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続・「準急」を考える [趣味]

 「『準急』を考える」という項目を書いたのはもう9年あまり前のことになります。「準」という文字が好きだというようなところからはじまって、日本全国の鉄道の「準急」というランクについて考察したのでした。引き続いて「快速」について考えたり、「快速急行」について考えたりもしました。その前にも、同趣の「列車種別あれこれ」という稿を書いたことがあり、日付を見たら、上記の「『準急』を考える」のやはり9年あまり前になっていました。鉄道の列車種別というのは、昔から変わらず私の興味対象であったことを自覚します。
 9年前に書いた準急や快速の状態が、現在どうなっているのか、だいぶ変わったのかあるいは変わっていないのか、ちょっと確かめたくなりました。
 たいていの人にはどうでも良い話題だと思います。日々の通勤通学、あるいは旅行において、その時点での体制がわかっていれば済む話であって、何もことごとしく考察したりする必要を感じる人は寡少でしょう。まったく私の趣味の話に過ぎないのですが、ちょっとお付き合い願います。

  「準急」ということになると、他地方からの旅行者にはあんまり関係しない、ということは上記エントリーにも書きました。特急などなら、旅行者に利用されることも多いでしょうが、「準急」に好んで乗る人はあんまり居ないのではないでしょうか。
 言葉としても「急行に準ずる列車」であって、少数の例外を除いて、「急行」が走っている路線に補助的に走らせている列車ということになります。たいていの場合、一種の「区間急行」という位置づけであることが多いようです。つまり、途中まで急行のように走り、あとは各駅停車になってしまうというパターンです。その停車駅に用事がある場合はもちろん利用するでしょうが、通り抜け路線として利用する場合などにわざわざ準急を選ぶとは考えづらいのでした。準急は、あくまで「ご近所の足」という性格が主要なのです。
 速達列車が何種類も走る場合に、最下位の速達列車に位置づけられるのが準急なのでした。「快速」と並立している場合もありますが、まず快速のほうが上位となっています。快速は、普通は急行のすぐ下、ときに急行より上位のことがあり、特急よりは常に下位、という感じの種別ですが、準急より下位の種別を走らせている鉄道はほとんどありません。
 9年前の稿と比較もしながら、「準急」の現状を探ってみたいと思います。

 JR・第三セクター鉄道には、現在「準急」という種別は存在しません。民鉄に限られます。
 前回ピックアップしたときに、本文では見逃してしまっていたのが、津軽鉄道の準急でした。あとになってここに準急が走っていることに気がついたときには唖然としたものです。すぐに【後記】を書き加えました。
 この準急は、津軽鉄道の12の駅のうち、毘沙門・川倉・深郷田(ふこうだ)の3駅のみを通過する列車です。下り6便、上り5便走っており、全便合わせても14往復しかない津軽鉄道にしてはけっこう多い運転本数です。まあ、それだけ通過する3駅の利用者が少ないということなのでしょうが。
 3駅のみ通過、しかもその通過駅が連続することが無く、1駅ずつの通過に過ぎないので、急行とか快速とか称するのはちょっときまりが悪かったのかもしれません。準急というランクが与えられました。かつて、北陸鉄道石川線や、高松琴平電鉄琴平線、それに東京メトロ有楽町線など、準急が唯一の速達列車という路線がいくつかありましたが、現在ではこの津軽鉄道だけになっています。
 Wikipediaを見ると、「かつては3駅を通過する列車を準急と呼んでいた」と、現在では準急と呼ばなくなったかのような書きかたがされていますが、私の愛用しているJTB時刻表では、まだ準急と呼んでいました。内部資料では準急のままで、一般旅客向けには特に表示しなくなったとか、そんなところでしょうか。

