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「鉄道探偵と1/3の奇妙な手紙」解決篇 [趣味]

 ずいぶん長いことご無沙汰してしまいました。3月4日以来ですので、2週間半ぶりです。
 先月末から、『セーラ』のオーケストレーションにとりかかっており、何しろ分量が半端ないので、ある程度先行きの見通しが利いてくるまで、気が気でないという事情がありました。2週間ほどかかっても第一幕第一場が終わっていなかったりしたので、これは本当にヤバいのではないかと震え上がったり。
 しかしまあ、作曲と一緒で、最初の一場がいちばん大変ということは言えます。それを過ぎてしまうと、まあまあ書きかたのパターンのようなものが生まれてくるので、多少はサクサク進むようになるのでした。また、このオペラは序曲に相当する3つの合唱曲の部分の比重が大きく、そこは言ってみれば独立した楽曲のようなもので、オーケストレーションもそれなりによく考えなければなりません。古典オペラであればレチタティーヴォにあたる、会話で物語が進んでゆくところなどは、わりに薄い音で良いのでどんどん進められます。
 3、4月はこの作業に集中したかったのですが、そういうときに限って他の仕事が入ったりします。お金は稼がなければならないので、仕事を断るわけにもゆきません。やはりオーケストレーションの仕事が来て、短いものですが7曲ばかり仕上げなければならなくなりました。本腰を入れられるのは5月に入ってからとは伝えてあるのですけれども、3月中に2曲くらいは欲しいとのこと。『セーラ』の合い間を盗んでそちらに振り向けられるかどうか、なかなか綱渡りのような今日この頃です。
 こういう立て込んだ時期には、世の中のあれこれについて、あるいはそれなりのテーマについて考察したりする時間はとれません。また、余計な外出もしなくなるので、日録のたぐいも書きにくくなります。そんなわけですっかりご無沙汰してしまったわけですが、ふと気づくと今日は3月21日。前にやった「鉄道探偵と1/3の奇妙な手紙」のキャンペーン最終日です。つまり本日夜半をもってネタバレが解禁されますので、その解決篇(ネタバレ禁止で書けなかったネタの放出)を記しておこうと思います。あんまり頭を使うこともなさそうですし。

 「鉄道探偵と1/3の奇妙な手紙」は、都営地下鉄京王電鉄が共同で開催した謎解きイベントです。リアル脱出ゲーム制作会社のタカラッシュが企画しているもので、「鉄道探偵」シリーズとしては5回目、私たちが参加したものとしては3回目となります。東京メトロがやっている「地下謎への挑戦状」と比較すると、謎解きキットといったものを購入する必要はなく、交通費だけで参加できます。また全体にストーリー性が強いのも特徴でしょう。
 前回までは、プレイヤー自身が「見習い探偵」となって謎を解き明かすという体裁でしたが、今回は若干趣向を変えています。探偵は脇役としてストーリーに関わりますが、主人公と言うべきは「中河原大地」「中河原空」という兄弟で、彼らが大富豪の亡父から受け取った手紙にある暗号を、彼らになりかわって解いてゆく形になっていました。このシリーズの登場人物は都営か京王の駅名から名前がとられているのが常ですが、「中河原」は分倍河原のひとつ先の地味な駅です。
 兄弟に手紙を渡したのが、亡父の執事であった神保チョウジ。この人、前々回は元鉄道員の酔いどれ部長、前回は女優のマネージャーとして出てきており、毎回役柄が違っています。同名異人かと思いきや、登場人物紹介のところに「鉄道運転手、女優のマネージャーなどの職歴がある」と堂々と書かれていました。要するにタカラッシュのお気に入りの人物なのでしょう。
 兄の大地は京王、弟の空は都営で謎を解くことになります。
 私たちは、先に京王(大地篇)を済ませることにしました。チャレンジしたのは2月17日で、寒い盛りでしたから、なるべく陽ざしのあるうちに地上をやってしまいたかったのです。「地下謎」と違って、「鉄道探偵」は駅をそんなに離れずに進められる印象があったので、地下鉄のほうは陽が暮れてからでも良いでしょう。実際は、今回は予想外のことがあったのですが、それはそのときに説明いたします。

