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「WEST CODE 西武今昔謎物語」解決篇(3) [趣味]

 6月23日(金)西武鉄道の謎解きイベント「WEST CODE 西武今昔謎物語──わがまま姫君の無理難題」をプレイしに出かけたマダムと私でしたが、江古田・練馬高野台・大泉学園・所沢・西武球場前・西武園ゆうえんち・萩山と下車しつつ謎を解いてきたものの、ラスト問題「最後のおねだり謎」に至ってまったく見当がつかなくなり、まさかの時間切れを喫したのでした。
 何しろ萩山に到着するまでにかかった謎解き時間(昼食休憩を除く)の、およそ半分の時間を萩山で費やして、それでも最後に行くべき駅名にたどりついていないのです。
 あまり根拠なくマダムが提案した、八坂駅説も、実際に行ってみるとハズレでした。Chorus STの練習時間が近づいていたので、私たちはそこで探索を打ち切らざるを得ませんでした。
 もちろん、まだリタイアするつもりはありません。家に帰って、私はさらに考え続けました。冊子の裏表紙の「きいろのでんしゃ」を、何度も動かしました。
 何かのヒントが得られないかと、すでにクリアした人たちのブログやコメントなどを読み漁りました。もちろんあからさまにネタバレしている人は居ませんでしたが、多少の発想の援けになって貰えないものかと思ったのです。
 最後にたどりつく、クリアキーワードを蔵した「宝箱」の写真を撮っている人も何人か居ました。どこかの柱のようなものの地面近くにくくりつけられているようでした。

 また、謎解きの途上で撮ったという、広大な公園のような場所の写真を掲示している人も居ました。萩山まで謎解きをしてきて、そんな光景にはまだお目にかかっていませんので、どうもこれは宝箱のある最終目的地ではないかと思われました。しかしこんな広大な園地が、どの駅の近くにあるのでしょうか。
 「最後のおねだり謎」の後半の問題文と、到達した駅からの行動指示を、もういちど転記しておきます。

 ──[きいろのでんしゃ]がある『線』をまっすぐ繋げて動かせ。
 その後、通った文字でもう一度

 ──南口を出たら、『線』を左手に見ながら、それに沿って進め。
 その先にある[きいろのでんしゃ]の席の下を探せ。

 行動指示を見る限り、駅に着いたら南に出て、東に向かって線路沿いに歩くはずです。そしてその先に園地があるとすると、わりと限られそうでもあります。しかしもしかしたら、あの写真の公園は、西武園ゆうえんちのあたりだったのかもしれない、とも思いました。迷っていると、いろいろ疑心暗鬼になってきます。

 しばらくして、裏表紙の「でんしゃ」を動かして、あるところに来たときに、線路の上に書いてあった文章の中で、タテ読みができることに気がつきました。「たまこ」という言葉が出てきたのです。その文章は、行によって字詰めがバラバラで、しっかりタテに読めるのはその「たまこ」だけでした。
 これは偶然でしょうか? いいや、そうは思えません。
 なんとなれば、その「たまこ」の上下に、桜の花とネズミのイラストが描かれており、ご丁寧にもイラストを結ぶためのドットも打たれていたのです。そのドットを結ぶと「たまこ」の上を通るというわけです。
 桜の花といえば、「姫の謎1」で、桜台駅を表していました。実際、「姫の謎1」にある桜の花と、ここにあった桜の花は、まったく同じデザインでした。ではネズミは?
 桜台のふたつ先に、中村橋駅があります。ネズミといえば啼き声の「チュー」。これは中村橋駅を表しているのではないでしょうか? 強引と思われそうですが、「姫の謎1」で出てくるイラストは、池袋は池の絵、飯能はご飯の絵というように、駅名の最初の1文字のみを示していました。「チュー」が「中」と考えるのはごく自然と思えました。
 そして、桜台と中村橋にはさまれた駅は、練馬です。
 「通った文字でもう一度」という指示の中の、「通った文字」というには練馬では少々弱い気もしましたが、もともと漠然とした指示です。
 練馬の駅ナンバーは06です。そして、「通った文字でもう一度」の指示は、「宝箱の謎」でも出てきたアンダーラインの水色を考えると、新宿線で06の駅を探せ、という意味であるように思えます。水色は新宿線のラインカラーなのでした。
 新宿線の06。その駅とは、沼袋です。
 ここまでの推論は充分に筋道が立っているように思われ、ほかに考えようはない気がしました。翌朝、マダムに話してみると、なるほどと納得してくれたようでした。

