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「私鉄の特急」を考える(1) [趣味]

 去年の年末ごろ、「『特急』を考える」というエントリーを書きましたが、そこではJRの特急の現況に対する憤懣を綴るだけに終わりました。民鉄の特急についてはまた後日考える、ということで筆を擱きましたが、年始のバタバタもおさまって、少し考える余裕ができたので、この稿では民鉄の特急について書こうと思います。

 国鉄の「特別急行」の出現に少し遅れて、各地の私鉄でも、特急電車などが走るようになりました。「燕」が「超特急」としてもてはやされるようになると、私鉄にも超特急という種別がお目見えしました。よく知られているのは阪和電鉄(現JR阪和線)の超特急電車でしょう。天王寺から東和歌山(現和歌山駅)まで、ほぼノンストップでかっ飛ばしました。たぶんこれが戦後、新快速として走った種別だと思うので、そこから類推すると、途中にだけ停まったのかもしれません。阪和電鉄は先発の南海電鉄の向こうを張って、とにかく阪和間の短絡を図り、途中の街や集落にはあまり頓着せずに、線形もスピードが出せるようになるべく直線に近く敷設されました。実際この超特急電車は、戦前の鉄道の最速記録を樹立しています。
 国鉄の「燕」を山崎の狭間で抜き去ったと言われる新京阪電鉄(現阪急京都線)の超特急電車も印象深いですね。わざわざ「燕」に合わせたダイヤを組み、このパフォーマンスを演出したそうです。時間厳守に偏執的なほどに正確な日本の鉄道ならではの芸当で、諸外国のように平気で10分20分と遅れるようだと、あまり意味は無かったかもしれません。

 戦後になると、超特急を名乗る私鉄列車は出ていないのではないでしょうか。特に新幹線が走り、「超特急ひかり」という別格な列車がゆきかうようになると、超特急などと名乗るのはおこがましいというか、変に背伸びしているようで「超特急(笑)」ということになりかねません。特急より上位の列車には、「快速特急」などの名称が与えられることが多くなりました。
 私が中学生くらいのときに、あたかもバイブルのように読みふけっていた「私鉄全線・全駅」というムック版の本があります。1970年代の終わりごろですね。この本のコラム欄に、私鉄の特急をいくつかの類型に分類した文章がありました。
 当時の国鉄の列車種別になぞらえた分類で、「特急型特急」「新快速型特急」「特快型特急」の3つに分けられていたのでした。このうち、「特急型特急」というのは、国鉄の特急同様、一般車輛とは隔絶したようなデラックスな専用車輛を用い、乗車の際は特急料金を徴収されるというものです。当時の私鉄会社としては、東武(日光線系統)・西武・京成(スカイライナー)・小田急・名鉄・近鉄・南海(こうや・サザン)・富山地鉄・長野電鉄の特急が相当しました。なおここで言う「一般車輛」は、私鉄の場合はほぼ「通勤車輛」と同義です。
 「新快速型特急」は、関西の、東海道線・山陽線を走っていた新快速になぞらえており、専用車輛を使っているものの特急料金は必要ないというタイプでした。専用車輛のグレードとしては、少なくともセミクロスシート以上というのが条件でした。だから阪神の特急などはある程度「特急用」ではありましたが、塗色が違うだけで素人目には一般車輛と同様のロングシート車でしたので、ここには含まれませんでした。相当するのは、京急(快特)・阪急(京都線)・京阪・山陽電鉄・西鉄といったところです。
 「特快型特急」は中央線の特快のように、一般車輛を使っているもので、もちろん特急料金はとりません。東武(東上線系統)・京成(特急)・京急(特急)・京王・阪急(神戸線)・阪神・南海(一般特急)が相当しました。その頃はまだ、相鉄・東急(東横線)・阪急(宝塚線)・一畑電鉄などにはまだ特急が走っていませんでしたし、北総鉄道はそもそもまだ開業していなかったと記憶します。
 同じコラムには、私鉄の急行の分類として「急行型急行」「快速型急行」の2つが挙げられていましたが、国鉄=JRの急行列車が全滅したので、現在では成立しなくなっています。簡単に言えば専用車輛で急行料金を徴収する、秩父鉄道大井川鐡道などの急行が急行型、一般車輛を用いたものが快速型という分けかたでした。
 あれから半世紀近くを経て、JRの「特急」「新快速」「特快」のありかたはそんなに変わっていないので、この分類はいまでもある程度有効と考えて良いでしょう。まあ、名古屋圏のように特別快速を新快速の上位に位置づけるところもできたので、イメージとしては弱くなっているかもしれませんが、「関西(京都線・神戸線)の新快速」「中央線の特快」と限定すれば問題はありません。
 とはいえ、この3分類に必ずしもあてはまらない、「どう規定しようか……」と迷う列車も出てきていますし、さしあたって現時点での各社の特急を概観してみても良いかもしれません。