 京王を先にすることにしたのは、もうひとつ理由があります。それは出発点の問題です。いままで私たちは、都営と京王の結節点である新宿をスタート地点とし、そこで小冊子を貰って謎解きをはじめていました。しかし、今回はたまたま、事前に小冊子を入手できたので、解ける問題はあらかじめ解いてみたのです。
 毎回、最初の問題で、いくつかの駅を割り出すようになっています。それ自体は電車に乗らなくとも解けます。その後の問題は、割り出した駅に行ってみないと解けないのですが、とにかく事前に割り出せる駅があるわけです。
 今回は、京王と都営のいずれも、3駅ずつを割り出せるようになっていました。
 京王の第1問は、青い丸の中に「I__1」と書いてあり、その上に両端矢印で「YES」、下に同じく両端矢印で「OFF」の逆さ文字がありました。両端矢印は反対語を意味していると思われますので、「YES」の反対はもちろん「NO」。「OFF」の反対は「ON」ですがこれも逆さ文字にしてみれば「NO」となります。空欄にNOを入れてみると「INO1」。この場合のOはゼロとして読み、「IN01」となって、これは渋谷のコードナンバーです。井の頭線(ラインコードIN)の1番目の駅です。この第1問にはStep 2があり、それは渋谷駅に行ってみないとわかりません。
 第2問は、漢字1文字が書かれたマークと、ひらがながあちこちに散らばっている迷路です。「《S2 M5 T1 K1 A2 D5》から《S4 N G1 W1》までの快速を線で結び出て来た駅に向かえ」と註記がありました。アルファベットと数字の組み合わせは、ローマ字だろうとすぐわかります。下高井戸仙川ですね。実際、迷路のスタートには「下」の文字のマークが、ゴールには「仙」の文字のマークが置かれています。「快速を線で結び」というのは、下高井戸と仙川のあいだの快速停車駅がカギになるのだろうと推測されます。両駅間の快速停車駅は桜上水・八幡山・千歳烏山ですので、迷路の盤面を見てみると、なるほど「桜」「八」「千」のマークがありました。そのマークのみを順番に結ぶように迷路を進むと、
 「いきどまりのもじよめ」
 という文章が出てきました。そこで迷路の行き止まりになっているところの文字を拾ってみると、「いけのうえ」という駅名になりました。第2の駅は池ノ上です。
 第3問は、上下で対になった人物のイラストで、いちばん右は電灯の点いていない「暗い」ところの人に対して、電灯のともった「明るい」ところの人。真ん中は「小さい」人と「大きい」人。左は「後ろ」向きの人と「前」向きの人。なめとんのかと言いたくなるようなしょぼい問題で、答えはただ「明るい」「大きい」「前」をそのまま順番に読めばよく、明大前となります。
 京王の3駅はいずれも井の頭線の駅で、しかも渋谷からはじめるのが都合が良いようです。
 都営の第1問は、横軸にA──O、縦軸に「Y」「Y」「G」と書かれている表で、鉄道路線図みたいな形に見えますが、単純に縦軸と横軸を組み合わせてローマ字読みすれば良いのでした。YYG、という時点でほぼ結論は見えていましたが、Yの列はいずれもOのところが赤丸になっており、Gの列はA──Oを5つに分けた2番目が赤くなっていましたので、言うまでもなく代々木が答えです。
 第2問は、イラストの入ったあみだくじで、イラストをふたつ連ねて駅名になるところを横棒としてつないでから、7本の縦棒の上端からはじめて到達した下端の文字を順に読むという、これも簡単な問題です。イラストは「菊」の絵と「川」の絵で菊川、といったシンプルなもので、他に巣鴨月島水道橋目黒が出てきます。あみだくじのこたえは「十と一のあいだ」です。都営の駅名で「一」がつくのは一之江青山一丁目だけで、「十」がつくのは麻布十番だけです。青山一丁目と麻布十番はひと駅おきで、あいだの駅は六本木です。
 第3問は漢字スケルトンです。多少頭を使いますが、枠の色(都営のラインカラーと同じになっている)をヒントに考えてみると、