 それで、2日後の6月25日(日)、検証しに行くことにしました。ちょうど昼食を下北沢でとることになっていて、その帰りに西武新宿線にちょっと立ち寄るくらいの時間は充分にとれそうだったのです。むしろマダムのほうが積極的でした。
 小田急新宿まで出て、地下道を通って西武新宿駅へ。田無行きの各駅停車に乗り込みました。
 10分とかからずに、沼袋に到着しました。この駅は目下工事中のようで、全体に幕が張られています。プラットフォームもいかにも仮設という感じで、隙間から下の地面が見えていました。少々いやな予感がしました。
 この駅には、南口はちゃんとありました。下り線プラットフォームの野方駅寄りに、ごく控えめな感じで出口が設えられています。ちなみに北口というのは、上り線プラットフォームの真ん中あたりに位置し、南口とはだいぶ離れていました。この駅にはまだコンコースというものが無く、いまやっている工事も、コンコースを作るためかもしれません。
 南口を出て、左に折れます。しかし、工事の幕にさえぎられて、線路も駅も見えやしません。さらに悪いことに、道路はだんだんと線路から離れてゆくようでした。そのうち線路と道路のあいだに家が建ち並んでいたりして、線路はまったく見えなくなりました。
 どうもハズレらしい、と思わざるを得ません。とにかくもうしばらく歩いてみましたが、そのうち少し大きな道路にぶつかって、その先には道が無くなっていました。
 念のため、南口を出たところの踏切を渡って、反対側にも行ってみました。これでも線路を左に見て歩くことになるのではないかと思ったのです。北口は離れているので、こちらに行くにも南口からのほうが便利なのでした。
 ところが、そちらも「線路沿いの道」などは無いのでした。線路沿いには家や店が建ち、道路はそれをはさんだ位置となっています。
 完全に、ハズレです。

 もう考えられることはあまりありません。桜の花とネズミ、それから「追加のおねだり謎1」で使ったリスとシカ同様、ドットのあるペアの絵がもうひと組ありました。虎と龍のイラストでした。そのドットを結ぶと、あいだにある文章からタテ読みで「たなし」と読み取れます。虎と龍なので、十二支的に考えると「うさぎ」が何かの意味を持ちそうですが、どう考えれば良いのかわかりません。そこのタテ読みを用いるという根拠も全然無いのです。しかし、あと考えられる駅としてはそれくらいしかありませんでした。半ばヤケクソ気味に、田無に足を運んでみることにしました。
 田無駅にも南口はありましたが、線路沿いに東へ向かう道路はやはりほとんど無いようでした。もちろん「きいろのでんしゃ」も見つかりません。ここもハズレです。
 田無には小学生の時分に住んでいたことがあります。その頃も、南口側というのはさびれているというか、正直言ってなんにもない感じでしたが、現在でも、発展著しい北口側に較べてぱっとしません。まあ北口側も、発展したのは駅前だけで、ちょっと外れれば私の住んでいた半世紀前の趣きがまだ残っている感じではありますが。
 そのぱっとしない南口にあったサイゼリヤに入って、休憩しました。
 いままでの鉄道謎解きで、正解でない駅に行ってしまったことも何度かあります。しかしたいていはいちど間違えただけで、すぐに正しい答えにたどりついています。2駅、マダムの提案した八坂駅も含めれば3駅もハズレが続くなどという経験ははじめてです。沼袋などは、それなりに自信もあったので、すっかり意気消沈です。もうリタイアするしかないか、と本気で考えました。マダムも
 「仕方ないよ」
 などと言っています。
 それでも未練がましく、さらに冊子をいじくったり、クリア後感想のブログを読み直したりしていました。
 ブログのひとつにあった「謎解き中に立ち寄った」という公園の写真をマダムにも見せると、
 「東伏見公園……?」
 と呟きました。
 マダムはその後も、電車の車輛が留置してある公園などを検索していたようですが、東伏見公園はその途上で浮かんだ名前ではありました。ただ、その公園に車輛が置いてあるわけではなく、通り過ぎる電車を間近で見られるというだけのことらしいというので、候補からは消していました。
 しかし、マダムが探しだした東伏見公園の写真は、確かに私の見つけた写真と似た雰囲気を持っているようでもあります。
 「東伏見公園は、西武柳沢駅から徒歩7分だって」
 と言うので、スマホのマップで西武柳沢駅附近を拡大して見てみました。確かに線路の南側に、まさに「線路沿い」と言って良いような道路が東へ向かっており、東伏見公演はその先にあるようでした。なるほど条件には適っています。「きいろのでんしゃ」の正体はまだつまびらかにしませんが、「南口を出て」「線路を左手に見て」「線路に沿って歩く」ということが完全に可能なのは確実であり、萩山からの距離感としてもちょうど良い気がします。新宿線の駅なので、水色のアンダーラインにも合致します。
 どうやら西武柳沢駅で正解であると思われます。ピンときた、と言えば良いでしょうか。
 しかし、問題文をどう解釈すれば西武柳沢という答えにつながるのか、それが最後の関門です。答えが直感的にわかっていて、そこへの筋道をつけるという、いわば演繹的な推論をしなければなりません。うまくゆくでしょうか。