 東武鉄道の、日光線系統の特急は、昔から国鉄の特急に遜色ないような重厚さと格の高さを持っていました。かつては「けごん」「きぬ」の2種類だけで(そのまた以前は1便ごとに愛称の違う雑多な特急が走っていましたが)、基本的には浅草から日光あるいは鬼怒川までノンストップでした。北千住すら上りしか停まらなかったりしていたものです。私が子供の頃によく見かけた1720系(デラックスロマンスカー)などは、容貌すら国鉄特急とよく似ていました。
 その頃は伊勢崎線を走る「りょうもう」は急行ということになっていました。特急料金をとる特急の下に、急行料金をとる急行まで走らせているのは、当時としても国鉄と東武だけでした。日光線には少し停車駅の多い「おじか」「だいや」も走り、それらは快速急行と呼ばれていました。快速急行というと急行の上位列車であることが普通ですが、「おじか」「だいや」はセミクロスシートの快速電車と同じ車輛を用いていたため、「快速並みの急行」「快速と急行のあいだ」という意味合いで快速急行とされていた点、東武の独特の種別と言えました。
 そのうち日光線系統の快速急行にも専用車輛が投入されて、種別の「快速」が取れて晴れて急行となりました。「しもつけ」「きりふり」「南会津」などの仲間も増えました。一方、特急はデラックスロマンスカーが引退し、代わってスペーシアが活躍するようになりました。とはいえ、「けごん」と「きぬ」の二本立てであることは不変でした。
 やがて、日光線系統の急行よりは明らかに格上であった「りょうもう」が特急に格上げされました。また、スペーシアはJRに乗り入れるようになり、新宿発着の列車が走るようになりました。そろそろカオスな状況が近づいてきた感じです。
 そののち、東武は列車種別の全面的な見直しをおこない、急行を通勤用種別としました。メトロ半蔵門線を介しての東急田園都市線との直通をにらんでのことだったと思います。双方の種別名を合わせたというところでしょう。東武の有料列車は特急だけになりました。
 このあたりから、特急の停車駅が増えはじめました。それ以前にも、新栃木新鹿沼に停車する便があったのですが、それらはレギュラー停車駅となり(ただし新栃木停車はその後栃木停車に改められた)、そのほかに春日部板倉東洋大前などにも停まる便が出てきました。やがて春日部もレギュラーの停車駅となりました。「りょうもう」も東武動物公園に全列車が停まるようになったのでした。東武は特急の位置づけを、「東京の人間を日光や鬼怒川へノンストップで運ぶ」ものから、「途中駅の客をこまめに拾う」方針へと変更したわけです。それは、それまでの急行の役割を兼ねなければならなくなった以上やむを得ないことでしたが、今度は快速電車との役割分担があいまいなことになり、結局快速は廃止されてしまいました。
 快速の廃止とほぼ同時に、リバティが導入されたのだったと記憶します。つまり、リバティというのは特急を名乗っているものの、実際には廃止された快速の置き換えとして考えられたのだと私は思っています。
 リバティは基本編成が3輌となり、小回りが利くようになりました。3輌のままでスカイツリーラインなどを走っているとなんとも微笑ましいのですが、小編成が可能になったおかげで、アーバンパークライン(野田線)などまで運行することができるようになりました。野田線には急行が走ったかと思うと特急まで走るようになり、昔を知る者としては隔世の感を覚えます。ただし走りっぷりは、いまのところ急行と似たようなもので、ちょっとグレードの高い車輛を使った急行というのが実質的なところでしょう。停車駅もほぼ同じです。
 一方「しもつけ」などは以前の急行車輛がそのまま使われています。つまり現行の東武特急は、本来の特急であるスペーシア、急行をそのまま転身させたような「きりふり」「しもつけ」など、快速を置き換えたようなリバティの3種類が混在した状況であると言えるでしょう。いつかもう少し整理されるときが来るのでしょうか。