  西大島
  高     都
  島     庁 浜
  平    門前仲町

 と解くことができ、その中で数字の振られた文字を読むと「大門」となります。
 3駅とも大江戸線の駅ですが、実は先へ進むためには、大門駅に居ることが前提になっているので、こちらは順番に訪ねる必要がありそうです。
 あらかじめ割り出した6つの駅名を眺めてみて、私の家からの便を考えると、やはり今回は「渋谷からスタート」とするのが妥当でしょう。この意味でも、京王を先にするほうが良かったわけです。

 17日の朝、埼京線で渋谷駅に到着しました。現在、渋谷駅は埼京線プラットフォームを山手線に並び合わせるための工事をしており、非常に歩きづらく、なるべく使わないようにしているのですが、今回はやむを得ません。
 井の頭線の乗り場に向かいましたが、途中の店でマダムが靴下を買いたいと言いました。買うだけでなく、いま履いているのが何やら不都合らしく、履き替えてゆきたいというので、しばらくスタッフルームの中にこもっていたりもしました。いきなり時間ロスです。まあそんなに急いでまわる必要もないかもしれませんが、去年はラストがずいぶんと遅くなってしまったので、そう無制限に時間をかけるのもいかがなものかと思います。
 ともあれ用を済ませて、井の頭線乗り場に行きます。まず京王の一日乗車券を買い、それから第1問のStep 2の指示に従い、改札横の階段を下りて踊り場のところで壁を見ると、「山田タケシ」なる人物からのメッセージのパネルがありました。第2問は実はこの山田タケシから受け取ったという設定であるようです。なお、「山田」は高尾線の、これまた地味な駅です。
 ところで小冊子には、「手がかり記入欄」という区画があり、そこには京王の路線図の一部を切りとったようなものが描かれています。駅名は記されていませんが、文字数は示されており、それと列車の停車駅の様子から、どこを切りとったのかは判別できます。第1問に対応したものは、相模原線京王稲田堤から稲城までの3駅です。そして山田タケシのメッセージには、駅名などの中のある文字に数字が入ったものが含まれていました。京王よみうりランドの「よ」の字にあたるところに「5」、それから列車種別の「快速」=「RAPID」の「RA」にあたるところに「2」。
 改札を通り、普通電車に乗って池ノ上で居ります。これも指定された場所へ行くと、「橋本ヨウヘイ」からのメッセージパネルがありました。橋本ヨウヘイはこのシリーズではおなじみの、元コスプレマニアの会社員で、その後鉄道会社に転職した人物です。苗字は相模原線の終点の駅から。
 ここで受け取った路線図は、高尾線の山田から狭間までのもので、めじろ台の「め」のところに「6」、狭間の「間」のところに「4」とありました。
 次に明大前に行き、説明どおりフレンテ口から出てエスカレーターを上がると、「神楽坂明」からのメッセージパネル。この人物は去年の「消えた一億の謎」で証人のひとりとして登場しています。京王には神楽坂という駅はありませんが、都営大江戸線に牛込神楽坂があります。
 神楽坂明に渡されたのは、井の頭線の三鷹台から吉祥寺までの路線図。井の頭公園の「の」のところに「3」、吉祥寺のラインコード欄(つまり「IN」)に「1」とありました。
 ここでマダムの希望もありひと休み。駅前のコーヒーショップに入って、そこまでの答えを整理します。また出てきたキーワードを神保チョウジに……ということはイベントサイトに送信し、次のカギを受け取らなければなりません。去年まで、この送信作業がやたら多かったのですが、いささか不満が多かったのか、今回は京王篇・都営篇ともに途中1回、ラストでもう1回だけの送信で済みました。
 「謎4」として、「1と23456」とだけ記されています。これまで路線図に振られていた数字のところの文字を代入すれば良いので、「INとRAの間よめ」となります。INとRAが含まれた文字列を小冊子の中から探してみると、路線図の「井の頭線」のところに英語名「INOKASHIRA LINE」というのがありました。そこでINとRAのあいだを読んでみると、OKASHI=おかし、となります。これがキーワードで、神保チョウジに伝えると、「謎5」の文字盤の完全版を教えてくれるのでした。