 解決は、思わぬところからやってきました。
 サイゼリヤの照明が、思いのほか明るかったのも一因でしょう。
 また冊子の「きいろのでんしゃ」を動かしていたところ、その線路の絵の2箇所ほどに、斜めの、2枚組み合わさって山型のようになっている変な枕木が描かれていることに気がついたのです。いや、その枕木のことは最初から認識していたのですが、そんなに深い意味があるとは思えませんでした。
 その斜めの枕木は、普通に敷かれている枕木よりも薄い色であるように見えていたのですが、明るい照明の下でよくよく見ると、ほかの枕木やレールの一部にも、色の薄いところがあることがわかったのです。
 その薄色のところをつなげると、横向きの「K」や「H」、「S」などのアルファベットに見えるようです。
 そのつもりで見ると、明らかに線路の中に、「KH」「KS」の文字が見て取れました。これを「姫の謎3」にあった、数字=アルファベット対照表に照らし合わせると、「15」「17」に対応していました。
 「宝物の謎」に準拠すれば、これは駅ナンバー15と17の間に向かえ、ということになります。つまり駅ナンバー16です。となると秋津西武柳沢となります。ビンゴです。水色のアンダーラインにより、新宿線のほうということになりますから、答えは西武柳沢しかありえません。
 拍子抜けするような結末でした。「たまこ」とタテ読みできたのも、「やさか」と斜め読みできたのと同様、一種のひっかけにすぎなかったわけです。桜の花もネズミの絵も、ミスリードのために描かれていたのでした。私はそのミスリードにまんまとひっかかったのです。
 それにしても、アルファベットが読み取れる線路の色の微妙さよ。すでに答えを知った現在ですら、夜の電灯の下、しょぼしょぼした眼で見たら、ほとんど眼の錯覚と思ってしまうような違いでしかありません。もう少しはっきりした色違いにしてくれよ。
 「わかりづれぇよ!」
 正解を知った私の第一声はそれでした。そういえばクリア後感想のコメントでも、「老眼の身にはきつかった」と書いてあるものが少なからずありました。冊子に載っている路線図が小さくて読みづらいという話かと思っていましたが、この箇所のことでもあったのでしょう。私もすっかり老眼が進んで、ものが見えにくくなっています。

