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緊急停止ボタン [世の中]

 渋谷駅で線路に財布を落とした男が、列車の緊急停止ボタンを押して電車を停めたというので騒ぎになっています。
 駅や踏切、あるいは列車内にある緊急停止ボタン、いちど押してみたいという誘惑にかられたかたは少なからず居られるのではないかと思います。人間だれしも、ぷくんと突き出しているものを見ると指で押したくなるものであるようです。その本能を抑制するためか、いまではたいていむき出しにはなっておらず、透明なアクリル板のようなもので蓋がされ、それを突き破らないと押せないようになっています。
 列車を停めるというのは大変なことで、多くの人に迷惑がかかります。だから飛び込み自殺をはじめ、列車ダイヤを乱す行為については多額の賠償金が科せられることになっています。まあ飛び込み自殺をするような人は経済的に困窮していることが多いわけで、当然ながらその家族には賠償金の支払い能力など無いのが普通でしょうから、実際には執行されないケースが多いのかもしれませんが。
 緊急停止ボタンのいたずらについても、もちろん罰金がかかることは言うまでもありません。
 この緊急停止装置、けっこう昔からついていたらしく、100年近く前の1927年昭和2年)に発表されたアガサ・クリスティ『ビッグ・フォー』の中に、こんな会話が出てきます。エルキュール・ポワロヘイスティングズ大尉が、敵の眼をあざむくために、パリを発車した走行中の急行列車から脱出しようと試みるシーンです。

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