 「謎5」は6×6のマスの中に文字が入った文字盤が提示されています。中にはいくつか空白のマスがあり、チョウジの完全版でそれを埋めることになります。
 しかし、文字盤にはスタートとゴールが示されており、そこから→ヒ→ヒ→ヒ→シ→シ→、というルールで進むと文章が現れるということです。その文章によってつぎに向かう駅がわかるというわけです。ヒとシはそれぞれ左と下を表すことはすぐ見当がつき、実はその順に文字を拾うと、欠けた文字があっても全体の意味はつかめるので、私はチョウジから完全版を教えて貰う以前に、次に向かう駅の見当はついていました。
 「西○布○布田の○の○」
 ということなので、これはまず間違いなく
 「西調布布田の間の駅」
 でしょう。完全版を見るとやはりそうなっていました。次に向かうべきは、調布です。なんだか調布には毎回訪れている気がします。
 京王線の準特急に乗り、調布へ。ここは駅構内のオブジェ(通路の欄干の絵)が問題になっています。小冊子に印刷された絵と見比べ、違っているところをチェックするという、眼が悪いとちょっと難しい問題でした。
 詳細は省きますが、「ハサミ」「リボン」「サンタ」「イルカ」がその「違っているところ」で、その答え記入欄で指定された文字を拾うと「ハンタイ」となります。
 この「ハンタイ」が「謎6」のキーワードで、

 ──「ハンタイ」になるもの4組線で結べ。

 というのが「謎6」の問題文だったのでした。こちらには、文字がひとつずつ書かれたマークが一見ランダムに散らばっています。しかし、対義語をピックアップしてみると、「北ー南」「黒ー白」「高ー低」「上ー下」となり、それぞれを線で結ぶとちょうど井桁の形ができました。その井桁の、どの部分に含まれる文字を読むかというのが次の問題で、L字型を裏返したり回転させたりした記号が記されています。Lであれば右上のエリアを読めば良いわけです。
 これも答えだけ書けば、「君は悪夢」という穏やかならざる言葉が出てきたのでした。ただこの言葉の「下」を、「謎5」の文字盤で「読む」と、次の駅が出てくるというので、ここはだいぶ頭をひねりました。正直言うと、マダムがこっそり見ていたヒント(イベントサイトに用意されている)をなんとなく聞いて、ようやくひらめいたのでした。
 「謎5」の文字盤には、マスごとにカラフルな色が塗られているのですが、「きみはあくむ」という文字列は、いずれも色の名前の頭文字です。黄色、緑、灰色、青、黒、紫で、これらは全部文字盤のマスの色になっており、しかも他のピンクやオレンジと違って一箇所にしかありません。
 それぞれ黄色のマスの下のマスの文字、緑のマスの下のマスの文字……と読んでみると、「府中駅に行け」となりました。去年も一昨年も、京王では調布より先に行くことはありませんでしたが、ここでついに「その先」登場です。例年、京王篇は動き回るエリアが狭くて、一日乗車券の元が取れないという苦情があったのかもしれません。

 特急や準特急は行ったばかりのようで、鈍行に乗ってのんびりと府中まで移動しました。
 府中駅では「北口ではない改札を出て……」などとまぎらわしい誘導文がありましたが、ここは広いコンコースの両側に改札があり、それぞれの行き来も簡単なので、間違えたとしてもわりに簡単にリカバーできます。
 文章に従って歩くと、「型押しくん」という道具が用意されており、その前に鉄道探偵プレイヤーの列ができていました。小冊子の枠に合わせて型押しすると、元から薄く印刷されていた図形と合わせて文字が出てくるという仕掛けです。型押し自体は色がつかないのでわかりにくいようでもありますが、上から鉛筆で軽く塗ると、型押しされたところが浮かび上がってきます。
 少々無理なフォントでしたが、「アカナイ」という文字が出てきました。そして「謎7」には、電車の模式的なイラストが描かれています。井の頭線のように、途中で色の変わる帯がついた車輌が、全部で8輌。窓にはカタカナが1文字ずつ記されています。
 「アカナイ」は「開かない」ではなく、「赤無い」で、帯に赤色が入っていない車輌のカタカナだけ読めという意味でした。結果は「ウラミテ・モウイチド・ナゾトケ」……「裏見てもう一度謎解け」ということでした。裏というのは「謎6」が記されたページですが、さっきのL字型の指示のところに、型押しがされて、新しい図形となっていました。
 先へ進めたいところですが、私たちは府中駅の駅ビルの中のステーキハウスで昼食をとりました。そろそろマダムが限界だったのです。

