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トリチウム放出 [世の中]

 福島原発事故で流出した放射能汚染水が、処理済みの水として海洋放出するに充分な濃度になったということで、IAEA(国際原子力機関)のお墨付きを貰って、2年後から実際に放出することになりました。
 汚染水はわりと早い時期からアルプスという処理装置にかけられており、IAEAは早くも2013年頃から、とっとと海に流せと勧告していたようです。しかし、周辺地域の漁業への風評被害をおそれた日本政府は、処理水のプールを作って、ずっと放出せず貯め込んでいました。
 当初の汚染水には、確かにいろんな放射性物質が混ざり込んで、そのまま流すわけにはゆかなかったわけですが、アルプスを何度も稼働させて、ほとんどの物質はすでに分離されました。
 残ったのがトリチウム、すなわち三重水素です。
 本来なら陽子1個、電子1個から成っている水素に、中性子が2個くっついた状態です。従って原子量は3となりますが、原子番号はあくまで1で、化学的・電気的な性質は普通の水素とまったく変わりません。そのために、水中から分離することはきわめて困難なのでした。
 どこの国の原発でも、このトリチウムを分離することは諦めて、ある程度まで薄めてそのまま放出しています。トリチウムを分離しようとすると、他の物質を分離するのとはまったく異なるプラントが必要になり、とても採算がとれないのです。どのくらい薄めれば放出できるのかという基準はIAEAによって厳密に定められています。
 その基準から言えば、福島の処理水はとっくにクリアしているのですが、それを流すとなるとやはり風評が心配なのでしょう。

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