佐、死神博士地獄大使ブラック将軍が復活登場するスペシャル編もありましたが、決着のつけかたはいささかしょぼかったようです。

 ドクトルGことカニレーザーの退場後、わりと短期間で大幹部が交代します。キバ男爵ツバサ大僧正は、それぞれ5話ずつしか登場しませんでした。これは、子供向け月刊誌を意識した方針だったそうで、そういえばテレビマガジンでも、キバ男爵が登場してすぐに倒され、次の号ではツバサ大僧正が登場してすぐに倒されていましたっけ。
 デストロンの怪人コンセプトであった、「動植物と器具の合成」というのも、キバ男爵篇に入ると抛棄されていました。そろそろネタ切れだったのかもしれません。代わりに、キバ男爵篇ではイノシシ、セイウチ、オオカミ、スミロドン(タイガー)、マンモスと、その名のとおり牙が特徴的な動物が怪人素体となり、ツバサ大僧正篇ではコンドル、ムササビ、毒蛾、コウモリと翼を持つ生物が素体となっていました。バショウガンだけは関連がよくわかりませんでしたが。
 なおキバ男爵篇の途中に、1号・2号ライダーが唐突に再登場します。ユキオオカミ原始タイガーを、V3と協力して倒しますが、その次の吸血マンモス(キバ男爵の正体)の話では、なんの説明もなく退場してしまっていました。サービス回ではあったのでしょうが、もう少し脚本を練ったほうが良かったのではないかと思います。

 4人めの大幹部・ヨロイ元帥も、本来は5回程度で退場する予定だったそうですが、ここでライダーマンという新キャラが登場し、そのからみで最後まで活躍することになりました。
 ライダーマンはデストロンのお抱え科学者であった結城丈二という人物が変身するサブヒーローです。大幹部候補とまで言われた男だったようで、ヨロイ元帥の嫉妬を受け、無実の罪で処刑されるところを、仲間たちによって救出され、改造手術を受けたのでした。仮面は不充分であごが出ており、大映しになると無精ヒゲが見えたりしました。処刑のときに硫酸で溶かされた右手にマシンアームが取り付けられ、それが義手にも武器にもなるということでした。仮面と連動したスーツは多少肉体強化もしていたようですが、これまでのライダーのように全面的な改造をしていないので、そんなに強くはありません。戦闘員には勝てますが怪人を倒すには至らないというレベルで、無印ライダーの滝くらいな位置付けでしょう。
 しかし、手作り感あふれる造形とその背負うストーリーがかえって人気を得たようで、ラストの10話ぼどに登場しただけなのに、えらく存在感のあるキャラクターになっており、「ライダー勢揃い」的なイベントや映画などでも、れっきとした「仮面ライダー4号」として登場しています。
 ライダーマンは、最初はヨロイ元帥だけを復讐の対象とし、デストロンに敵対するつもりは無かったようで、しばしばV3の邪魔をします。そのうちデストロンがけしからぬ組織であることを理解してV3と共闘するようになりますが、首領だけは最期の直前まで敬愛していたような描写がありました。ラス前の回で、首領とヨロイ元帥の会話を聞き、首領もまた自分を使い捨ての部品としか考えていなかったことを悟るという、なかなかハードな、そして何話もかけて徐々に考えかたを変えてゆくあたり、弱くとも深みのあるキャラクターとして、現在でもけっこうファンが居るようです。
 彼はデストロンが東京に向けて発射したプルトンロケットに入りこみ、軌道を変えて途中で爆破することで人々を救い、かつ華々しい最期を迎えます。首領にも裏切られて絶望したのかもしれません。それで終わらせておけば「深イイ話」だったのですが、次回作「仮面ライダーX」の劇場版で、立花藤兵衛の
 「どっこい! ライダーマンは生きていた!!」
 のひとことで復活するのでした。いろいろと台無しな気もしますが、当時の子供たちは大喜びしたのでした。
 ともあれ「V3」はその終盤に至って、ライダーマンを加えた三つ巴の様相をおび、にわかにストーリーが深まった気がします。正義のヒーローと悪の組織という単純二項対立に、第三極を持ち込むことで、物語の綾が複雑になったのでした。子供番組としては、当時はわかりづらいという理由で否定されることが多かった三極構造ですが、三国志と同様、面白さとしては断然上だと思います。

 ヨロイ元帥は、最後は怪人ザリガーナとしてV3に倒されます。最終幹部がザリガニとはどうなの、と思ったりしましたが、無印ライダーのブラック将軍もヒルカメレオンでしたし、番組終盤になると、強そうな素体を使い果たしてしまって、最終幹部とはいえしょぼい素体しか残っていないのでしょう。キバ男爵の牙つき動物、ツバサ大僧正の翼付き生物に続いて、ヨロイ元帥は体表の堅い動物を主に操っていましたが、より幹部にふさわしそうなカニはすでにドクトルGにとられてしまっており、ザリガニくらいしか無かったと思われます。
 ザリガーナとして敗れたヨロイ元帥は、ほかの大幹部たちとは異なり、すぐには死なずに首領の元へ行って助けを求めます。いきなり情けなくなった感じですが、首領は用済みとばかりにヨロイ元帥を一撃で殺すのでした。その首領も、大きな骸骨の姿でV3の前に現れるものの、わりとあっさり倒されます。最後はV3を道連れに自爆しますが、本当に死んだのかどうかはわからない様子でした。自爆と言えば怪人二十面相だって何度もやっており、いちども本当に死んだことは無いので、首領の生死もあいまいなまま残されたのでした。
 翌週からはじまった「X」の敵はGOD機関という組織で、姿を見せない「司令」の声はデストロン首領とは違っています。ショッカー・ゲルショッカーとデストロンの首領は、ともに納谷悟朗氏が声を宛てていましたので、同じ人物であろうと推測されたのですが、GOD機関の司令は別人のように思われます。
 まあ、「ストロンガー」の最後で、それまでの敵組織を率いていたのがすべて岩石大首領であったという含みのあるセリフが発せられるわけですが、とりあえず納谷氏はしばらく出てきません。さらばとっつぁん
 仮面ライダーV3、風見志郎も生死不明で姿を消しますが、立花藤兵衛は生存を信じているのでした。そして実際、「X」の後半でお助けキャラとして再登場することになります。
 26の秘密は途中から飛んでしまいましたし、幾度かの路線変更はあったものの、無印ライダーに引き続いて、特撮ヒーロー番組の「定型」のようなものを作り上げたのが「V3」であったと思います。その意味でも、やはり私と「共に生きた」ライダーはV3よりほかには考えられないのでした。

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