 首都圏では、準急はまだまだ健在です。
 まず東武スカイツリーライン東上線に準急が走ります。スカイツリーラインの準急というのは、基本的には曳舟から押上を経てメトロ半蔵門線に入る列車のことで、曳舟~北千住間はノンストップです。北千住以北は、西新井草加に停車し、新越谷から先は各駅停車となります。これに対し、浅草発着の列車は区間準急と呼ばれ、曳舟~北千住間も各駅停車です。なお急行と区間急行の区別も同様となっています。
 かつては東武伊勢崎線・日光線の準急は、いわば通勤型の中枢を担う存在でした。東武は長らく、特急はもちろん、急行や快速急行も特別料金を要する格の高い列車であり、さらに快速も、特別料金こそ要らないもののセミクロスシートで特別感のある種別でした。快速は便数もそれほど多くはありませんでした。
 それで、準急が他社の急行に当たるような役割を持っており、A準急とB準急にランクが分かれていたのです。
 B準急がいまの区間急行に相当し、浅草から北千住まで各駅停車、東武動物公園まで通過運転をおこない、その先は伊勢崎線・日光線ともに各駅停車となりました。
 A準急は本数は少なかったのですが、東武動物公園以北も通過運転を続け、現在の「りょうもう」加須・羽生停車便と似たような停車駅で太田まで行き、太田~伊勢崎間だけようやく各駅停車になるという、他社なら快速急行か特急と呼ばれてもおかしくないような存在だったのです。
 しかし現在は、特急を除けば日中はほぼ各停と急行だけになってしまい、準急・区間準急・区間急行ともに朝夕のみの運転となりました。ダイヤは整然としたものの、あんまり面白くはなくなった感じです。
 いっぽう東上線の準急のほうは、成増以西の各停の補完という意味合いもあってか、全日を通しての運転となっています。通過区間が池袋~成増間だけであとは各駅停車という、ありがちな準急で、こちらもダイヤ的にはさほど面白みが感じられません。

 西武の準急も、以前に較べると影が薄くなりました。
 池袋線のほうはそれでも終日運転しています。日中は1時間3便というペースですが、20分おきというわけではなく、やや不揃いになっています。練馬石神井公園に停まり、以西は各駅停車となります。朝夕は快速や通勤準急に差し替えられるものが多く、かえって便数が減ることもあるようです。この通勤準急は上りだけの運転ですが、大泉学園まで各停で、そこから練馬のみ停車で池袋に向かいます。準急よりほんのちょっとだけ上位とも言えそうですが、実は石神井公園を通過する列車は特急以外では通勤準急だけで(S-TRAINを含む)、その意味ではランクにおさまらない存在とも言えます。
 新宿線の準急は、朝夕だけの運転となりました。これもかつてはA準急B準急みたいな区別があって、高田馬場から田無まで通過運転をする準急と上石神井までの通過運転の準急がありました。新宿線の主力という観があり、むしろ急行が朝夕しか運転されていない状態だったのですが、田無まで通過運転する便を急行と呼び換えたので、いわば区間急行でしかない準急の存在感が衰えてしまったのでした。そしてあるときから、日中の運転が無くなってしまったのです。高田馬場・鷺宮・上石神井という停車駅は昔から変わりません。

 これに較べると、小田急の準急は、いろいろ変化しています。かつてあった特別準急とか快速準急とかいう種別については、何度か書いているので省略しますが、9年前の稿のころは区間準急がありました。当時は、複々線区間が梅ヶ丘和泉多摩川間で、速達列車を急行線に移したために緩行線に余裕ができ、複々線区間だけ各駅停車になる区間準急が走っていたのでした。その後、和泉多摩川~登戸と、代々木上原~梅ヶ丘の複々線化工事も完了したため、役目を終えた区間準急は無くなったのでした。
 現在は、準急は緩行線を走っています。停車駅も見直され、かつては通過していた千歳船橋祖師ヶ谷大蔵、それに狛江に停車するようになりました。私は祖師ヶ谷大蔵に行く機会がわりとあり、この準急には重宝していたのですが、最近は日中の運転が無くなってしまい、帰途にしか利用できなくなりました。
 なお準急は全列車が、メトロ千代田線に乗り入れます。乗り入れをはじめたころも準急扱いだったので、その頃に戻ったとも言えます。
 朝の上りのみ、通勤準急も走ります。これは以前の準急と同じ停車駅、つまり登戸まで各停、成城学園前・経堂・下北沢・代々木上原に停車します。こちらも全列車千代田線乗り入れです。つまり小田急の起点である新宿では、準急にも通勤準急にも乗ることができないわけです。