 東上線系統はまた全然違っていて、特急は走っていたものの一般車輛で、有料列車が走ることは絶えてありませんでした。かつては秩父鉄道に乗り入れる「みつみね」「ながとろ」と言った休日特急が運行していましたが、それが無くなり、全列車が小川町森林公園発着となってからは、便数の少なさもあいまって、急行の中に埋没する存在となってしまっていました。私はふじみ野にある短大で講師をしていたころ、朝霞台から東上線に乗っていましたが、その時期は朝霞台に急行が停まらず、よく志木で乗り換えていました。いちどだけですが、志木で乗り換えたときにうっかり特急に乗ってしまい、ふじみ野を通過してしまったことがありました。ことほどさように、当時の特急というのは存在感の希薄な列車だったのです。
 その後、TJライナーという有料列車が走りはじめました。TJライナーは特急とは呼ばれていませんが、明らかに急行よりは上位です。「特急型」「新快速型」「特快型」の3分類にあてはまらない「ライナー型」の優等列車の誕生でした。TJライナーは当初、夕方以降下りのみの運転でしたが、その逆向きというか戻り列車を快速急行とし、クロスシートモードのままで走らせることにしたのでした。この時点で、東上線の特急は、一旦消滅します。
 TJライナーは好評でどんどん増発され、その戻り列車であるクロスシートの快速急行も好評でした。そのうち、同様の列車を昼間でも走らせてみてはどうかということになったのでしょう。「川越特急」というのが走るようになりました。以前の特快型特急の復活というわけではなく、セミクロスシートを備えた新快速型特急として、まったく違うコンセプトで登場した種別です。わざわざ「川越」とつけているのも、以前の特急とは違うというアピールでしょう。
 川越特急という名称ですが、別に川越止まりというわけではありません。まあ、下り便は昼ごろに川越に着き、上り便は夕方に川越を発つわけなので、いちおう川越での観光やショッピングを意識してはいるのでしょうが。
 これもなかなか好評だったようで、この3月のダイヤ改正では増発される見込みです。
 なお、TJライナーの成功に気を良くした東武は、スカイツリーラインにもTHライナーというのを走らせはじめました。着席料金が必要ですが、特急という扱いではありません。

 京成電鉄は、スカイライナー・モーニングライナー・イブニングライナー・アクセス特急・快速特急・特急・通勤特急と、特急に類する列車が7種類も走っています。このうち「ライナー」のつく3種類が有料です。快速特急・特急・通勤特急は一般車輛を用いた特快型特急です。アクセス特急はいちおう荷物置き場などを備えた専用車輛を使ってはいるのですが、座席はロングシートで、こういうのはなんと称すべきでしょうか。昔の阪神の特急用と一緒で、やはり特快型と呼ぶべきかもしれません。
 スカイライナーとアクセス特急は成田空港への行き来を主目的としており、通る線路も違っています。モーニングライナー・イブニングライナーはもともとスカイライナーの間合い運転として、ホームライナー的に運転されていましたが、沿線の通勤客には好評であるようです。ただTJライナーのような2ウェイシートでなくスカイライナーと同じ車輛であるせいか、料金は少し高めです。
 快速特急はもともと特急と呼ばれていたもので、朝夕に佐倉成田間を各駅停車する便を走らせることにした際、快速特急と特急に分けたものです。さらに勝田台以東各駅停車にしたのが通勤特急です。ダイヤ的には特に面白味の無い区別ですね。
 スカイライナーとアクセス特急は北総鉄道を経由しますが、その北総独自の特急もあります。新鎌ヶ谷以東は各駅停車となるので、アクセス特急の下位と言えるでしょう。朝の上り5便、夜の下り2便だけの運転です。