 田無から西武柳沢へは、わずか1駅です。すぐに到着しました。
 南口を出ると、小さなバスターミナルになっています。以前、ここから青梅行きの都営バスに乗ったことがあります。都内最長のバス路線です。現在は短縮されて、花小金井発着となってしまいましたが、いまでも都内最長路線ではないかと思います。
 マダムは、普通に西武新宿や高田馬場に出て帰るのはつまらないと言い、どこかにバスで出たいという思し召しでしたが、そのバスターミナルからは吉祥寺三鷹へしか行けないようです。とりあえず乗るバスについては保留とし、線路沿いの道を辿りました。
 「線路に沿って」というからにはこのくらいの近さでないとな、と思えるほどに線路すれすれの、クルマ通りもそう多くない道をのんびりと歩くと、先のほうに公園が見えてきました。東伏見公園です。
 その公園に入ったところにあるものを見て、私たちは思わず脱力しました。
 それは、列車のボックスシートのように向かい合わせになったベンチで、かたわらに列車の一部を切り取ったようなペイントがされた壁が立っているというものでした。なるほど、「きいろのでんしゃ」に違いはありません。写真の撮りようによっては、列車に乗っている人を外から写したように見えないでもないのです。マダムはホンモノの車輛が留置されている公園ばかり探していましたが、真相はこんなことであったのでした。
 ボックスシート風のベンチの根元に、確かに宝箱がくくりつけられていました。開けてみると、「結婚成功?」という文字が。これがクリアキーワードです。「?」がついているのは、エクストラ謎につなぐ演出でしょう。
 この「結婚成功?」というキーワードをwebサイトに報告すると、ストーリーが動き、エクストラ謎がはじまるのですが、それはどこででもできることなので、あとにまわすことにして、私たちはその場を立ち去りました。謎解きプレイヤーはもうひと組そこに居たようです。この日は日曜であり、順調に謎解きができればだいたいラストにたどりつきそうな時刻でもあるのに、私たちのほかひと組のカップルしか居なかったというのは、やはり「最後のおねだり謎」が半端なく難しい問題であったことの反映ではないかと思いました。

 公園の中をゆるゆると歩きました。もと来た駅の西武柳沢に戻っても良かったのですが、園地は案外と広く、そこを突っ切って東側から出れば、隣の東伏見駅もすぐであるようでした。初夏の公園の中を歩くのは気持ちが良いですし。
 東伏見公園がこれだけ広いのは、西東京市が管理している公園ではなく、都立の公園だったからであるようです。もとは東伏見稲荷の境内とかだったのかもしれません。
 東口に向かう遊歩道は、ゆるい下り坂になっています。そこをオモチャのクルマにふたり乗りした子供が走ってゆきました。緩斜面とはいえかなり長いので、相当なスピードが出ているようです。どうやって停まるのだろうかと心配して見ていたら、ハンドルを切ってかたわらの芝生に乗り上げていたので安心しました。
 東伏見駅の手前の踏切で、線路の北側に移りました。たぶん、駅の南口からは、また吉祥寺とかそちらのほうに行くバスしか出ていないと思われたのでした。西武新宿線は立体化が遅れていて、線路を横切るには「開かずの」と形容されるような踏切を通らなければならないことが多く、そのために新宿線を横切って南北に貫通するバス路線が少ないのです。北口からなら、家に近づく方角である北側に向かう路線もあるだろうと考えたのでした。
 思ったとおり、東伏見駅北口からは、保谷駅やひばりヶ丘駅行きのバスが出ていました。ひばりヶ丘駅行きのは、西東京市のコミュニティバス「はなバス」だったので面白そうに思えましたが、発車時刻までだいぶ間があります。それほど待たずに乗れる保谷駅行きの西武バスに乗りました。
 保谷駅南口に、わりとすぐに着きました。そういえば西武柳沢も東伏見も、もとは保谷市に含まれる駅でした。私は小学生のころ田無市に住んでいましたが、田無市には田無のひと駅しか無いのに、隣の保谷市に4つも駅があるのがなんだかうらやましかった記憶があります。
 駅のコンコースを通って北口へ。これまた思ったとおり、さらに北へ向かうバスが出ていました。みどりバスというのがすぐ出そうだったので、それに飛び乗ります。これは練馬区のコミュニティバスで、光ヶ丘に行くようです。光ヶ丘まで行けば成増行きの東武バス西武バスがあり、成増からさらに赤羽行きの国際興業バスに乗り継げることがわかっています。路線バス好きのマダムは大いに楽しそうでした。
 みどりバスはコミュニティバスには珍しく、大型車で運行していました。途中ですれちがった中には小型バスもあったので、ずいぶんきめ細かく運用しているものと思われます。バスの中で乗り継ぎのことを話していたら、運転士がいきなり、
 「お客さん、成増へ行かれますか?」
 と話しかけてきました。
 「それでしたら、光ヶ丘まで行かず、途中の『シナガクボ』で乗り換えると良いですよ。すぐに後のバスが来ますので」
 マダムが乗換案内を調べたら、このバスで光ヶ丘まで行くと四十何分だかかかると出たそうなので、さすがに時間がかかりすぎるな、と思っていたところでした。運転士の助言は渡りに船みたいなものです。
 私には「シナガクボ」と聞こえ、品ヶ窪か? と思ったのですが、「西長久保」の最初の「ニ」が聞きとれなかったようです。それなら、成増からバスで看護学校に教えに行っていた時分、なんとなく見覚えのあるバス停名でした。
 このバスに乗って感じたのは、「大泉」というエリアの広さです。なんだか走っても走っても「大泉」地区から出られないような気さえしました。西東京市から練馬区に入るとすぐ大泉地区となるようでしたが、ずいぶん経ったと思ってもまだ「大泉中央公園」だったりします。昔は大字(おおあざ)だったりしたのでしょうが、ひとつの地名でこんなに広域をカバーしているエリアが東京都内にあったとは驚きです。
 とはいえ、20分ほどで西長久保に着き、運転士に礼を言って下車しました。光ヶ丘まで行っていたら倍くらいの時間がかかったはずです。
 成増行きの西武バスは、バス停の時刻表を見ると十数分待たないと来ないようでしたが、案に相違してすぐにやって来ました。時刻表上ではもう通過してしまったはずのバスが、遅れてやってきたものと見えます。ごくスムーズな乗り継ぎで、昔の職場であった埼玉病院(付属の看護学校はもう閉鎖された)を経て成増に到着しました。そこから赤羽駅行きのバスには何度も乗ったことがあります。
 東伏見という、いままで乗り降りしたことが無い駅から、4本のバスを乗り継いで赤羽まで戻ってきたわけです。運賃には乗り継ぎ割り引きなど無かったので、そこそこかかってしまいましたが、マダムはご満悦でした。特に途中でコミュニティバスに乗れたのが楽しかったようです。