 再び指示に従って文字を拾うと、こんどは「死は最後」という、またもやおだやかならぬことばが出てきました。問題文は同じく、謎5の文字盤で「しはさいご」の下の文字を読むというものです。
 こんどは色の名前ではないでしょうが、同じような方向性で何かないかと文字盤を眺めました。そして、いくつか漢数字が記されているのに気がつきました。「しはさいご」は「四八三一五」と表せますが(昔懐かしいポケベルみたい)、この5文字は確かに文字盤にありました。下を読むと、「千歳烏山駅」と出てきました。同じ問題を何度も違う解きかたで活用する緻密さに、大いに感心しました。
 準特急で千歳烏山へ。この駅は相対式プラットフォームの片側に改札口が面しているという昔ながらの構造をしており、電車の乗降に階段の上り下りを要しません。こういう楽な駅が少なくなったのは遺憾ともなんとも言いがたいものがあります。
 改札を出るとすぐ近くに線路横断用の地下道がありますが、それもごく浅く、階段の段数がえらく少ない地下道でした。この地下道に「謎8」のカギとなるポスターが貼られており、プレイヤーが群がっていました。
 謎8は、模式的な線路図が示され、そこにたくさんの駅名板みたいなものが添えられています。駅名板は空白のものもありますが、トランプのスートや星印、×印、◎印などが書かれているものが多く、その他に色のついたものがいくつかありました。
 一方ポスターには、黒が3、青が1、赤が3……などと色と数字が対応されていました。
 色の名前を英語で書いたとき、BRACKの3文字目はA、BLUEの1文字目はB、REDの3文字目はDです。駅名板で、黒が1番目、青が2番目、赤が4番目に来ているので、この駅名板がアルファベットを表しているのがわかります。実は私は最初青を「2」と間違えてしまい、あたりにプレイヤーが群がっているので遠慮して少し外れたところで考えていたため、容易に関連性がつかめませんでした。最近この手の不注意をよくするようで、気をつけなければならんと思います。
 駅名板の謎が解けたところで、その下に書いてある、いろんな記号を連ねたものを解読します。要するにその記号が書かれた駅名板に相当するアルファベットを代入すれば良いわけです。その結果は、
 「SHINSENSHINJUKUのKEIOSHINSENGUCHIへ行け」=「新線新宿の京王新線口へ行け」
でした。
 新宿線直通の区間急行に乗り、新線新宿へ。例年のスタート地点です。
 略図で示された場所へ行くと、子供の作文コンクールの受賞作品……をかたどった掲示物が貼られていました。6作くらいの、本当に子供が書いたとしか思えないような作文が掲示されており、その中での最優秀作品とされていたのが、「中河原大地」くんの「私の偉大なる野望」なる作品でした。鉄道遊園地を作りたい、というような内容でした。
 この作品名が送信キーワードとなります。イベントサイトに送信する必要がありますが、あとでも良いので、引き続き都営(空篇)に取り掛かります。15時くらいになっていました。

 券売機で都営の一日乗車券を買い、大江戸線の乗り場に向かいます。割り出された駅──代々木、六本木、大門では、いずれも構内のオブジェを利用してキーワードを読み解くという問題になっていました。キーワードはいずれも5文字。代々木駅のオブジェに従って小冊子に印刷された解読ボードの文字を拾うと、「カミ1マイホドノワズカナサ」=「紙1枚ほどの僅かな差」となり、キーワードは「かみひとえ」。六本木駅のオブジェではキーワードがそのまま出てきて「なやみごと」。そして大門駅では、やたらと長い絵であるため解読が大変でしたが、「ヒトヲマネクコト」という言葉が出てきて、キーワードは「しょうたい」となりました。
 以上のキーワードを、「謎4」の記入欄に入れるのですが、その順番については、「今まで手に入れた3つのキーワードを使い、最後尾で左から都営作れ」と指示があります。「都営作れ」が日本語として変だと思われそうですが、「なやみごと」「かみひとえ」「しょうたい」と並べると最後尾の文字が「と」「え」「い」となります。そう並べた上で、記入欄の赤い枠の文字を読むのですが、そうすると「みかた」というキーワードが出てきて、これを神保チョウジに送信します。ちなみに中河原空氏は正義の味方のヒーローが大好きなのでした。
 折り返しチョウジから送られてきたのは「A6」という文字。これを「謎5」の空欄に入れると、大門駅の出口番号であることがわかります。これ、小冊子には「謎は必ず順番に解いてください」と注意書きがあるとはいえ、他の駅に行ってしまって途方に暮れる人も居たかもしれません。
 ともあれA6出口で外へ出て、示されたイラストを見ながら街を歩きます。いままで鉄道探偵シリーズには、こういう街歩き要素は少なかったので驚きです。しかも地下鉄のほうでそうなるとは。まだ明るいうちで幸いでした。これも、「もう少し街歩きの要素が欲しい」という声が多かったせいかもしれません。
 歩いてゆくと、三田線御成門駅に着きました。確かに大門と御成門はわりに近く、歩いて移動できる距離ではありますが、それを問題に採り入れるとはおそれいりました。