 西武鉄道の特急は昔からあまり変化がありません。私の子供の頃はレッドアロー、その後ニューレッドアローとなり、現在池袋線ではラビューというのが活躍しています。一貫して特急型特急です。「ちちぶ」「むさし」「小江戸」などの愛称がついていますが、新宿線を走る「小江戸」以外は、利用者がその愛称を呼ぶことは稀ではないかと思います。「ちちぶ」と「むさし」は運転区間が異なる(「ちちぶ」は西武秩父発着、「むさし」は飯能発着)だけで、車輛も停車駅も差は無いのですから、利用者の立場として呼び分ける必要も無さそうです。「特急」または「ラビュー」で事足りそうです。
 停車駅も、私の子供の頃から較べると、入間市に停まるようになったこと、芦ヶ久保停車だったのが横瀬停車に変わったこと、くらいしか変わっていません。新宿線のほうは、私の子供の頃には特急が走っていませんでした。その後投入されましたが、当初の停車駅から変わったのは東村山に追加停車するようになったくらいです。
 たまたまかもしれませんが、「小江戸」は私が乗るときにはいつもガラ空きで、それこそホームライナー的な扱いにして朝夕だけ走らせるくらいで良いような気がします。日中は、かつての快速急行「川越号」を復活させてもっと増便したらどうかと思います。
 「ちちぶ」「むさし」も朝夕には便数を増やして、ホームライナー的に走らせていますが、特急料金を変えていないのであまり目立ちません。
 西武も、TJライナーの成功に影響されてか、2ウェイシート車輛を導入し、「S-Train」として走らせていますが、いまのところは種別外という扱いのようです。停車駅も、ひばりヶ丘を通過して保谷に停まったりと、従来の列車種別とはまったく関係なく決められたような趣きなのでした。特急よりは下かな、と思える程度です。

 京王電鉄の特急も、ずいぶん以前からあまり変化がありませんでした。典型的な特快型特急で、ほかの種別と車輛の面で差はありません。停車駅は新宿・明大前・調布・府中・聖蹟桜ヶ丘・高幡不動・京王八王子というパターンが長いこと続きました。明大前~調布間の11駅連続通過というのは、特快型特急としては破格の飛ばしっぷりという観もありました。
 それが、しばらく前に準特急というのが走るようになり、当初は「新宿~府中間が特急、府中~八王子間が急行」という停車パターンでした。つまり特急の停車駅に、分倍河原北野を加えたことになっていたわけです。しかし、やがて特急もこの2駅に停車することになり、準特急のほうは笹塚千歳烏山に追加停車するようになりました。また高尾線では、準特急は各駅停車となりました。
 さらに最近になって、準特急が廃止され、特急の停車駅がそれまでの準特急と同じになりました。八王子発着で言えば、昔に較べ4駅余計に停まっているわけで、だいぶ格が落ちたように思えます。また高尾線内各駅停車というのも引き継いでしまったため、高尾線内ではめじろ台高尾にしか停まらない急行のほうが上位になってしまいました。「特急が停まるのに急行が停まらない」というような逆転現象はほかでも見られることがありますが、完全に地位が逆転したのは京王高尾線くらいでしょう。
 京王が、特快型とはいえ最上級列車だった特急の格下げみたいなことに舵を切ったのは、「京王ライナー」の導入によるものだったかもしれません。京王はじまって以来の有料列車で、やはり2ウェイシートを備えています。私はまだ京王ライナーに乗ったことはありませんが、そのロングシートモードの車輛には乗って、その座席グレードの高さに驚きました。TJライナーやS-Trainとは一線を画すような乗り心地です。
 京王ライナーは、その車輛のグレードからしても、また停車パターンからしても、特急より上位と考えざるを得ません。いまやこれが最上級列車となったからこそ、特急の停車駅を増やしてもあんまり罪悪感を感じなかったものと思われます。

