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30年の終わりを前に [いろいろ]

 平成最後の年末が暮れようとしています。
 もともと、今上陛下がご即位なさったのも55歳くらいになってからのことでしたので、平成という年号そのものはそう長くはならないだろうと予想されていました。30年まで保ったのは立派なものだと言えそうです。
 しかもその時代の終わりは、天皇陛下がご高齢のため譲位なさるという、意外な形で訪れることになりました。皇室典範にも憲法にも、天皇の退位についてはまったく触れられて居らず、天皇というのは崩御なさることでしかその地位を下りられないのだと、みんな漠然と思っていたようです。
 前にも書きましたが、孝明天皇以前は、むしろ生前に譲位なさることのほうが普通でした。古代はそうでもありませんでしたが、聖武天皇が「皇太女」であった孝謙天皇に譲位して以来、崩御まで帝位にあった天皇のほうが少数派です。平安時代には32人の天皇が居られますが、そのうち22人は譲位しています。鎌倉時代にも15人中13人が譲位し、在位中に崩御した四条天皇後二条天皇も若死にであったためにそうなっただけで、いわば事故みたいなものでした。もう少し長生きしていたらおふたかたとも譲位されたことでしょう。
 江戸時代のような長期にわたって平和な時代でさえ、15人中10人が譲位しているのです。
 明治時代に生まれた皇室典範が、譲位について触れていないのは、明治天皇ご自身がその時点で壮年の君主であり、天皇がご高齢のためにその任に堪えなくなるという可能性など誰も考えなかったからだろうと思います。大正天皇がもっと長期にわたってご不例であれば、あるいは譲位という問題も生まれていたかもしれませんが、比較的早くに亡くなられたために問題になりませんでした。

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セイヤーズとバークリー [趣味]

 このところ、ドロシー・L・セイヤーズの小説を読み返しています。
 1920~30年代の英国ミステリー黄金時代に、アガサ・クリスティと並び称せられた「ミステリーの女王」ですが、クリスティの作品が早い時期から日本でも大いに紹介され、ほぼ全作品が邦訳で読めるようになっているのに較べ、セイヤーズの作品はなかなかその全貌が明らかになりませんでした。
 日本のミステリー書誌学の泰斗である江戸川乱歩は、さすがにセイヤーズもフォローしていましたが、彼女の後年の業績であるダンテ『神曲』の英訳などの印象が強かったせいか、学者兼作家というような紹介の仕方になっていました。もちろん英国には本業が学者であったり(コール夫妻など)聖職者であったり(ノックスなど)する推理作家もたくさん居るのですが、学者の手すさびの推理小説などというイメージがつくと、どこか堅苦しい、あんまり面白くなさそうな気がしてしまうのも無理はありません。
 しかもわずかながら邦訳されていたのは『ナイン・テイラーズ』のような作品です。はっきり言って、これが不幸だったと言えます。
 セイヤーズの推理作品は、R.ユースタスとの合作である『箱の中の書類』を除いて、長篇はすべて貴族探偵ピーター・ウィムジー卿が活躍するものとなっています。ピーター卿ものは11冊あります。あとは数冊の短篇集と、他の作家とのリレー長篇といったところで、ポワロものだけでも33冊を数えるクリスティとは、そもそも作品数がまるで違うのでした。
 で、その11冊の中で、『ナイン・テイラーズ』は9番目となりますが、まずこの小説は推理小説としてはたいへん長いものです。長い推理小説と言えばウィルキー・コリンズ『月長石』というのがありますが、コリンズはかのチャールズ・ディケンズの親友、従って時代を同じくする作家であり、当時の英国の長篇小説の標準スタイルであった「三巻本」として『月長石』も書いてありますので、まあ長くなるのは必然なのでした。『ナイン・テイラーズ』の時代にはもうそんなスタイルは廃れていたにもかかわらず、長さだけで言えば『月長石』に迫る規模を持っています。

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続・山手線の新駅 [世の中]