 東急では、田園都市線のみに準急が走ります。ここは朝夕とかではなく、全日を通して運転されています。旧新玉川線である渋谷二子玉川と、末端部の長津田中央林間で各駅停車となり、中間部は急行と同じ停車駅です。かつての快速と同じような走りかたですね。
 以前の快速は、東横線の急行より走りっぷりが良く、東急では快速を急行の上位に位置づけているのではないかと噂されたりしていましたが、その後新玉川線区間も通過運転する急行が導入され、別に快速のほうが上位と考えているわけではなかったことが判明しました。
 走りっぷりが良いと思われたのは、当時はまだあざみ野駅が無く、なおかつ青葉台にも快速が停車していなかったので、たまプラーザ~長津田間で、東横線の急行には無かった5駅連続通過をおこなっていたからだと思われます。またそのあたりは戦後の田園都市構想による敷設なので線形が良く、東横線よりもスピードが出せたという点もあったでしょう。
 急行・快速共存期間ののち、快速が廃止されて田園都市線の速達列車は急行だけになりました。ところが、ラッシュ時につねに急行が渋谷に先着するため、急行の混雑が大変なことになり、それを解決するために旧新玉川線区間各停となる準急が導入されたのでした。つまり田園都市線の準急はいわば「格下げ」によって生まれたわけです。快速としなかったのは、メトロ半蔵門線を介して直通する東武スカイツリーラインでは急行の下が準急という呼称であったこと、また当時まだ残っていた快速が、急行より上位になっていたことなどから、混乱を避けるためだったと思われます。
 当初はラッシュ時だけの運転でしたが、その後末端部の各停化ともあいまって、急行とは違った使命を持つ列車として再定義されたのでしょう。全日を通しての運転となって現在に至っています。各社で準急が朝夕だけの運転に追いやられがちであるのに対し、東急ではむしろ運転を拡大させているのは頼もしい限りです。

 名鉄の準急は、名古屋本線・豊川線・西尾線・常滑線・河和線・空港線・知多新線・津島線・尾西線・犬山線・広見線・瀬戸線と、かなりいろんな路線に走っています。ただし支線では線内各駅停車というものも多く、線内でも通過運転をするのは名古屋本線・西尾線・常滑線・河和線・津島線・犬山線・瀬戸線です。
 なかなか複雑怪奇な運転をしているものが多く、たとえば中部国際空港に日中発着する準急は、空港線・常滑線・名古屋本線・犬山線・広見線を経て、新可児まで行くのが標準タイプです。走行距離は80キロを超えます。また尾西線の準急は、名古屋本線と西尾線を経由して吉良吉田まで行くのが標準です。
 空港がらみ以外は、日中は運転していない路線が多いのですが、それでもかなりの部分を通過運転するものが多く、何駅か飛ばしてあとは各停、などというタイプがあまり見られないのは名鉄の面白いところです。
 瀬戸線だけは、ほかの路線と独立しているだけに、普通の私鉄タイプの運行になっています。つまり、栄町を出ると、東大手・大曾根・小幡と停車してあとは各駅停車というパターンです。もっとも、上位種別の急行のほうもあと印場旭前を通過するだけで、尾張旭からは各停になるので、実はそんなに大差がありません。全体として、名鉄の準急の地位はけっこう高めだと言えそうです。