 ここからがさらに見事です。「謎6」は去年もあった2択式チャート問題なのですが、まず最初に「西がつく駅がある方向へ向かう電車に乗れ」。三田線ですので、西高島平方面電車に乗ります。そして乗った電車の1輌あたりのドアの数が6か8かという選択となります。三田線の電車は4扉車ですので、両側で8扉。
 次が「『町』を二回通り過ぎたら二つ目の『町』の次の駅で降りろ」。これはマダムが少々手間取りました。三田線に乗っていると、内幸町、大手町と「町」のつく駅を過ぎるのですが、マダムは「そのあと」ふたつめの「町」の次、と解釈し、さらに神保町板橋本町を経て、その次の本蓮沼で下りるのかと思ってしまったようです。
 もちろんそうではなく、ふたつめの「町」であった大手町の次の駅、神保町で下りれば良いのですが、マダムはなかなか納得しません。実はここの2択は、「降りた駅に通る全ての都営路線は何本?」で、2本と4本の選択肢になっています。都営の4路線がすべて通る駅は無く、「2本」一択であるのですが、本蓮沼は三田線しか通っていないので、それでは問題が成立しない……と説明して、ようやく腑に落ちたようでした。
 神保町で下り、そのあと先端のエスカレーターに乗って改札階へ向かいます。改札階まで何本のエスカレーターに乗ったかというのが次の2択でしたが、どちらを選んでも、「もう一度STARTから始めよ」というところに到達します。
 神保町で新宿線に乗り換えることになります。西がつくほうですから、西大島のある本八幡方面に乗るわけです。新宿線も4扉なので扉は8枚。そして小川町・岩本町のふたつの「町」を過ぎ、次の馬喰横山で下ります。エスカレーター選択肢があり、なんとここでまた、STARTに戻されてしまいます。
 指示どおりに進むと、浅草線東日本橋駅に着き、そこからまたも西のつく駅の方向、西馬込方面の電車に乗ります。ようやく扉の数が違う電車です。
 違う選択肢に進みましたので、指示も異なります。こんどは「二つ目の『町』で降りろ」。人形町宝町と来て、そこで下車。
 いやはやおそれいりました。同じ問題を、3度にわたってこれでもかとばかり使い倒しているのです。これまでの鉄道探偵シリーズでも最高傑作ではないかと思います。どの線にも「西」のつく駅があるということ、「町」のつく駅の配置、そして乗換駅の配置など、実に考えられた問題になっています。
 宝町駅の構内に、「中河原大地」の弁護士事務所のポスターが貼られていました。もちろんプレイヤーが群がっています。「謎7」のカギが記されているのでした。
 主たる問題はシークワーズで、少し腰を落ち着けて解きたいと思い、外へ出ました。もう陽はとっぷりと暮れています。コーヒーショップなど無いかと思ったのですが、宝町はオフィス街に近く、手頃な店が見当たりません。かろうじてイートイン付きのコンビニエンスストアがありましたが、その数少ない座席はふさがっていました。マダムの見たところ、どうも、鉄道探偵プレイヤーの親子であった模様です。
 京橋のほうへ行けば、マダムが喫茶店を知っているようなことを言うので、ひとブロック歩いて京橋に行きました。しかしこの日は日曜で、その晩ともなると、店の入っているビル自体がもう閉まっています。もう少し、東京駅のほうへ行こうかとマダムに訊いてみましたが、あまり離れるのもイヤだそうで、やむなく、ビルの半地下くらいにあるフリースペースで腰を下ろしました。石のベンチは冷たく、半地下なだけに風は当たらないとはいえ寒く、さんざんな様相でした。
 ポスターにあったカギに従い、文字盤から「色」の名をふたつ、「虫」の名を3つ、「動物」の名を5つ拾います。ナナメには拾えないというルールなので、普通のシークワーズよりむしろ楽ですが、馴れているせいかついついナナメ読みしそうになって苦労しました。
 ワードが交差しているところを読めという指示があり、読んでみると「あかばねばし」です。しかしこの謎7の答えは赤羽橋ではありません。あわてて赤羽橋へ向かううっかり者が居たかもしれません。
 「あかばねばし」から、次の法則で変化させなければならないのです。

