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怪我その後 [日録]

 前のエントリーにお見舞いコメントをくださったかたがた、どうもありがとうございます。またコメントは残していただけなくとも、ご心配くださったかたがたも多かろうかと存じます。おかげさまで元気にしております。
 いちおう、その後の経過を記しておこうと思います。
 まず唇の怪我ですが、前のエントリーを書いて間もなく、カサブタになったところがはがれ、ようやく縫い目がはっきり見えるようになりました。外側も内側も3、4針くらいずつ縫ったことになるようです。
 溶ける糸(吸収糸)なので抜糸もしなくて良い、という風に聞いていたのですが、吸収糸について調べてみたら、完全に溶けるまでには半年くらいかかるみたいで、そんなに長いこと縫い目が残っているのもイヤだなあ、と思いました。
 とりあえず、食事のあとと、起床時および就寝前のイソジンうがいは欠かさず、また毎晩寝る前に抗生物質の軟膏を塗っていた甲斐あって、特に腫れ上がったり熱を持ったりすることもなく、どうやら順調に回復しているように思われました。

 しかし、知り合いに、やはり唇の怪我で縫った人が居て、あんまり縫った先生の腕が良くなかったのか、抜糸して帰宅した途端に傷口がまた裂けてしまい、大流血となって、救急搬送されて再度縫う羽目になった……という話も聞いているので、油断は禁物です。
 傷跡がだんだんきれいになってくるにつれて、縫合してある糸の先端が何やら短い毛のようにぴんと立っているのが気になってきました。
 前回の通院からちょうど1週間後の22日(月)、もういちどバスで20分かかるクリニックへ足を運んで診て貰いました。外科の医師は縫い目をちょっと見ると、私に寝台に横になるよう言い、いきなり抜糸をはじめました。え、なんの説明も無し?……とうろたえました。ハサミがよく切れなかったようで多少手間取っています。ナースが新しいハサミを差し出すと、医師は
 「おお、全然違う」
 と感動していました。
 ナースは様子を見ながら、
 「この糸でも1週間経ってこんなにしっかり残っているもんなんですね」
 と言っていましたが、してみると吸収糸にもいろんなレベルのものがあるようです。私が調べた例は、内臓を縫合する糸だったようで、それなら半年くらい残っていても問題は無いのかもしれません。
 内側の糸の出ているあたりがわずかに化膿しかかっていたと言われました。もう数日抗生物質軟膏を塗って、それで痛みなどがなければ、もう良いのだそうです。
 そんなわけで、唇の怪我は無事に治ったと言って良いでしょう。ただ、帰ってきてよく見ると、外側の糸が一箇所抜ききれずに残っています。ちょっと気になるのですが、ひっぱると痛いし、無理して自分で抜いて傷口がひらいたりしては目も当てられません。どうせ溶けるのだし、少々気になりますが放っておくほうが良さそうです。

 唇のついでに触れておくと、前のエントリーで、前歯が折れたと書いたと思いますが、これは実は折れていないことが判明しました。口の中で舌先で探ってみると、明らかに歯一本分くらいのスペースが空いており、てっきり折れたものだとばかり思っていたし、マダムに聞いても折れているということだったのですが、唇が復調してきてから鏡で確認すると、右の第一門歯がややひしゃげた形ながらちゃんと生えており、無くなっている歯は無さそうなのでした。
 これは舌先で探っていたときも、微妙に違和感があったところで、犬歯(糸切り歯)までの歯の本数が、どう探っても左右にちゃんと2本ずつあるようで、いったいどうなっているのだろうかと不思議に思っていました。
 実際には、折れたのではなく欠けたのであったようです。もともと前歯は少し欠けていて、その薄くなって弱っていたところが衝突の勢いで欠け飛んだのでした。それにしてはスペースが大きすぎる感じだったのですが、向きが変わってしまって、隣の歯とのあいだに隙間ができたという次第です。
 ときどきうずく感じになるとはいえ、別に痛くはありません。ただ食事中、隙間からご飯粒などがこぼれてしまうのが不便で、やはり落ち着いたら歯医者には行かなければならないでしょう。