 近鉄の準急は、名鉄とは逆に通過運転区間が少なめです。大半の区間が各駅停車ということが多いのでした。しかも運転区間そのものが、急行などに較べて短い路線が多くなっています。
 大阪線の準急は、河内国分まで通過運転、以東は各停です。八尾から各停になってしまう区間準急も運転しています。ただ、通過運転区間でも急行の停まらない駅に停車して、急行とは別の使命を持たせているようではあります。
 奈良線は路線が短いだけに準急も全区間運転してします。石切以東が各停となります。東花園以東が各停になる区間準急もあります。ここも大阪線と同様、急行の停車しない駅への停車が見られ、両者の使命を別にしている感じです。
 京都線となるとあんまりぱっとしません。十条・上鳥羽口・伏見の3駅のみ通過で、新田辺までの運転となっています。
 同様にぱっとしないのが名古屋線で、名古屋から蟹江まで通過したかと思うと、あとは全部各停となります。東武東上線タイプですね。運転区間も四日市までです。
 南大阪線の準急も、藤井寺以東は各駅停車です。急行は古市までノンストップなので、これも急行と準急の役割を分けているようです。
 一体に準急の地位は低めのようですが、しかしたいていの路線で全日運転しているのは注目すべきでしょう。朝夕だけ、というようなところは見受けられません。

 京阪の準急は、萱島以東各停となりますが、最下位速達列車ではないところが特徴です。守口市以東各停となる区間急行のほうが下位になっているのです。もっとも、区間急行と急行は朝夕の運転だけになっており、日中は特急・快速急行・準急・普通がサイクルとなって運転されています。つまり準急は主力種別のひとつですね。
 なお、守口市を通過する通勤準急もあります。
 南海は、本線には朝の上りに2本の準急が走るだけで、ほとんど存在感がありません。天下茶屋のあいだがノンストップになっていますが、あとは全区間各停です。
 高野線では全日を通しての運転で、主力種別となっていますが、ただ高野線の速達列車のパターンは、前にも書きましたがすべて「程度の異なる区間急行」に過ぎず、ダイヤ的な面白さはありません。どの区間をとっても、「各停と、1種類の速達列車と、特急」というパターンにしかなっていないのでした。
 阪急の準急は、神戸線京都線宝塚線の3幹線に運転されていますが、宝塚線は朝の上りだけで、停車パターンも急行と大差ありません。岡町・曽根・中津に追加停車するだけです。また、神戸線の準急も朝の上りだけで、全列車が宝塚から今津線経由で大阪梅田に向かいます。宝塚線経由よりも速いのでしょう。
 阪急準急の主な活躍場所は京都線で、こちらは特急・準急・普通が日中の基本パターンとなっているので、主力種別です。高槻市以東が各駅停車となりますが、これはかつての急行(現在は無い)と似たパターンです。高槻市以西の停車駅も、かつての急行に数駅追加したくらいで、まあなかなか頑張っていると言えそうです。なお、間もなくのダイヤ改正で、現在の快速が急行と呼び換えられることになるとのことです。

 神戸電鉄にも準急が走っています。この鉄道には、準急のほか急行と特快速という種別があります。以前は快速というのもありましたが、廃止されたり、粟生線で復活したりして、結局現在は無くなっています。特快速は朝の上りに2便あるだけだし、急行は朝夕に運転されるばかりなのに対し、準急は全日運転となっているので、普通電車と共に主力種別です。丸山鵯越(ひよどりごえ)という、わずか2駅を通過するだけの「速達列車」なので、東急大井町線の「二子新地・高津通過の普通電車」みたいな感じでもありますが、大手でない私鉄としては、これだけ準急を走らせているのはアッパレとも言えるでしょう。

 現在準急が走っている路線は以上です。昔はもっといろいろなところで見られたのですが、残念ながらあちこち「合理化」で無くなってしまいました。
 9年前に考察したころとだいぶ変わったのは小田急と東急田園都市線くらいでしょうか。関西勢にはあまり動きが無かったようです。それなりに完成された状態ということでしょうか。
 また近いうち、快速などについても再検討してみたいと思います。

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