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受け継がれる名前 [いろいろ]

 日本の男性名には、もともと通称「名乗り」があることは何度か書きました。通称は藤吉郎とか吉之助とかいうヤツで、文字どおり日常的に呼ばれる名前です。「名乗り」のほうは諱(いみな=忌み名)とも言って滅多に用いられず、主に公式な文書などに記されるものです。人の「名乗り」を直接呼ぶのは、たとえ主君であっても非礼とされていました。いまの感覚で言えば、実印みたいなものと考えれば良いのかもしれません。ただし、歴史上の人物の名前として伝わるのはもっぱら「名乗り」のほうです。
 現在でも、子供のうちならともかく、いい大人が相手を名前呼びするのは、相当に遠慮の無い間柄でしかありえないでしょう。USAなどでは簡単に名前呼び(愛称呼びのことも)するというので、そちらのほうが進んでいるというか、

 ──「個人」がたかだかと自立している感じがする。(司馬遼太郎

 などと褒めたたえる向きもありますが、われわれからすると一種の「甘え」があるようにも思われます。要するにそれぞれの土地の習慣というだけであって、どちらが進んでいるの遅れているのという話ではないでしょう。明治以来、通称と名乗りというふたつの名前を持つことが無くなって、どちらかに寄せた名前をひとつに定めたわけですが、礼儀感覚としては名乗りの側に偏ったということだと思います。


 

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