 さて、骨折していた左手の人差し指ですが、こちらも同じく22日に再度診察を受けました。レントゲン写真を撮ってから整形外科の診察室に行きます。
 男前っぽい女医はあっさりと、
 「あ、骨は変わりないですね」
 と言いました。なんだ、全然快方に向かっていないのか、とがっかりしかけましたが、女医は続けてこう言いました。
 「まあ来週、つながっててもつながってなくても、副木は外しますんで」
 私は耳を疑いました。子供の頃、手首の骨にひびが入ったときでも、3週間は副木をつけていた記憶があります。その後高校生のときに同じく手首を折ったときも、ギプスが外れるまでは約3週間かかりました。結婚前に足の甲を折ったときには6週間くらいギプスをしていたと思います。それで、手の骨折はだいたい3週間、というのが私の固定観念になっていました。
 それが2週間で副木を外すというのだから驚きました。指の骨は手首などに較べるとやはり細いので、その分くっつくのも早いということなのでしょうか。
 「そしたら、動かして良いんでしょうか」
 私は思わず訊ねました。
 「それは、来週の様子を見て判断します」
 まあそれはそうでしょう。
 それにしても、1週間経って変化がないのに、もう1週間で副木を外してしまって良いのだろうかと疑問に思います。首を傾げているうちに、あることを思い出しました。上記の、足の甲を折ったときですが、やはり手の倍というか、2週間くらい経ったときに撮ったレントゲン写真を見ながら、医師は言ったのでした。
 「変わってないですね」
 と。
 そのときも私はがっかりしたのですが、考えてみると、そのくらいの時点で変化が無いと医師が言うのは、「悪化していない」すなわち「順調」という意味合いなのではないでしょうか。
 来週骨がつながっていてもいなくても副木を外すというのは、この調子であれば、もう固定しなくともあとは勝手に造骨がおこなわれるという判断でしょう。何しろ副木が無くなるのはありがたい話です。
 ピアノにしろパソコンにしろ「キーボード」を叩くことの多い仕事である身からすれば、手のひらから人差し指の先端まで渡された副木が、とにかく邪魔です。目下、左手の中指・薬指・小指を使って仕事をしていますが、パソコンのキーボードであれば、副木が勝手にスペースキーやらwindowsキーやらを押してしまって、変な漢字変換が起こったり、予期せぬ画面が起ち上がったりして、そのうざったいことこの上もありません。
 副木が外れて、すぐに人差し指でキーが打てるようになるとは私も期待していませんが、他の指の邪魔をしないだけでもずいぶん効率が違うはずです。
 ピアノの場合は、さらに顕著でしょう。

 実は、そう遠からぬ日程で、いくつかピアノを弾かなければならない仕事が入っています。
 怪我して1週間後にあたる一昨日(21日)、川口第九を歌う会の練習があり、私が練習ピアノを弾くローテーションになっていました。これはさすがに無理なので、運営の人に連絡して、他のピアニストと代わって貰いました。
 それは良いのですが、同じ第九を歌う会の、本番前の指揮者合わせが11月4日(日)にあります。
 これをどうするか、私も悩みました。副木が外れて約1週間……
 人差し指の機能は、1週間ではまだ回復していないでしょう。そもそもすぐ動かして良いかどうかもまだわかりません。
 人差し指という重要な指が使えない状態で満足に弾けるほど「第九」というシロモノは生易しくはないのですが、それでも他の指でカバーしつつ、なんとかごまかすことは不可能ではないだろうと思います。いまはその練習をするわけにもゆかず、とにかく副木が外れてからの訓練次第です。
 普通の練習ならそれでしのげそうだし、多少音がミスったりふらついたりしても、気心が知れているのである程度笑って済ませられるでしょう。しかし、ことは指揮者合わせです。
 ゲストとしておいでいただく指揮者の前でそんなていたらくでは、私自身はもとより、合唱監督の高橋誠也先生や、合唱団のみんなの面目をつぶすことになりかねません。やはりここは遠慮するのが無難でしょう。
 日銭稼ぎで生活している身としては、仕事がキャンセルされると即減収となるのでつらいところですが、無理をして評判を落とすのは、長い目で見れば大損になりかねません。
 運営に、その旨をメールしました。ただこの季節は、音楽家はたいてい多忙をきわめており、あと2週間というこの時期になって代わりの人が見つかるかどうか、心許ないものがあります。なかなか見つからないようであれば、なんとか頑張ってみる、と書き添えました。
 ほとんど即座に電話がかかってきて、
 「で、どうなんですかね」
 と訊かれました。私がいままでの事情やら、メールに書いた内容やらをぐちぐちと繰り返していると、相手は
 「やっぱり、やっちゃいません?」
 とえらく軽い調子で言いました。
 いまから代わりを探すのは、運営としても物憂かったのでしょう。
 「指揮者には事情を伝えておきますし、団員もMIC先生に弾いて貰いたいという意見が多かったので……」
 本当かね、と思いましたが、悪い気はしません。
 なんとなく乗せられた感じで、やってみることになってしまいました。暴虎馮河とはこのことです。
 ちなみに指揮者は事情を諒解するかもしれませんが、同情は一切しないでしょう。私が指揮者でも、練習ピアニストが直前に指を怪我してうまく弾けないかもしれない、などと聞いたところで、