   [ふたご]を消せ→あがり→しりとり→かがみ→[ねがい]→いがた

 なお、カッコ内は、ポスターを見るまで空欄になっていた言葉です。
 「あかばねばし」の中の「ふたご」といえば「ば」の字なので、これを消して「あかねし」。
 あがり、つまり「あ」が「り」なので「りかねし」。
 しりとり、つまり「し」と「り」を取り去って「かね」。
 かがみ、つまり「か」が「み」なので「みね」。
 ねがい、つまり「ね」が「い」なので「みい」。
 いがた、つまり「い」が「た」なので「みた」。
 「三田」がこの問題の答えなのでした。
 宝町駅に戻り、三田へ向かいます。

 三田には、府中にあったような道具が用意されていました。こんどは、小冊子の枠に合わせて押すと、そこに印刷されている何枚かの切符にパンチ孔のような図形が刻印されます。
 「謎8」は、この図形にもとづいて解きます。ますStep 1は、図形の指し示している文字を読めというもので、星形の刻印は「もりした」の「も」の字を指し、三角形の刻印は「××円区間」の「間」の字を指し……という工合になっているので、順番に読むと「間よもう」
 これがStep 2の問題文に代入されます。「使い終わった切符の裏を見て記号を埋め、[間よもう]。」
 小冊子をめくって前のページを見ると、刻印がちょうど、ストーリーパートの文章の中の文字に一致しているのでした。凝っているなあ。
 刻印が捺された文字は「げ」「ち」「を」「ぞ」。で、問題のほうには「ざ」「そ」「あ」「ぢ」の文字があります。その「間を読む」わけです。五十音表で「げ」と「ざ」の間は「ご」。「そ」と「ち」の間は「た」。以下「を」「あ」→「ん」。「ぞ」「ぢ」→「だ」。出てきた駅名は「五反田」です。
 京急直通電車にひと駅乗って、泉岳寺で西馬込行きに乗り換えます。今回は浅草線を多用していて、なんとなく嬉しくなります。
 五反田駅で下りると、先ほどの新宿駅と似たような、今度は児童画コンテストの入賞作が掲示されていました。大人が児童画っぽく描いたのか、スタッフの子供にでも頼んで描かせたか、とにかく本当に児童画のように見える絵がまた6点ほど貼られています。最優秀は「中河原空」くんの「ウルトラ鉄道コースター」でした。兄は鉄道の遊園地を、弟はそこに設置する遊具を子供のころに夢想していたというオチだったのでした。
 これが都営篇の送信キーワードですが、あとは帰宅してからでもできるので、そこでは送信せず、五反田駅前の食堂で夕食を食べ、そのあと一日乗車券を使い倒すべく、都営交通を大活用して帰宅しました。具体的に言うと、先ほどのルートを逆に辿って三田に戻り、そこから三田線に乗り換えて板橋本町まで行き、最寄りの大和町バス停から都営バスで王子に出て、最後は京浜東北線で帰ったのです。都営バスは最終便が間もなく来るというタイミングで停留所にたどり着いたので、思えば危ないところでした。去年はこの路線に新宿から乗ろうとして、最終を逃していたのです。

