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「楽語」を考える(1)速度標語 [いろいろ]

 楽譜を開いて見ると、いちばん目立つのはもちろん音符なのですが、それ以外にもいろいろな記号や文字情報などが書き込まれています。
 音符だけ書いてあっても、音楽を演奏するにはいろいろと足りないことがあります。どのくらいの速度で演奏するのか、どのくらいの音量で演奏するのか、どんな音質を求めるのか、音と音のあいだをつなげるのか切るのか、どんな表情をつけるべきなのか、考えることは次から次へと湧き上がってきます。
 楽譜というものが現在の形に整ったのは大体17世紀ごろですが、最初のうちはそれこそ五線に音符が並んでいるだけのものでした。バロック期を通じて、次第に速度の指定や音量の簡単な指定がなされるようになりましたが、いまの眼から見るとごくあっさりとしたもので、書かれているとおりに演奏してみてもどうにも物足りないというか、ぶっきらぼうな音楽になってしまいます。
 演奏者は行間ならぬ「音符間」を読み取ってゆかなければならないわけですが、これはなかなか経験の浅い者には難しいことです。それで、えらい演奏家や研究者などが、自分なりに解釈した「編曲版」というのを作ったりしています。作曲家の自筆譜や、作曲家自身が眼を通したであろう初期の出版本、いわゆる「原典版」を元にして、現在用いられているさまざまな記号や文字情報を書き加えたものです。

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