 さて、謎解きはまだ終わっていません。先ほどのクリアキーワード「結婚成功?」をwebサイトに報告すると、「終章?」と題されたストーリーパートを経て、エクストラ謎がはじまります。
 超絶美人・白糸姫のおねだりを全部かなえた武蔵麻呂でしたが、姫は実は月の住人で、月に帰る方法を探していたのでした。ホントにかぐや姫だったのですね。自力では謎が解けないので、地球の男どもを利用して宝探しをさせたのだと告白し、その場に現れた「ギンガセン」の列車に飛び乗って、武蔵麻呂の前から姿を消してしまったのでした。
 茫然とする武蔵麻呂でしたが、姫のことを諦めきれません。姫は地球の男と結婚する気はないと言いましたが、「あなたが月の住人であれば結婚したかった」という意味のことも言っていたのでした。それなら自分が月に行けば良い、と考えて、みずから「ギンガセン」の列車に乗り込みます。
 列車を動かすには、また謎を解かなければならないようです。これがエクストラ謎でした。
 まずweb上の問題が提示されます。

  3→8→9→5→11→10→4→7→月 のとき
  3/9(上向き矢印) 5/8 1/5 4/11 2/10 3/5 4/11 3/4(左下向き矢印) 6/7(右向き矢印) 1/3 1/8(右向き矢印)

 上の数字の羅列が、謎解きのために立ち寄った駅名の文字数であることはすぐに見当がつきました。えこだ(3文字)→ねりまたかのだい(8文字)→おおいずみがくえん(9文字)→ところざわ(5文字)→せいぶきゅうじょうまえ(11文字)→せいぶえんゆうえんち(10文字)→はぎやま(4文字)→せいぶやぎさわ(7文字)→月、です。
 そうすると、下の分数のように見える数字は、それぞれの駅名の中の何文字めかを示しているに違いありません。鉄道謎解きではしょっちゅう使われる方法です。
 9(おおいずみがくえん)のうち3文字め(い)、8(ねりまたかのだい)のうち5文字め(か)、という具合に読み進めると、「いかときいろきやさえね」となりますが、「追加のおねだり謎2」に出てきた矢印がここにもついています。これは五十音表での位置を示していますので、「い」に上向き矢印がついていれば「あ」となります。そうやって読み替えると、「あかときいろきりかえて」という指示文が出てきます。
 この下に、地球から月へと向かう「ギンガセン」の路線図(?)が示されています。「追加のおねだり謎1」のあみだくじ同様、経路上に文字が散らばっており、いろいろと分岐と合流を繰り返し、分岐点には緑・黄・赤の矢印(ポイント?)がつけられています。普通のあみだくじと違い、整然としたタテ線が無いので道筋をたどりづらいのですが、ともあれ赤と黄色の矢印が向かっていないほうに進んで文字を拾います。