 ──バカだなあ。

 としか思わないでしょう。
 それにしても指揮者合わせなど、例年は12月に入ってからやることで、11月はじめなど早すぎるタイミングです。指揮者がそこしか空けられなかったのでしょうが、こんな非常識な日程でさえなければ……などと逆恨みしつつあります。

 もうひとつ、11月10日(土)に、世田谷区の合唱祭に出場するコーロ・ステラの伴奏をしなければなりません。私の『大地の歌 星の歌』からピックアップしての演奏なので、これもちょっと他の人には任せられない気がします。コーロ・ステラの常任ピアニストである笈沼甲子さんに頼むにも、期間が足りないように思われます。
 これは第九の指揮者合わせからさらに1週間後なので、本番はたぶん大丈夫でしょう。しかしそれまでの練習が問題です。本番前は毎週練習に顔を出してピアノを弾かなければなりません。その第1回が実は今日でした。もちろんまだ副木はついています。来週も、副木がとれた翌日ですから、まだろくに弾けないでしょう。
 それで、こちらはマダムに助力して貰うことにしました。代わって貰うのではなく、連弾で伴奏をやろうというのです。まだ動かせない左手のパートをマダムに弾いて貰い、私が右手パートを弾きます。
 ふたりの弾き手が関わるので、合わせるのが大変とも思えますが、この方法であれば私自身のテンポ感やタッチなどを伝えやすいと思われます。マダムとしても、全部弾くとなるとかなりの練習期間が必要ですが、左手パートだけであればそんなに苦労せずに弾けるでしょう。
 幸いマダムは、コーロ・ステラの練習場所からごく近いところで、すぐあとの時間帯にレッスン仕事があることもあり、ふたつ返事で引き受けてくれました。家の近くのフィットネスクラブで毎週参加しているフラダンスのクラスは休まざるを得ませんでしたが、これもこころよく諒解してくれたのでした。
 ゆったりとした2拍子が続く「恋歌」はまだ良いのですが、もう一曲の「夜の歌」はテンポが速く、しかも変拍子を用いたところがあります。いささか苦労しましたけれども、数日かけて息を合わせ、いよいよ今日練習に行ってみたら、案外好評でした。
 「阿吽の呼吸ですねえ」
 などとも言われ、面目を施した気分になりました。むしろ本番もこれで良いかも……などと思ったほどでした。片手ずつを担当しているため、それぞれに対する集中力が、ひとりで弾いているときよりも行き届いている気がしたのです。

 どちらにしても、副木が外れたら、人差し指が動いても動かなくても、とにかく練習をする必要があるでしょう。マダムの友人で、やはり指を骨折し、2週間くらいのときから少々無理をしたため、完治まで長引いてしまった人が居ると聞きましたが、多少完治が長引いても、仕事はできるだけきちんとこなさなければならないと思っています。
 連弾伴奏のことも含め、怪我してこのかた、マダムは大変助けになってくれました。こういうときはやはり結婚していて良かったと実感せざるを得ません。願わくばこの助けがずっと続かんことを(笑)。

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Pague

少しは世間の主婦並みの買い物や料理をして、私としては新鮮でしたね。回復と共に徐々に元の体制に戻りそうな。連弾はユニットとして続けたいね!
by Pague (2018-10-28 00:33) 

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