 山手線田町品川の間の、いわゆる田町車輌センター跡に新しく造られる駅の名前について、いろいろと論議が出ています。
 少し前に発表された新駅名は「高輪ゲートウェイ」というものでした。これが発表されるや否や、批判の声が囂々と巻き起こったのです。ネット上では、駅名撤回を求める署名運動まではじまりました。
 私もこの駅名はいかがなものかと思います。しかし、批判の趣旨は大ざっぱに言ってふたとおりに分かれていることをまず認識すべきでしょう。
 ひとつは手続き上の問題、もうひとつは駅名自体の問題です。
 手続き上の問題というのは、この駅名を決めるにあたって、公募という方式が採られたことによります。
 応募された候補の中に、高輪ゲートウェイという駅名は確かに含まれていました。ただ、それは130位というごく少数の意見だったのです。1位得票は素直に高輪でした。2位は芝浦、3位は芝浜だったそうです。
 高輪は駅の所在する町名ですから、誰でも思いつき、かつもっとも妥当と言えましょう。ただちょっとだけ難があるとすれば、実は現在の品川駅も所在町名が高輪です。品川駅西口の駅ビルのウイング高輪、駅から近いグランドプリンスホテル高輪など、品川駅前には多くの「高輪」を名乗る施設があり、新駅が高輪になるとややまぎらわしいということはあるでしょう。
 鉄道ファンや地図ファンにはよく知られた話ですが、品川駅は品川区には無く港区にあるのです。ついでに言えば目黒駅も目黒区ではなく渋谷区にあります。品川区役所は大井町駅近く、目黒区役所は中目黒駅近くにあるのでした。

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「連弾」を考える [いろいろ]

 「連弾」というのは、1台の鍵盤楽器を複数の奏者が演奏することを言います。まあ鍵盤楽器特有の演奏形態と考えて良いでしょう。マリンバなどの大型の鍵盤打楽器を連弾するということも無いではありませんが、鍵盤打楽器も広義の鍵盤楽器に含めることができます。ともかく弦楽器や管楽器ではまず考えられない形です。
 鍵盤楽器の中でも、オルガンを連弾するということはあまり見受けられません。ハープシコードなども滅多にやらないでしょう。ピアノのための曲が質量共に抜きん出て多くなっています。
 ピアノという楽器がたいへん幅広で、ふたりの人間が容易に並んで向かえるというのが大きな要因となっていると思います。演奏のレッスンをする際にも、ピアノであればたいていは生徒と先生が1台の楽器の前に並ぶ形になります。その形からして、生徒と先生が一緒に弾くことのできる曲、いわば教育用の曲が書かれるようになるのも自然な流れであったでしょう。
 私も連弾ピアノのためには、ずいぶんいろいろ書きました。大多数は編曲ですが、オリジナル作品としても、『La Valse de Mariage(婚礼のワルツ)』というのがあり、また他の楽器とのアンサンブルの中で連弾ピアノを用いるものとして『Fanfale Souka』『うたでの出会い』があります。二重唱曲『静かに訪れて』を、6手連弾を含むアンサンブルに編曲したこともあります。いろんな演奏会で、複数のピアニストが出演するということは案外多く、1曲くらい一緒に演奏するものがあっても良いという話の流れになって、連弾の曲、あるいは連弾アレンジを依頼してくることが少なくないわけです。こういう場合は教育用の曲と違って、それぞれの奏者がそれなりに弾ける人たちですので、かなり豪華なサウンドを作ることができます。

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パリは燃えているか [世の中]

 パリがとんでもないことになっているようです。
 マクロン政権による燃料税の引き上げ政策に反対するデモからはじまった騒ぎは、やがてほとんど暴動となり、制圧すべき警察官すらもデモに加担するようになり、警察の武器庫が襲われて武器が持ち去られて、ついに軍隊が出動するに及びました。軍が出動するということは、暴動というよりもほとんど内乱です。
 最初は極右勢力の扇動による騒ぎだとかなんとか言われていましたが、もはや右も左も無い状態で、とにかくマクロン政権に反対する人たちが次から次へと参加して、何日にも及ぶ大騒動になってしまいました。
 夜の街路でそこらじゅうに立ち上っている炎や煙を見ると、なんだか21世紀の先進国の出来事とも思えない気がしてきます。
 大革命のときも、こんな光景が至るところで繰り広げられていたのかもしれない、と思うのでした。あのときも武器庫が襲われ、治安を司るべき衛兵が矛を逆しまにして暴徒に加わったりしています。
 そして民衆の憤怒の赴くまま、国王以下多くの人々がギロチンにかけられました。そこにはもう、まともな法治も行政もありませんでした。
 フランス人というのは、200年以上が経ってもあんまり変わらないものだな、というのが、今回の騒動を見ての私の感想だったのですが、考えてみればあたりまえかもしれません。暴動によって旧体制を打倒し、感情のままにギロチンをフル回転させてきた歴史を、彼らは反省するどころか、誇るべきものとして語り伝えてきたのですから。

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