 家を出てから帰ってくるまで、ほぼ12時間ほどかかりました。もっともスタート地点までやゴール地点からの行き来にも時間がかかっていますし、昼食と夕食、それに明大前のコーヒーショップなど、休憩もけっこう長時間とっています。実際の謎解きタイムは7時間ちょっとくらいだったのではないかと思います。
 さて帰宅してから、ふたつのキーワードを送信して、Web解決篇へと向かいます。
 最初、クリアキーワード欄に「私の偉大なる野望」「ウルトラ鉄道コースター」を入力して「違います」と返されて驚きましたが、これは私の勘違いでした。これらの作品名を記入する欄があり、それを送信するとあらためてクリアキーワードが返されるのでした。
 兄篇のクリアキーワードは「スイーツ男子」、弟篇は「ヒーローマニア」で、これを再度送信すると話が進みます。
 なんと、ふたりの探索には、もうひとりの兄弟である「中河原海」という人物が同行していたことがここで明かされます。たまげたなあ。そういえばタイトルは「1/3の奇妙な手紙」でした。3人めの兄弟が居るということは、最初から暗示されていたわけです。
 ストーリーパートの語り手も実は海氏だったということらしく、唐突に「俺」として文章に登場します。
 そして最後に、海氏が受け取っていた「謎」が示されます。それは、不思議な図形が描かれているだけの「暗号」でした。
 菱形が4つ。ひとつめは、上3/4ほどが黒く塗られ、残りがエメラルドグリーン。そこから矢印で導かれるふたつめは、上半分がシアン、下半分がマゼンタ。
 3つめは、下3/4ほどが赤、残りが青。矢印で導かれる4つめは、上半分が緑、下半分が黄色。
 いままでの例からして、最終問題では、小冊子そのものを折り曲げたりする必要がありそうです。小冊子をよく見ると、実は各ページに菱形があります。章を示す番号であったり、「京王」「都営」のエリア分けの記号であったり。中には確かに、問題に示されたような色で塗られているものもあり、それらをうまく組み合わせるようにページを折ってみると、真ん中のページの上下を、ホチキスのところまで折り込むという形になりました。そして2つめ・4つめの菱形ができたところには、なんと新しい文章と新しいパズルが出現していました。
 新しい、と言っても、京王篇の謎2と謎6、都営篇の謎2と謎7の半分ずつが合体しただけなのですが、それがまったく別の謎になっているのが驚きです。また、ストーリーパートの文章も、折った状態で意味が通じるようになっていました。よくよく見ると、そのページの折りしろのところ、やや不自然に活字の間隔が空いているではありませんか。まったく気がつきませんでした。
 京王篇のほうは、謎6の「ハンタイになるもの4組線で結べ」という出題の下に、謎6の文字マークのうち「家」「肉」「黒」「北」が並び、そのまた下に謎2の迷路(の半分ちょっと)が置かれています。この迷路にも文字マークがあったわけですが、今度の「ハンタイ」は意味上の対義語ではなく、読みかたの反対となります。「家(いえ)」には「永(えい)」が、「肉(にく)」には「国(くに)」が対応します。同様に「黒」と「六」、「北」と「滝」を迷路上でつなぐと、「せんとお」「らない」「かんじひだり」「からよめ」というひらがなの上を通ります。「線通らない漢字、左から読め」……で読んでみると、「中」「河」「原」となりました。主人公たちの苗字、中河原です。
 次に都営篇です。謎2のあみだくじのスタート番号だけ残っており、その下に謎7のシークワーズの一部が示されています。そういえばシークワーズで、下のほうの文字がまったく拾われていないのが不思議ではありました。1の下に「れび」、2の下に「ばめ」……と文字が並びます。どうやら、簡単に思いつく3文字の言葉の最初の文字を埋めてゆけば良いようです。4「どん」なんかは「う」でも「た」でも「の」でも(笑)良さそうですが、そのあたりは他の文字と合わせて判断するということでしょう。結果は、「てつどうぱあく」でした。
 「中河原鉄道パーク」。このキーワードを送信すると、エンディングがはじまります。
 なんと父親の大富豪は、そのありあまる財を傾け、三男・空が思い描いた「ウルトラ鉄道コースター」を含めた、長男・大地が夢想した「鉄道遊園地」を、すでに建設していたのでした。いままで仲の悪かった兄弟は、力を合わせて鉄道パークを運営してゆくことを決意する……という、鉄道探偵シリーズには珍しいほどに、かなり感動的な話で締められるのでした。いや、実在するなら行ってみたいぞ、本当に。
 面白いイベントでした。次回作も楽しみにしています。

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