 小田急電鉄の特急は、昔から特急型特急のロマンスカーとして存在感を放っていました。小田急は戦前に、ボックス型でない、ふたり並びのクロスシート車を投入して、これをロマンスシートと称していました。「東京行進曲」に「いっそ小田急で逃げましょか」と歌われた所以です。いまでもスキー場のリフトなどで、ふたり乗りのものをロマンスシートと呼んだりしています。その伝統を受け継いだのが戦後のロマンスカーでした。
 これも東武の特急と同じく、当初は便ごとに違う愛称名がついていてややこしかったのですが、私が子供の頃までに、「はこね」「あしがら」「さがみ」「えのしま」に整理されました。それから当初は「特別準急」、その後「連絡急行」と称された「あさぎり」も加えた5種体制が、しばらく続きました。
 「あさぎり」の種別がいろいろ変わったのは、国鉄御殿場線に乗り入れる関係です。国鉄での扱いが準急だったころは特別準急、急行になったときには連絡急行、そして特急になったときには「あさぎり」も特急となりました。一時期は沼津まで直行していたこともありますが、現在は御殿場発着に戻り、愛称も「ふじさん」となりました。わかりやすいのですが、私としては朝霧高原に由来する「あさぎり」の名のほうが好きでした。
 「えのしま」はもちろん片瀬江ノ島行きです。これは現在も健在です。
 「はこね」「あしがら」「さがみ」は小田原線の特急でしたが、停車パターンが異なった点、西武の特急に較べると愛称での呼び分けがよくおこなわれていました。「はこね」は新宿小田原間ノンストップで、現在の「スーパーはこね」に相当します。「あしがら」は町田に停車しました。「さがみ」は少し型落ちの車輛を使うのが常で、向ケ丘遊園本厚木・新松田に停車しました。確か「はこね」「あしがら」は箱根湯本発着、「さがみ」は小田原発着であったと記憶します。大学入試前に町田の先生のところにレッスンに通っていた頃、ときどき奮発して「あしがら」に乗って帰宅するのが楽しみだったりしました。
 やがて、「はこね」「あしがら」がそのまま「スーパーはこね」「はこね」となり、「さがみ」はホームライナー的な列車として「サポート」「ホームウェイ」などに変化して一旦消滅しました。相模大野・伊勢原・秦野などにも停車するようになったのがこのころであったと思います。さらに新百合ヶ丘海老名に停まる便も登場しました。
 現在は「サポート」は消滅し、「さがみ」が復活しています。「ホームウェイ」は朝の運転のものを「モーニングウェイ」と呼び分けるようになりました。またメトロ千代田線に直通する「メトロはこね」「メトロえのしま」「メトロホームウェイ」なども登場しました。
 停車パターンは、かつてのような整然たるものではなくなり、かなりカオスになっています。「はこね」だけ見ても、新百合ヶ丘・相模大野・本厚木・秦野に停車する便、町田・海老名・秦野に停車する便、町田・本厚木・伊勢原に停車する便などバラバラで、どれに乗れば目的の駅に行けるのか判別が難しかったりします。いちおう番号で区別しているようではありますが、利用者にとってはあまり役に立っていません。「さがみ」も同様で、ただ「箱根湯本までは行かない」という点で「はこね」と区別されているようです。「ホームウェイ」もわざわざ呼び分けなければならない理由はよくわかりません。特急料金が違うとかいうのならばわかるのですが。
 「メトロ」系が「メトロモーニングウェイ」を除けば必ず成城学園前に停車するという謎のこだわりは面白いところです。
 多摩線には特急が入ったこともありますが、現在では乗り入れていません。しかしまた入ることが無いとも言えません。小田急の特急は、さまざまな思惑や旅客動態により、まだまだ変化してゆきそうな気がします。