 ──すべてきりかえて

 という文が出てきたところで月に到着しました。
 こんどは、緑の矢印にも従わないように拾ってみると、

 ──あつりょくとおんど

 と出てきました。
 圧力と温度をどうするんだ、としばらく考え込みましたが、web上でエクストラ謎の前のページに、「ギンガセン」の列車の運転台のイラストがあり、そこに圧力計と温度計が描かれていたことを思い出しました。そこへ戻ってみると、何やら細かい計器の絵があって、パソコンの画面では見づらく、スマホのほうでスワイプ拡大してようやく針が指す目盛りを読み取れました。圧力は65、温度は35です。単位は知りません。
 この数字は、「姫の謎3」の数字=アルファベット対照表を見ても意味を成しません。数字の処理方法はもうひとつ、「追加のおねだり謎1」でデジタル時計を作ったときに用いた、冊子のページナンバーに関連づけるというのがありました。ページナンバーの直上の文字を読むというやりかたです。
 それで変換してみると、なかば予想していましたが、「かに」「うに」という言葉になりました。
 このあとは一気に進みます。なんとなれば、萩山駅の駅前広場で悪戦苦闘しているあいだに、この先の手順はすべて判明していたからです。
 冊子のカニとウニの絵を、ページを折って作ると、「石と笛」という文字が出て、こんどは石と笛の絵を同様に作ると、「同じ星をつないで谷折り」という文字が出て、同じ色の星をつないだ線で谷折りすると、冊子の中の紙が二重のひし形のようになって……
 そのひし形の上下にある文字を読むと、「姫の指す星の間、見上げよ」という指示文が現れます。そしてそれは表紙のイラストにある、姫が扇子で指している星のことであるというところまで、萩山駅の滞在中に突き止めていました。
 表紙のイラストは、web上のページにもあちらこちらにロゴとして使われていましたが、いずれも姫の位置が冊子の表紙とは異なり、星も描かれていませんでした。つまりこの冊子に描かれた星がカギになるのは間違いありません。ただ、「星の間」と言うからには星が複数無いといけないような気がして、そこでひっかかっていました。
 しかし、家で落ち着いてやってみれば、それもすぐ解決しました。「見上げよ」というのがミソだったのです。冊子の表紙を電灯にかざして見上げると、扇子と星のあいだに、表紙裏に書かれていた文章の中の「か」「な」「た」の3文字が一直線に並んだのでした。
 「かなた」と送信すると、武蔵麻呂の乗った「ギンガセン」列車は動き出し、一瞬で月に到着。白糸姫を探し出して、月の住人になる覚悟を告げると、姫はついに結婚を承諾し、めでたしめでたし……というエンディングとなりました。まあ、こんなワガママで不人情で難儀な嫁さんを貰った武蔵麻呂が、その後幸せであったかどうかはなんとも言えませんが、蓼食う虫も好き好きという言葉もあります。
 クリア後感想の中に、エクストラ謎が「最後のおねだり謎」と並んで非常に難しかった、というコメントと共に、それまでやっていたことによってわりに簡単に解けた、というコメントもいくつかあったのは、私と同様、萩山駅で一旦間違った方向に進んでしまった人もけっこう居たということなのでしょう。謎の設定がもう少しすっきりとできたのではないか、という感想もありました。
 問題文の文意をわざとあいまいにすることで謎の難易度を上げる、というのはよく使われる手法ですが、私としてはあまり好きなやりかたではありません。ともあれ、初の鉄道謎解きリタイアなどということにならず、まずは安堵です。
 しかし、私もこのあと老いてゆくにつれ、頭の働きも低下してゆくかもしれません。謎解きに苦労することも増えるのではないでしょうか。まあ、その分難しい謎に挑戦できると喜んでおくのが長生きの秘訣かもしれませんね。

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