 東急電鉄は長らく特急という種別を走らせていませんでしたが、東横線の急行がずっと「隔駅停車」と悪口を言われており、目蒲線が目黒線と東急多摩川線に分離したとき、東急多摩川線の起点となる多摩川にも急行を停めざるを得なくなって、停まり過ぎにもほどがある様相をおびたため、上位種別である特急、それに通勤特急を導入したのでした。しかしそのための車輛を建造したわけではなく、あくまで特快型特急ということになっています。
 ただし、西武のS-Trainが乗り入れてきており、これは停車パターンから言えば特急の上位となります。もっとも乗ってみると、菊名中目黒など、特急停車駅で運転停車をしており、東横線のダイヤ上ではおそらく特急として扱われていると思われます。S-Trainが好評だったら、もしかしたら東急編成ができるかもしれない、と私は予測したことがありますが、いまのところその気配はありません。何社にもまたがって走り、会社ごとに着席料金を加算するようになっているために、着席料金がかなり高くなるのが原因ではないかと思っています。

 京浜急行電鉄は特急の上位種別である快速特急(現快特)を走らせ、そこにセミクロスシート車輛を投入して新快速型特急として走らせているのがずっと売りでした。しかし羽田空港に快特を直通させるという思惑もあって、やたらと便数を増やした結果、現在ではほとんどが一般車輛の特快型になってしまいました。クロスシートのハイグレード車輛(2100形)もあるのですが、滅多に行きあたることのないレア列車となったのでした。
 快特は基本的に特別料金を要しませんが、比較的早い時期から、「ウイング号」というホームライナー型列車を走らせました。着席料金を徴収して、遠方への通勤者の便宜を図ったのです。最大の乗降客数を持つ中間駅・横浜を通過するというのが衝撃的でした。これはなかなか好評で、朝も走らせることにしました。朝の上りの「モーニングウイング号」と、夜の下りの「イブニングウイング号」に分化したわけです。「モーニングウイング号」は停車駅を思いきって絞ってあり、現在の京急の最高位列車と言えそうです。
 また、土休日の2100形快特は、1輌だけ指定席を設け、指定席料金を徴収することになりました。名鉄の特急券(現ミューチケット)の考えかたに近いようです。いずれにしろ、特別料金一切不要という方針であった京急の考えかたは、このところだいぶ揺らいできているようで、もしかしたら特急料金の必要な快特もしくはもっと上の種別が本格的に登場する可能性も無いとは言えません。

 相模鉄道は、長いこと急行と普通の2段階でやってきました。急行は横浜二俣川がノンストップ、二俣川~海老名が各駅停車という、これまた明快きわまる停車パターンでした。
 その後、支線のいずみ野線がだんだん長くなるに及んで、快速が導入され、こちらは星川鶴ヶ峰にも停車すると共にいずみ野線内各駅停車の電車となりました。急行と快速の運行をきれいに分けた形ですが、やがてまずいずみ野線直通の特急ができ、特急が海老名にもゆくようになり、さらに快速もまた海老名発着がおこなわれるようになって、だいぶ複雑になりました。さらに新横浜線の開通によりJRと直通するようになり、そちらに特急が乗り入れることになって、分岐駅である西谷が特急停車駅となりました。しかし急行はまだ停まりません。ただし西谷以西各駅停車というパターンの通勤急行も同時に投入されました。現在の相鉄は、かなりカオスな状況になっています。この3月からは東急との直通もはじまり、相鉄の運転系統はさらにややこしくなりそうです。相鉄が希望しているような、メトロ南北線埼玉高速鉄道への乗り入れも実現すれば、かなり長距離の列車が走ることになり、その頃にはもしかしたら着席保証列車も導入されるかもしれません。

 私鉄の特急について語りはじめたら、とめどがなくなって、今回は首都圏の鉄道だけになってしまいました。また後日、ほかの地方の鉄道についても考えてみたいと思います。

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